カウントダウン
返事を待つ僕。
もう少しでこの交換日記も終わってしまうのだろうか?
そして……僕はそのことを受け入れることが出来るだろうか?
「いや!」
リノンはリノンで辛い気持ちをしているはずだ。
だって……リノンは……自分の冒険でトリガーを引くのだから。
僕にはそんな勇気はないだろう。
「リノン……」
リノンはどんな気持ちで今を過ごしているんだろう……。
そうぼんやり考えていると、交換日記が光りだす。
僕はそっと……手を伸ばした。
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ペンギンは、ゾウのモンスターだと思う。
大好きなユウスケへ☆
えへへ☆
平和じゃないから大丈夫って、変だったね……。
……私もよくわからないや……。
世界の平和を使命としている勇者が、最後は自分のために、魔王を倒そうとしてるんだもんね……。
な~んか、変なの~☆
……うん、私も後悔しないから……。
もしも……もしもだけど、この日記が消えちゃったら……。
……そうなっても、私の事、覚えててほしいな……。
……なんてね……☆
……レベル96だよ……。
次、頑張るから、99になると思う……。
そうなったら、次決戦だから……。
ペンギン……。
ゾウみたいで銀色のモンスターだと思う……。
じゃあ、またね~☆
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「リノン……」
きっとリノンも苦しい気持ちなのだろうか。
リノンも……この交換日記が消えることを恐れている……そんな文面だった。
けど……。
「……リノンは強いな」
冒険を進める強さ……僕には出来るだろうか?
そして……こんな返事を書けるだろうか……。
ちゃんと笑いも含めて書いてくれる……そんなリノンが僕は好きだ。
・・・・・・
僕は思い切って筆を執る。
「レベルはあと3……」
これは僕達のカウントダウンなのだろうか? はたまた……。
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すべての命運、リノンに託すよ。
大好きなリノンへ。
……そうか……レベル96かぁ……。
次の日記で、レベル99にするのか……。
わかったよ。
世界のためにも。
僕たちのためにも……。
リノンは力いっぱい戦ってほしいな……。
後悔……絶対しないから……。
僕は、リノンに全てを託すよ……。
……どうであれ、僕はリノンの事を忘れないよ?
出来れば、僕の事も忘れないでほしいな……。
……あはは…まだ次に戦うかなんて、決まってないのにね……。
じゃあ、またね。
追伸。
こちらにはモンスターは居ません。
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「絶対に忘れるものか!」
リノンの返事と僕の返事。
見比べながら、僕はつぶやく。
切ない……とにかく切ない……。
僕は空元気でしか書くことが出来なかった。
そんな交換日記にリノンはどう反応してくるか……もう次は……。
そっと閉じ、優しい光に包まれる。




