決意
カレンダーに目をやると、2月の半ば。
「……リノン……」
最初は駆け出しの勇者だったが、今では魔王城のそばで、経験値稼ぎをしている。
「……現実にいるのかい……」
いや、リノンはリノンの世界に居る。
だから、現実世界には居ない。
「……よくわからないよ……」
こんな状況、わからない……。
もしかすると、架空の人物かもしれない。
……現実世界からすると、架空の世界だけど……。
「……僕はリノンを信じるよ……」
リノンは魔王城の手前まで頑張ったんだ…。
そのリノンを僕が信じなくてどうする?
「……うん!」
僕はその迷いを振り払う。
まっすぐに……リノンを信じて見せる!
「……」
ふと、ノートが消える話しを思い出す。
少なくとも、リノンが魔王を倒すと、どうなるかわからない。
でも、リノンの世界ではハッピーエンドになることは、間違いない。
「でも……」
僕たちには、ハッピーエンドになるのだろうか?
日記が消えない保証はない。
そういえば、ゲームでも勇者自身はハッピーエンドなのだろうか?
とあるゲームでは、お姫様と結婚して幸せになってる。
また、とあるゲームでは、その後の勇者の表現がされていない。
「……この物語は、リノンも幸せにならなきゃいけない!!」
僕は、リノンを信じぬく……。
何があろうと…。
たとえ、交換日記が消えても……。
「……リノン、絶対に幸せにしてやるからな!!」
僕は覚悟を決め、リノンの返事を待つ。
交換日記は光りだし、リノンの返事を告げる。
そっとそれに手を伸ばす。
------
血まみれリノンだよ~☆
大好きなユウスケへ☆
……なんかね、日記始めたころの事、思い出しちゃった。
そしてね、ナイフのことを思い出したの。
最初は6本……今は5本……。
今日はね、魔王城からちょっと離れてね、
クマとかトラとかライオンとか狩ってたの。
ナイフでも……今のレベルだと、1撃ね……。
この辺りは弱いのかしら?
なんかね……今日は狩りまくってたの。
そうして、たくさん返り血浴びてきちゃった~☆
久しぶりの、血で染まったリノンちゃんでした~☆
……このナイフ…宝物なんだ……。
……えへへ……ちょっと感傷に浸っちゃった♪(^_-)-☆
じゃあ、またね~☆
------
「リノン……」
なぜだかわからないけど……僕の目から涙がこぼれる。
きっと……もしかすると、リノンも僕と同じ気持ちなのかも知れない。
「隠しても無駄だよ……」
気丈に振舞っている文章……でも、行動が少しおかしい。
経験値稼ぎではなく、感慨に浸ってる……。
おそらく……おそらく、リノンも魔王を倒すのが怖いのかもしれない。
交換日記が消えてしまう可能性を……。
・・・・・・
------
勇者って言われました!
こんにちわ~☆
初めまして。
私はリノン・ジータと言います。
なんか、今日起きたら、私に伝えたいことがあるって言われて、お城に呼び出されたの。
そしてたら、「そなたは勇者の生まれ変わりで……」なんて、説明臭い話をされたの。
なんか、めんどくさい……( ;∀;)
とりあえず、これから城の周りで、スライム狩ってくることになったんだけど、スライムってなんかドロドロで、汚いし……( ;∀;)
今日はレベル3まで上がったよ~。
そっちの話しも聞きたいな。
じゃあ、また明日書くね~☆
------
交換日記の1ページ目。
これは夏の出来事だった。
朝起きたら、机の上に突然現れていた交換日記。
これが……僕たちの始まりの物語。
僕は、リノンを励ましたい一心で、筆を執る。
------
血まみれリノン、聞きたかったところだよ?
大好きなリノンへ。
……僕も思い出してたところだよ……。
ナイフ…懐かしいね……。
って、言っても、今も毒針が愛用じゃなかったっけ?
……一撃って…そこ、結構強いと思うんだけど……。
……そうだね……ナイフで血まみれって、言ってたもんね。
血しぶきも、服って汚れないの?
魔法とかかかってるの?
……ふふふっ。
なんか、血まみれのリノン、聞きたかったところだよ……。
あの時はプチデビルだったね……。
あまり無理しないでね?
また、返事するね。
じゃあ、またね。
------
懐かしい……。
とは言っても、始まったのは夏の事。
2つ目の季節が通り過ぎるころ……。
もう、リノンの物語も終盤の終わり。
僕達の物語……悲しい結末にならないことを、願いながら……。
交換日記を閉じる。
その願いを叶えてほしい……。あわい光りで、日記は答える。




