交換日記が消える夢
いつものように、僕はリノンの返事を待っていた。
そして……交換日記はあわく光りだす。リノンから返事が返ってきた。
待ちわびていた僕は、交換日記をすぐに手にして、広げる。そして、新しく追加されたページに目を落とす。
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水族館の話、後でいっぱい聞かせて?
大好きなユウスケへ☆
うん……水族館、楽しそうね……。
私も行ってみたいな……。
もう少ししたらね、魔王城に着くの。
魔王城のそばで、経験値稼ぎするから、その時にゆっくり聞きたいな……。
そして、近況だけど、魔導書の洞窟まで来ました!
モンスターも骨があるのばかりで、やりがいがあるの~☆
……骨のモンスターもいるんだけどね……(笑)
骨のモンスターは、汚れなくていい感じなの♪
あと、トラのモンスターは人気みたいね?
いろんなところで出てくる~。
血まみれのリノンちゃんを応援してね~☆
じゃあ、またね~☆
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「骨だけに……」
僕はくすっと笑った。
これが異世界ジョークなのだろうか? おそらくアンデッド系のモンスターだろう。それに、トラと戦うなんて……。
「ワイルドだなぁ……」
僕の状況と照らし合わせる。
僕なら……逃げ出すだろうなぁ……。
そして……魔王城のそばまで来ていると……。
それの意味することは……。
「……忘れろ!!」
僕は、僕自身に言い聞かせる。
そして、少し切ない気持ちになる。
その気持ちを抱えながら……僕は眠りについていた。
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ユウスケへ。
ついに、魔王を倒しました!
今までありがとうね!
この日記はもうこれで最後みたい……。
今までありがとうね。
ユウスケの事……忘れないから。
サヨナラ。
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ついに……魔王を倒したんだね……。
でも……サヨナラなんて……。
僕は、交換日記に綴る。
そして、閉じる。
けど……交換日記はもう光らない……。
ただの……ノートに変わってしまったのか?
僕は、何度も書き綴っては閉じ、書き綴っては閉じを繰り返す。
でも……もう光らない……。
僕の想いも……もう……。
・・・・・・
……最悪な目覚めだった。
僕が……考えるのをやめてたこと……。
それが、夢となって出てきてしまった。
この最後だけは……迎えたくないと願ってた……考えることから背けていたこと……。
夢は正直だった。
僕の一番の不安を……言い当ててきた……。
「いやだ!!」
僕は、気が付くと涙を目にためていた。
・・・・・・・
リノンの返事をもう一度読み、今朝の夢を忘れる。
……リノンも薄々感じてるんじゃないだろうか……。
いや、過去にもそんな話題もあったはずだ。
僕は、勢いを込めて、交換日記に返事を書く。
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血まみれのリノン
大好きなリノンへ。
うん、わかった。
水族館の話は大事に取っておくね。
あまり無理しちゃダメだよ?
横道で強力な魔法なら、敵も強いと思うから……。
気を付けてね?
それに、リノンの装備もちょっとこころもと無いから……。
レベルの強さに頼りっきりにならないようにしてほしいな。
……骨……、ちょっと笑っちゃった……。
なんか、リノンが生き生きしてるところ見ると、こっちも元気が出るよ。
血まみれのリノン、応援してるよ!
じゃあ、またね。
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「……リノンの心配ばっかりだな」
僕が書いた返事を見直して、そう思う。
本当に……無茶ばかりして……。僕は心配になる。
……リノンが倒されて、この交換日記が……。
「いや!」
僕は言葉で否定をする。
そして、交換日記を僕はそっと閉じる。あわい光りと共にリノンに届いた事を告げる。




