2度目の水族館
僕は朝風呂に入っていた。せっかくの旅館だし……入らないともったいない気がする。
そういえば……。
「リノンの世界には、こんなところあるのかな……」
僕とリノンの世界……共通点は多いけど、異なる点も多い。
そういえば、言葉に対しても、同じっぽいし……不思議。
僕は、リノンの世界を考えながら、浴場を後にした。
部屋に入ると、朝食が用意され、布団はたたまれていた。
「……旅館って、こういうところなの?」
僕は朝食をとり、水族館の開く頃合いをみて、旅館を後にした。
・・・・・・
今日は冬休み最後の日ともあって、家族連れが多い。
僕は真っ先に、大水槽を見に行く。
この水族館でも、ジンベイザメは展示されており、僕はそれを目当てに来たようなものだ。
ここでも、いろんな魚と共に、ジンベイザメは優雅に泳いでいた。
下を泳ぐのは……コバンザメだろうか?
ジンベイザメが、イワシの群れを横切ると、イワシの群れは通路を作っていた。
「ずっと見ていても、飽きないなぁ……」
僕は、大水槽の横にある椅子に座っていた。
そうしていると、ちょっとしたショーだろうか? 飼育員さんがウエットスーツで水槽にもぐり、手を振ってくる。
僕も、ちょっと恥ずかしかったけど、手を振り返す。
見てて飽きない……時間がゆっくりと過ぎてゆく。
僕もジンベイザメのように、優雅に泳いでみたい……。
ふと、父さんと、大樹の言葉が横切る。
「僕の……将来かぁ……」
僕は魚を見るのが好き。
ちょっとだけ……飼育員さんが、ジンベイザメと優雅に泳ぐ姿が、羨ましく思ったりもした。
「こういう仕事……なのかもね」
水族館の飼育員……僕にとっては、魅力的な仕事なのかもしれない。そう思いながら、時を過ごした。
・・・・・・
家に帰り部屋に着いた時に、交換日記は光りだす。リノンからの返事だ。
僕はすかさずに、交換日記を広げた。
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魔導書っていうの探してみるね。
大好きなユウスケへ☆
……わかった……。
……でも、ついほかの女の子に、とられちゃうんじゃないかな……って。
……ゴメン……。
ちょっと、シルビィの事、書くね。
……出来るだけ、嫉妬しないようにするから……。
なんかね、「魔導書」っていうのがあって、
魔法がけられた本なんだって。
で、1度読むと……と、言うか勝手に、読まされるらしいんだけど……。
そうして魔法を覚えることが出来るんだって。
ちょっと寄り道だけど、その本のありかまで、行ってみようと思うの。
今日はこっちの事ばかりで、ごめん……。
次、水族館の事聞きたいな……。
じゃあ、またね~☆
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「……ヤキモチ妬く必要ないのに」
僕は微笑みながら、つぶやく。
に、しても……。
「意地でも、シルビィに魔法を覚えさせる気だな……」
シルビィ……ゴメン……。僕の彼女が無茶言って……。
魔導書なんてあるんだ……それでシルビィに覚えさせる……かぁ……。
「……」
お願いだから、仲間は大切に……。
てか、魔法使いを仲間にいれればいいだけのはずなのに……。
リノンの返事にツッコミを入れながら、僕は眠りについた。
・・・・・・
今日は始業式。
いつものように、通学路を歩いていると、大樹に声をかけられる。
「雄介、おはよう!」
「おはよう!」
いつものように談笑しながら、校門をくぐる。
「そうだ!」
「なに?」
「俺の将来の夢、誰にも話すなよ?」
「話さないよ」
大樹の夢……医者になること。とてつもなく大きな夢だと思う。
僕も大樹を応援したい。
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時間を忘れちゃったよ。
大好きなリノンへ。
今日は水族館のこと書くね。
水族館で、色々見てきたよ。
気が付いたら、ほぼ一日ずっと水族館にいたよ。
僕の好きなジンベイザメは、おとなしい魚で、ほかの魚の群れと一緒に飼育されてるんだ。
群れの中をゆったり泳ぐジンベイザメは、僕には魅力的に感じるんだ……。
リノンにも見せてあげたいと思ったよ。
だから、一緒に行こうね。
魔法の事、あまり無理しちゃダメだよ?
寄り道ってことは、強力な魔法なのかな?
そのことも教えてね。
じゃあ、またね。
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全部書き終え、僕は一息をつく。
「水族館の景色……リノンにも伝わるといいなぁ……」
そう、願いを込めて……。
……あとは、シルビィにあまり無理させないことも願って……。
僕は交換日記をそっと閉じる。想いを届けてくれたのだろうか、優しく光る。




