僕にとっての冒険
バイト先で……。
僕は、リノンの返事を思い出していた。
仕事が終わり、店長に何気なく聞いてみる。
「店長」
「なんだ? どうした?」
「店長にとっての冒険って、何ですか?」
店長は僕の言葉に、きょとんとする。でも、すぐに真剣なまなざしになり、僕に応えてくれた。
「まぁ、俺にとってはこの店だな。この間の料理にしてもそうだ。新しい追及……それが冒険なんじゃないかな」
言い終わると、店長は僕に微笑む。
「どうした? 悩みか?」
優しく語り掛けてくる店長。本当、バイトの関係以外でも、付き合ってくれる……そんな人だ。
「いや……僕にとっての冒険って、何かなと思って……」
思っていたことを、ついそのまま打ち明けてしまう。
さすがは接客業、聞き上手でもあるなぁ……。
「そうさなぁ……雄介にとっては、新しいことにチャレンジすることじゃないか? なんだっていいさ。今までやったことのないこと……それだけでいいんじゃないか?」
そんな僕に、店長は親身に答えてくれる。
新しいこと……かぁ……。
「まぁ、雄介はまだまだ若いんだし。……とはいえ、若いうちしかできないこともあるからな。時間は大切に使えよ?」
今の僕にしかできないことかぁ……。なんだろう?
今の日常ではやっていないこと……。
「ありがとうございました」
「なんの! なんかわからんが、俺の言葉でよければ、いつでも話してやるからな!」
店長は豪快に笑う。
でも……僕は少し勇気づけられた気がする。
・・・・・・
バイトも終わり、リノンの返事を待っていた。
僕にとっての冒険を考えながら……。
知ってか知らずか、そんな僕の横で交換日記は光りだす。
僕はそっと手に取り、新しいページを探す。
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魔王城の情報、入りました!
大好きなユウスケへ☆
……試食、お疲れ様です……。
……でも、なんか興味があるな……その料理……。
なんか、怖いもの見たさって感じ?
……ちょっとユウスケのお店に入るの怖くなってきた…(笑)
冒険、なんかいいの思いついたら教えてね☆
私もユウスケの冒険話聞きたいな……。
そうそう、ついに魔王城の情報が入ったの~☆
もう少しのところまで来たかな……。
今はね、トラみたいなモンスターと戦っているの。
素早いんだけど、私にかかればイチコロ♪
急所を狙って一撃なんだから~☆
……でも、返り血がね……( ;∀;)
じゃあ、またね~☆
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「……試食はやめとけ?」
僕は微笑みながらつぶやく。
「魔王まで、もう近くなったのか……」
魔王を倒すこと……それはリノンの世界が平和になること。
でも、僕達にとっては……。
「……」
リノンにとっても、それがハッピーエンドになるのだろうか?
今の気持ちとしては、半々……怖い気持ちもある。
でも……リノンは先に進めることを決意したようだ。
「僕も!」
いろんな考えが、頭の中を支配する。
でも……いくら考えても答えは出ない。
そうして、僕は眠りについた。
・・・・・・
朝起きて……僕はバイトに行く前に、とあるところに電話をした。
「もう一度……」
電話を切り、僕はつぶやく。
そう、僕だって冒険をしてみたい。そんな想いだった。
・・・・・・
バイトから帰り、僕は交換日記を広げた。
僕の出した、結論……それは……。
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また水族館に行こうと思う。
大好きなリノンへ。
……うん、怖いもの見たさでも、あれは……なかったよ……。
でも、店長の料理は美味いから、こっちに来たら、
ぜひ来てほしいな。
そういえば、僕も料理を覚えなきゃだったね…。
いつかリノンがこっちに来た時に、料理上手くなっておくね。
僕の冒険は、もう一度水族館に行こうと思う。
もしかしたら、リノンにとっては、つまらない話になるかもしれないけど……。
今度、別の水族館に行こうと思うんだ。
良ければ、聞いてほしいな。
じゃあ、またね。
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「もう一度、一人で泊まりに行くこと」
リノンの冒険と比べれば、ちっぽけなもの。
でも、僕にとっては……確実な一歩だと思う。
その想いを届けるかのように、交換日記を閉じるとあわい光りに包まれた。




