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ある意味冒険

 「雄介!」


 バイト先で帰宅しようとした僕を、店長が呼び止める。


 「これ、新作なんだけど、試食してもらえないか?」

 「店長……ここ、チェーンのファミレスですよね?」

 「ああ。でも俺のメニューを、出しちゃいけないなんて、言われてないしな!」


 豪快に笑う店長。

 確かに……ここのファミレスは「店長おススメ!」のメニューも多い。

 他の店でも見たことはあるけど……こうやって、自分のメニュを入れてるのかな?


 「で、試食してくれるのか?」

 「はい、大丈夫です」


 そう答えると、店長は嬉しそうに料理を差し出す。

 ……きっと僕、食べる前提で作ってたんだろうなぁ。料理自体の見た目は悪くない。

 僕は一口食べてみた。


 「……店長?」

 「どうした?」

 「店長はこれ……試食しました?」

 「いや、さっき思いついて、作った!」


 またも豪快に笑う店長。

 ……試食せずに渡すなんて……僕は毒見役?


 「……見た目はいいんですが、その裏腹にびっくりするような味でした」

 「ほう?」

 「……はっきり言っていいですか?」

 「おう、言ってくれ! なんだ?」

 「不味いです!」


 その言葉に、肩を落とす店長。


 「自信作だったのになぁ……」

 「いや、何とも言えない味の混ざり方なんですが……」

 「ほらよ、甘いものとしょっぱい物って、交互に食べるとおいしいだろ? じゃあ、一緒にしてみたらどうなるかって、試したんだよ」

 「……一緒にしないで下さい。それと、先に試食して下さい!」


 僕の言葉に、店長はダメージを受けている。

 いや……アレ食べさせといて、それは無いと思うけど……。


 こうして、僕は店長から解放され、家に戻る。

 夕食と風呂を済ませて、部屋でリノンの返事を待つ。


 タイミングを合わせたかのように、交換日記は光を放つ。

 そして……僕は手に取り広げた。



 ------

 ユウスケ……優しいね……。


 大好きなユウスケへ。

 うん……そう言ってくれるんだ……。

 ユウスケって優しいのね………。

 ありがとう……。


 ……そっちの世界でも、女の子にこんな言葉かけてない?

 だったら、承知しないからね!!(--〆)

 ……私は、勇者らしくするね……。


 風邪の心配はないかな?

 こっちだと、魔法で何とかなっちゃうから。

 服とかにも魔法が入ってるの。

 だから、寒くはないんだよ?


 それと、今は南の方に向かってるの。

 少しずつ暖かくなってきたところだよ~☆

 今は岩みたいのと戦ってるの。

 ……ちょっと埃っぽくなっちゃうんだけどね……。


 じゃあ、またね~☆

 ------


 「あはは……」


 女の子となんて、ほとんど話はしない。また、無意味な嫉妬をされてしまった。

 でもそこが、リノンらしくて可愛らしいと思う。


 「魔法……かぁ……」


 色々と便利だなぁ……。僕の所にもあったらいいのに。

 クエストは順調にこなして、今は暖かいところに居るらしい。

 移動を考えると、どこまでもアクティブなリノンなんだな……と、思い浮かべる。


 リノンの事を想いつつ、僕は眠りについた。


 ・・・・・・


 さて、昨日は店長にひどい目にあわされたし……。今度はこっちの事を少し触れよう。

 僕は交換日記に綴る。



 ------

 店長の冒険。


 大好きなリノンへ。

 ……リノン以外にはそんなこと言いません!!


 魔法って、そういう使い道もあるんだ……。

 確かに、鎧着て寒い地方に行ったら、普通考えて凍傷になるよね……。

 そっちって、こっちには無い便利さがあって、僕からすると不思議に思うよ。


 今はどれくらい進んだの?

 魔王城の情報ってもう聞けた?


 こっちの話しするね。

 ファミレスでのバイトだけど、順調だよ。

 店長が新しいメニューを出すって、僕に試食させたんだ。

 ……ちょっと冒険しすぎた味だったから、出すのやめてもらったよ……。


 じゃあ、またね。

 ------



 「あれは、あれで、冒険だよなぁ……」


 僕は独りつぶやく。

 あのメニューが店に出てたら、大変だったと思う。


 リノンの世界を知りたいけど、リノンも僕の世界を知りたいはず。

 今後はもっと僕の事を書いていきたい。そう思いながら、僕は交換日記を閉じた。

 いつものように、交換日記の優しい光に包まれる。


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