たとえどんな状況でも
僕の日課に追加となった、バイト。もうすぐ冬休み。
僕は帰り際に、店長に呼び出されていた。
「雄介、悪いけど年末年始だけど、バイトいれてもらえないか?」
「え? いいですけど……」
「バイトの子が集まらなくてね……ありがとう! そんなに客入りは無いと思うから、まぁ……気楽に居てくれ」
特に予定は無かったので、快諾する。
一応このファミレス、年中無休をうたっている。とはいえ、年末年始は客入りがすくないのに……。店長も大変そうだと思った。
バイトから帰り、自分の部屋で落ち着く。
もう冷え込んできたので、エアコンを暖房にしてリモコンで動かす。
……去年は、部屋に居られなかったよなぁ……。僕はエアコンを買ってくれた、父さんに感謝をする。
そうしていると、交換日記は光りだす。
僕は、リノンの返事が来たことを知り、そっと広げる。
「……うわぁ……」
その内容に、僕は声を漏らした。
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血なまぐさい娘、キライ?
大好きなユウスケへ☆
ちょっと、なにそれ~。
なんだか、ユウスケが魔王になったみたいな言い方して~。
大丈夫よ~☆
だって、毒針で急所狙うから♪(^_-)-☆
そうそう、私も今、寒いところに来てるの。
ユウスケの方って、今冬じゃない?
なんか、同じ季節って感じで嬉しいの♪
今はね、クマと戦ってるの~。
でも、ちょっと問題が……。
クマと戦うと、私のドレスに返り血がついちゃうの……。
まぁ……洗えばすぐ落ちるんだけどね。
……ねぇ……。
ユウスケって、血なまぐさい娘、キライ?
……あまり嫌われることしたくないから……。
じゃあ、またね~☆
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「……」
そうだよね……リノンは勇者で、モンスターと戦ってるんだから。ゲームとかではそんなにリアルに描写されないけど、現実だったらこうなるだろう……。
「いや……リノン……」
血なまぐさかったりしても、好きなのは変わらないよ……。……それ、リノンの使命だし……。
クマは同じく居るんだ……。新たな発見かもしれない。
時々言葉が通じないけど、リノンの世界も僕の世界も、大きくは変わらないみたい。
……そういえば、日本語で話してるけど……そんなにメジャーな言葉?
新たな疑問を残しながら、僕は寝入った。
・・・・・・
「はあぁぁぁ!!!」
勇ましく、クマと戦闘する一人の少女が居た。
掛け声とともに、クマに突進していく。
そして……。
「グォォォォ!!!」
クマは急所を突かれ、一撃で倒れる。
鮮血が少女に降り注ぐ。
少女はそのまま、僕に語り掛けてくる。
「ユウスケ、どうだった?」
血まみれになりながら、笑顔で少女……リノンは言った。
僕は、その景色が淡く……どんどん遠のいていった……。
・・・・・・
「……」
悪い夢をみた……そんな気がする。
どっと疲れながら、僕は学校に向かう。
「雄介、おは……って、顔色悪いぞ!?」
「いや……夢を……」
「悪夢でも見たのか? そういう時って、上手く起きれないよな……」
大樹が心配してくれる。
「今日が終われば、冬休みだから。」
大樹は笑顔で答えてくれてた。
・・・・・・
学校も帰り、僕は交換日記の前に居た。
僕はひとしきり、交換日記に綴った。
どんな状況であれ、リノンの事が好きであることを……。
ひとしきり書き終えると、僕は交換日記を閉じる。
ほのかに光り、リノンに届いた事を示す。
僕は、今日書いた内容を思い浮かべながら、寝入った。
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リノンらしさが一番だよ!
大好きなリノンへ。
……本気でその装備で、魔王と戦うんだね……。
応援してる……。
でも……ドレスで、寒いところ平気なの?
寒さで凍えちゃわない?
風邪をひかないか心配です……
。
クマって…ワイルドだね……
。
……僕はリノンだったら、どんなでも好きだよ?
それに、リノンは勇者じゃない?
戦わない勇者なんていないし……。
……居たとしても、仲間だけに戦わせて、カッコ悪そうだし……。
だから、僕はね。
今、勇者なら勇者らしいリノンが好きだよ。
じゃあ、またね。
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