目指しているところはレベル99
バイト先。
今日は休日なので、一日バイト。
「雄介、頼んだぞ!」
「わかりました!」
僕は注文の品をお客さんに届ける。
「お待たせしました」
「あ、新田君、元気だった?」
「おかげさまで……」
前回バイトしてた時の、顔なじみさん。よくこの店に来ている。
僕の事を覚えていてくれたようだ。
名前は、胸にプラカードをしているので、それを見て呼んでくれたらしい。
なんだかよくわからないけど、そういう挨拶を何度か交わす。
チェーンのファミレスなのに、お客さんがフレンドリーだったりする。これも店長の人柄のおかげだろうか?
そうやって、一日を過ごした。
・・・・・・
「疲れた!!」
僕はバイトから帰るなり、ベッドで横になった。
フルタイムとはいかないので、時刻は夕方。少し横になって、今日の疲れを癒す。
「雄介~ご飯よ~!」
僕がうとうとしていると、母さんの呼び声。
「今行く~」
僕はリビングに行き、食事をとり、風呂に入って部屋に戻る。
「少し時間があるな……」
僕は、前からの日課である勉強をしながら、交換日記の返事を待った。
勉強の区切り……と言うか、だいたいリノンからの返事が来る時間に、終わらせるようにしている。
ちょうど、交換日記が光り、リノンの返事が来たことを示す。
僕は、交換日記をそっととり、そっと開いた。
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もちろん!レベル99!!
大好きなユウスケへ☆
うん、もちろんそのつもりだよ~☆
だって、レベル99って魅力的じゃない?
そして、魔王と決戦に挑むの。
そしたら、私の名前ってず~っと残りそうじゃない?
……でも、最近の悩みは、ギルドでレベル書くと、
二度見されるところかな……。
私って、そんなにレベル無いように見えるのかしら?
バイト……って、ギルドの事よね?
前に聞いた時、ユウスケは運び屋だと思ったんだけど、料理屋さんだったの?
ユウスケ、料理出来るんだ~☆
そっちに行けたら、ユウスケの手料理食べたいな……。
じゃあ、またね~☆
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「リノンらしいなぁ……」
僕は微笑みながら、リノンの文字をかみしめる。
レベル99を目指す……かぁ……。
そりゃ、ギルドで二度見されても仕方ないレベルだと思う。
歴代の勇者を超えてるんだから……。それに、装備は……。
「……初期装備だよな……」
思わず、笑いがこみ上げる。
リノン……面白いよ……。
僕は、交換日記の余韻に浸りながら、眠りについた。
バイトの疲れもあってか、すぐに寝入ってしまった。
・・・・・・
今日もバイトのシフトが入っていたので、学校の帰宅後、店に入った
……いくら何でも、毎日入れられるとは思わなかった。
バイトをこなし、僕は帰宅。
今度は僕が書く番。
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手料理、頑張るね。
大好きなリノンへ。
……やっぱりそうか……。
頑張れとしか言いようがないかも……。
なんかね……ちょっと魔王が可愛そうな気もしてきたよ…。
せめて、苦しまずに楽にお願いしますm(_ _"m)
二度見は……多分違う理由だと思うけど、まぁいいか。
バイトは……いや、運び屋の方が近いよ?
注文聞いて、お客様に出す係…配膳係って言ったらわかるかな?
僕はそれほど料理は得意じゃないけど、リクエストに答えて手料理出せるように頑張るね!
僕もリノンの手料理食べたいけど……。
料理は得意なのかな?
じゃあ、またね。
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「……バイトの事も誤解させたままだったなぁ……」
前に、軽い気持ちで書いていた僕を呪う。
冗談半分で書いていた、過去の僕を殴りたい。
リノンは真剣なんだそって……。
でも、レベル99目指すとなると……魔王が気の毒かな?
サクッと倒しそうな、リノンの姿が思い描ける。
……ほぼ、初期装備のリノンに……。
「ちょっと気のどくかな……」
リノンには失礼だけど、魔王が少し気の毒な気もしてきた。
交換日記を閉じると、淡く光る。
そんな魔王の想いまでは届けなくてもいいと、祈りながら……。




