通じる気持ち。切ない気持ち。
交換日記が始まってから、2カ月半以上が経過していた。
もうすっかり寒くなって来ている。
真夏から……もうそんなに経ってしまうんだ……。
感慨にふけりながら、僕は交換日記の返事を待つ。そうしていると、交換日記は優しく光り、リノンの返事が来たことを知らせる。
僕は交換日記を手に取り、新しく追加されたページを読む。
「そうだった……」
勉強はそれなりに出来ると自負しているが、リノンとの会話に対して、学習能力が無い自分を呪った。
------
靴になるくらい好きなの?
大好きなユウスケへ☆
……うん、ありがとう♪
でも、ストーカーって何??
なんだか靴みたいだけど……ユウスケ、靴になっちゃうの?
そっかぁ…靴になるぐらい私のこと好きなんだね……。
なんだか、胸が熱くなっちゃうな……。
そうだ。
なんだか私がそっちに行けるって、思うようになってからね。
そっちの話しは、私がそっちに行ってからいろいろ聞きたいなって、思うようになってきたの。
……でも、やっぱり、魔王を倒して、そっちに行く手段が無くて……。
……この日記も消えちゃったら……って思っちゃった。
だから、今まで通り、教えてね♪
私もこっちの世界のこと書くから……。
じゃあ、またね~☆
------
「そうだよね……ストーカーなんて、通じないよね……」
スニーカーはあるのだろうか? でも、これ以上触れるとややこしくなりそうだ……。
靴になって、胸が熱くなるのか、ちょっと疑問だけど……。
恋は盲目と言うけど、リノンはそうなっているのだろうか?
そうであると、僕は嬉しいけど……。
「……交換日記が無くなるかぁ……」
ちょうど、僕もその夢をみてしまった。
もし、消えてしまったら……リノンが魔王を倒したことで、消える可能性もありえるから……。
「嫌だ」
交換日記が消えるのは、絶対に嫌だ。
それ以上に、僕はリノンに逢いたい。
「今日は、良い夢を見たい……」
そうつぶやいて、僕はベッドに身をゆだねた。
・・・・・・
ぼーっと、勉強しながら、僕は交換日記の返事を考えていた。
「消えてしまう……かぁ……」
まだ、このことに引っかかっていた。
交換日記がなくなってしまったら、僕はどうなるんだろう。
「……」
半身がもがれる想いになった。
「いや……」
僕と同じ想いは、リノンにはして欲しくない。
僕が出来ること……リノンを勇気付けて、支えてあげること。
僕は筆をとる。
また、ストーカーだの、スニーカーだの出すと、脱線しそうなので……。
------
日記が消える……かぁ……。
大好きなリノンへ。
……うん、靴は違うけど、近いから良いよ。
……そうだね…この日記が消えちゃうことは、考えたことなかったな……。
もし消えても、リノンの事は絶対に忘れないから。
……でも、消えてほしくないな……。
本当は……僕だって、リノンにとても会いたいから……。
じゃあ、こっちの事書くね。
こっちでは夏に始めた日記だけど、もう寒くなってきて、冬休みも近いんだ。
学校行かなくてもいいって思えるけど、なんか休みの日って、寂しく感じるかな……。
前まではゲーセンとかカラオケとか、行ってたけど……。
この日記が気になっちゃって……。
……ごめん、あまりこっちのこと書けてないね。
次は書くから。
じゃあ、またね。
------
僕はこの間の夢を、忘れたい一心で書いた。
リノンに……あんな想いして欲しくない。
僕は出来るだけ、こちらの世界の事を書こうとしたけど、なかなか出てこない。
冬休みももう少し後だけど……近いことだけ知らせる。
ここ最近……リノンの事でいっぱいだったから……なかなか出てこない。
できればこの交換日記で、リノンをささえてあげたい……。
その想いを届けてくれたのだろうか? 交換日記は僕が閉じると、優しく僕に語り掛けたかのように、光りで応える。




