大体予想はしてた……
僕はちょっとしたミスを思い出していた。
「バス……」
思わず、こっちの言葉を使ってしまった。きっと、馬車が交通手段になっているようなところだから、バスなんて存在しないだろう。
また……説明することを増やしてしまった気がする。
そんなことを思っていると、交換日記はほのかに光る。
僕はバスの反応におびえながら、手を伸ばして広げる。
……予感は的中した。
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レベル40になりました~☆
大好きなユウスケへ☆
馬車の事、ありがとう♪
馬車じゃなくても眠れなかったかも?
経験値の多いモンスター目当てにしてたから、目がさえちゃった(ФωФ)
そっちには馬車は無いの?
そっちだとバスっていうの?
ユウスケも眠れなかったんだ~、揺れるもんね~。
え? 紙のお金なんてあるの!?
燃えちゃわない?
レベル……ふっふっふ~☆
今日、レベル40になりました♪
モンスター狩りまくりなのだ~☆
もうちょっと早くここに来ればよかったなぁ……って、思っちゃった……。
ここにしばらくいま~す!
じゃあ、またね~☆
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「うん、通じてないね!」
僕は開き直った。
に、しても……。
「レベル40って……」
某RPGなら、ほぼ終盤のレベルのような気がする……。どこまでレベル上げジャンキーなんだろう……。そもそも、リノンの世界では、レベルというものがどういう存在なんだろう。
疑問に思うところは多々あったが、たぶん……いや、おそらくレベルは上げすぎだろう……。
今から、魔王の事が気の毒に思ってしまった。
やっぱり、紙幣は無いらしい……と、なると銀行は必須のようだ。
燃えるか心配って……どういう観点なんだろう?
僕はリノンとの価値観の違いを楽しみながら、眠りについた。
・・・・・・
いつものように、夕方。
僕は交換日記を広げて、返事を書いていた。
知りたいことを一通り並べて……それと、バスについても説明して……。
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レベル40ってどういう強さなの?
大好きなリノンへ。
馬車はこっちにもあるけど、まず走らないよ。
公園とか観光地ぐらいじゃないのかな?
バスっていうのは、馬車を大きくしたような乗り物で、馬はついていないんだよ。
多分、馬車よりは揺れないよ?
お金……いや、紙だから普通に燃えるけど……。
火を心配する人は居ないかな……。
えっと……。
感覚がもうわからなくなってきたんだけど……。
レベル40ってどれくらいの強さなの?
なんか、後半のレベルのような気がするけど…。
もう魔王には近いの?
じゃあ、また!
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……きっと、もう魔王城のそばまで来てることを祈りつつ、僕は交換日記を閉じた。
願いを叶えるのか否かはわからないけど、交換日記はいつものように、優しい光を放ち、リノンに届いたことを告げた。




