カラオケ
夢を見るのも日課だろうか?
今日もリノンの夢を見た……。素朴な談笑……でも、僕はそれだけでも幸せを感じた。
目が覚めて、余韻に浸る僕。
そういえば……リノンはもっと具体的な夢を見ていたなぁ……。
どんな夢だろう? ……僕と実際に逢ったら、幻滅するんじゃないだろうか。そんな不安もよぎる。
募らせすぎて、イメージ違うといわれたら……。
寝ぼけ眼で朝食をとり、学校に向かう。
いつものように、大樹と鉢合わせして。
「試験も終わったなぁ……」
「うん、そうだね」
「なぁ、雄介?」
「なに?
「カラオケでも行かないか? 明日にでも」
「お、良いね!」
そうして、僕と大樹は明日の約束を取り付ける。
これも……交換日記のネタになるかな……。
・・・・・・
学校も終わり、いつもの日課になる。
勉強を済ませて、一息ついていると交換日記があわく光る。
僕はそっと手を伸ばし、交換日記を広げる。
「……」
目についたタイトル……。よかった……暫くはシルビィの事は書かない。そう心に誓う。
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シルビィの事書いたら、本破くからね(--〆)
こんにちわ~☆
……やっぱり校長って、強いのね……。
私たちでもそんなにすごくないわ……。
こっちにも学校はあるけど、私は行ったことないの。
主に魔法を勉強する子が行ってる感じなの。
私から見ると、レベル上げれば魔法覚えるのに……って、思っちゃうんだけどね。
なんか、それって特別みたい。
シルビィもスキル身に着けるのに、ダンジョンで覚えてた感じだったわ。
……あ、シルビィの事考えたら、この本破くからね!?(--〆)
町は今4つ目なの。
新しいモンスターがいっぱい居て、はしゃいじゃった♪
ここでしばらくレベル上げする予定なの。
じゃあ、今夜も夢で逢いましょうね♪
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リノンの所にも、学校はあるみたい。だけど、リノンは行ってないみたいだな……。僕と同じ同級生になると、楽しそうなんだけど。
どうも魔法学校らしい。やっぱり、こっちの世界で言うところの、異世界にリノンはいるようだ。
……じゃあ、初めに話ししてたおじいちゃんって……本気でボケてたのかもしれない……。
大体のリノンの住む世界観が、見えてきたような気もする。
そういえば……最初はゲームって疑ったよなぁ……。だって世界観が某RPGなんだもん……。
けど、ヤキモチも妬かれ、交換日記の内容からも、一人の女の子……リノンは実在すると、確信できるようになってきた。
……そもそも……もう僕にはもう告白した時から、恋心が芽生えてるけど……。
今日も良い夢が見られますように。
そう願いながら、僕は眠りについた。
・・・・・・
「雄介、今日の約束忘れてないだろうな?」
帰ろうとする僕を、大樹が呼び止める。
「あ、あぁ、わ、忘れてないよ?」
「……最近の様子が変なのも含めて、全部話させてやる!!」
大樹はそう言うと僕の肩に手をまわし、首をロックする。
「い、痛い! 勘弁してくれ!!」
「い・や・だ!」
大樹が意地悪をする。
とはいえ、彼女が出来たことについては、まだ伏せとこう。
こっちの世界とは異なる、異世界の彼女なんて、信じられないだろう……。
「じゃ、行くか!」
「うん」
大樹から解放され、僕たちはカラオケに向かった。
「カラオケと言えば、ここだよな!」
「うん、学校のそばだから、安くて良いよね」
僕たちは、学校が終わってすぐ来たので、待ち時間なしで入店する。
「雄介、得意のアレ、聞かせてくれ!」
僕は最近ボカロの曲にハマっている。
昔はマイナーだったと聞くけど、今では校内放送で放送部が流すほど人気になっている。
僕はその一つ、持ち歌を披露する。
採点ゲームで遊んでいるので、歌い終わった後結果が表示される。
「92点? やっぱスゲーよ。この曲難しいだろ……」
「いや、歌いこんでるから……」
確かにボカロの曲は、機械に歌わせているので、なかなか表現が難しい。僕もこの曲を覚えるのに時間がかかった。
「じゃあ、次俺ね」
大樹はマイクをとり、JPOPを歌う。
「くそぉ……82点かぁ……」
「いや、この曲難しいから……」
流行りの曲。でもかなり練習しないと、点数は伸びない。大樹自身も歌は上手い。けど、採点機能には嫌われているらしく、点数は思いのほか伸びない。
「大樹の十八番なら、90点狙えるんじゃない?」
「簡単に言うなよ……」
大樹は少ししょげながら、次の曲を選んでいた。
・・・・・・
カラオケが終わり、僕は近くのゲームセンターが気になった。
「僕、ここで1ゲームやっていきたいんだけど……」
「あぁ、付き合うよ。あのゲームだろ? 俺は高くて手が出ないけどな……」
大型筐体の対戦陣取りゲーム。出た当初は500円くらいが相場だったが、学生街ともあるのか、値段控えめ300円になっている。
「じゃあ、見てて!!」
僕は筐体に乗り込み、ドアを閉める。
モニターで戦況が見えるので、大樹はそこで観戦するようだ。
ネット対戦型なので、対戦者が決まるまで少しウエイトがある。
マッチングが完了し、カウントダウン。
「いくよ!!」
カウント0と共に、僕はゲームを操作する。
2分以内に、多く陣地を取ったほうが勝ち。
自分のアバター……ロボットがやられても、待機時間を代償にして復活できる。
「!?」
相手の動きが良い!?
一回目の撃沈メッセージ。瞬殺された……。
「次!!」
……も、早かった。
2分の間、僕はほぼ何もできないで、やられていた……。
「雄介……相手が悪かったみたいだな……」
「……」
「ちょっとしたギャラリー出来てたんだけど、相手有名なプレーヤーらしいぞ」
「そう……なの?」
すっかり気を落としていた僕に、大樹は慰めの言葉をかける。
意気消沈しながら、大樹と僕は家に帰った。
・・・・・・
今日の対戦結果を受けて意気消沈気味だけど、僕は交換日記に手を伸ばす。
ゲーセンとカラオケの事書いてみよう。
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カラオケ行ってきたよ!
こんにちは!
そういえば前に、僕がそっちの世界のこと聞きたいって言ったけど……。
僕の話もしないとだよね。
今日はゲーセンの対戦ゲームで負けました……。
最近調子よかったんだけど……。
あと、友達とカラオケ行ってきたよ!
久しぶりに歌ったら、のどが痛くなっちゃって…。
今はかすれ声だったりするんだ……。
そっちでは歌ってどんな感じなの?
リノンは歌ったりするの?
町……4つ目でレベル30なの!?
早く進めたほうが、経験値の効率も良いよ?
じゃあ、またね!
大好きなリノンへ。
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僕は今日の事を綴りつつ、半分はリノンの事について尋ねる形で書いた。
そして、今日も良い夢が見られるように願いながら、交換日記を閉じる。
それに応えてか、交換日記は優しく光る。
……そういえば……。カラオケって書いちゃったけど、通じるかな……。通じないだろうな……。




