夢で逢えたら
僕はその日、夢を見た。
女の子と、学校で楽しく話をする夢……。
僕にはなんとなく、その女の子がリノンなのかなと思った。
目が覚めて。
具体的な特徴は、身長ぐらいしかわからないけど……。
なんとなく、リノンの夢を見たような気がした。
夢見心地で朝食をとり、学校に向かった。
「おう、雄介!」
「おはよう!」
いつものように、大樹と通学中に会う。
「おい、雄介。なんだか顔がたるんでるぞ?」
「へ?」
「いいことでもあったか?」
「いや、何にも……」
僕、顔を緩ませてた?
気合を入れ直して……。
「そういえば、この間の休みにホテルに泊まったって言ってたけど、どんな感じだった?」
「……高校生一人で泊まるには、場違いな気がしたよ」
「お前も、寂しいんだなぁ……」
大樹は同情するような表情で、うんうんとうなずき、僕の肩に手をかけてくる。
いや……僕はホテルに一人で泊まりたかった、だけなんだけど……。
「どっちが先に、彼女作るか勝負だ!」
「……なんの勝負だよ」
大樹は胸に手をやり、握りこぶしを作る。そんなところで、気合入れなくても……。
それに、まだ会えるかわからないけど、僕には彼女が居る。できた報告ができないのが悔しいけど。
「大樹は結構モテるからなぁ……」
「いや、そうでもないぞ? ファンは居るみたいだけどね」
さすが、サッカー部の時期レギュラー。確かに同級生の中でも、ファンクラブがあったような……。
そんな談笑をしながら、僕たちは学校に入った。
・・・・・・
学校も終わり、急いで帰宅する。
今日こそは、リノンの事……リノンの世界を知る内容があれば……。
僕は期待しながら、勉強片手に交換日記の返事を待つ。
勉強も一区切りついたところで、交換日記があわく光る。
僕は、交換日記を手に取り、新しく追加されたページに、目をやる。
……。
ざっと、見えてしまったけど、僕の願いは虚しかったようだ……。
------
今日もユウスケの夢を見たの!
こんにちわ~☆
じゃあじゃあ、私の夢に出てきてるユウスケと身長
同じぐらいだ~☆
良い身長差だね♪
今日の夢はね、なんかお城に居たの。
そしてね、ユウスケがエスコートして、お城で踊る夢だったの。
踊り終わった後、二人で食事してね……。
そして……(/ω\)
ねぇねぇ……。
ユウスケは私の夢を見たりする?
夢の話とか聞きたいなぁ……。
ユウスケの夢で私はどんな感じだろう……。
また、聞かせてね♪
ユウスケ、大好きだよ……。
P.S.
船、まだ見つからない。
------
「……またP.S.で終わらされた」
一人つぶやく。まぁ……ある程度は予測出来てたけど……。
夢……かぁ……。昨日初めて見たなぁ……。やっぱり僕は、告白をしてこたえをもらってから、リノンに対する気持ちが募るようになってきたと思う。
まだイメージはできないけど、なんとなく僕の夢は、リノンが出てきてるように思える。
「今日も夢、見れるといいなぁ……」
そう願いながら、僕は眠りについた。
・・・・・・
また……同じような夢を見た。
学校もおわり、女の子と二人で帰宅する夢……。
他愛のない談笑をしながら……。でもそれでも、僕は楽しい気持ちになった。
目が覚めて。
やっぱり、顔のイメージとかは、ぼんやりとしている。
でも……なんとなく、リノンと同じ時を過ごした……そんな気がした。
「もし、叶うなら……現実になってほしい……」
僕の想いは、少しずつ募っていくのだろうか?
でも……。
「逢える事は……あるのだろうか?」
独りつぶやく。
僕とリノンをつなぐのは、交換日記ただ一つだけ。
……リノンは……交換日記の中の住人なのだろうか?
いや……よく聞く異世界……。僕たちの世界とは、異なる世界の住人なのではないだろうか。
「……超遠距離恋愛だな……」
僕は、ぼそっとつぶやく。
この恋は、果たして成就するのだろうか……。
・・・・・・
帰宅して、交換日記を開く。
夢の話題……僕も夢を見たから、そのことに触れよう。
僕は書き綴る。
------
港町の生活知りたいな!
こんにちは!
僕はあまり夢を見ない方だけど……。
リノンの事は、告白してからよく夢で見るよ?
僕の夢だと、リノンは制服を着て学校で一緒に生活してるって感じかな?
どころで、今レベルいくつなの?
魔法ってどれくらい覚えたの?
なんか、そういうところ聞きたいな……。
船見つからないみたいだけど、今は何してるの?
もしかして、装備変えないでレベル上げしてたりしないよね?
クエストの事とかも聞きたいし、リノンの活躍をもっと聞きたいな……。
返事待ってます。
大好きなリノンへ
------
何だろう……慣例的にやってたけど、僕たちの交換日記は、大体1ページに収まるようにしている。
募る話も、いっぱいあるけど、お互いに交換日記に没頭しないように、しているからだろうか?
いや、リノンの交換日記が、いつも1ページにしているから、それに習ってるからなのだろうか。
おそらく……リノンは魔王を倒すという、重大な役目を持っている。だから、交換日記にも細かく書けないのかもしれない。
……いや、結構書きたいことだけ書いて、返してるような気もするけど……。
少しは、リノンの世界の事も知りたい……。
その想いは届くだろうか?
僕が交換日記を閉じると、優しい光りをまとって、想いを届けたことを示す。




