リノンのこたえ
今日僕は、水族館の近くにあるホテルに居た。
交換日記を持って……。
これは、リノンと約束したことだ。僕も一人で宿に泊まると……。
今は周りは暗くなっている。ホテルのチェックイン時間がこの時間だったので、合わせて到着するように家を出ていた。
予約ももちろん初めてで、これからチェックインするところ。
水族館は、明日行く予定にしている。
ホテルのロビーに着き、周りを見渡す。
さすがに水族館がそばにあるホテルなだけあって、豪華な彩りがされている。
ロビーのわきには版画展の、のぼりが立っていた。
ちょっとしたショースペースもあるみたいだ。
「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」
ロビーのフロントに立つと、受付係に声をかけられる。
「はい、予約の……新田雄介です」
「少々お待ちください……。確認いたしました。では、こちらの紙にサインしてください」
受付係が手渡す紙には、僕の住所と名前が書かれた受付用紙だった。下の方にサインをするところがある。
僕は予約内容とあっているか、確認してサインをする。
「ありがとうございました。ではこちらが部屋の鍵になります。ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
「ありがとうございます」
僕はカードのような紙を受け取り、その紙に書かれた部屋番号、1002に向かう。
ちょっと奮発して……というか、空いている場所も限られていたので、予算ギリギリの部屋を選んでいた。
えっと……部屋は10階……。エレベーターに乗り、部屋の入口まで来る。
「……初めてすぎてわからない……」
茫然と部屋の前に立ち尽くす。
本当に、このカード状の紙で鍵が開くのだろうか? 恐る恐る、カードの差込口に入れてみる。
「ピー。カチャ」
ドアのカギが外れたようだ。
「お邪魔します……」
僕の部屋なのに、なぜか挨拶をしてみる。恐る恐る入ってみると……部屋は真っ暗だった。
明かりをつけるために、スイッチを探してみたが、見つからない。
カードホルダーがあったので、さっきの紙カードを入れてみる。
そうすると、部屋の明かりが点いた。
「これ、どうやって消すんだろう……」
と、独りつぶやきながら、部屋を見渡す。
大きなベッドに、バスとトイレが分かれた部屋……。
……高校生が一人で泊まるような部屋ではなさそう……。普通に高いと思ったら、なんか場違い感が……。
独りつぶやいた内容の回答は、ベッドにあった。
ベッドの所に、部屋の電気を消すスイッチがあった。
僕は、移動でも疲れていたので、ベッドで横になる。
そして……持ってきた交換日記を取り出す。
「……」
まだ、返事は書かれていないようだ。
「これで、フラれてたら、傷心旅行に切り替えよう……」
誰もいない部屋でつぶやきながら、交換日記に返事が来るのを待つ。
程なく、交換日記はあわく光りだす。
「……」
正直、開くのが怖い……。
何を書かれているか……。フラれているかもしれない。
そんな恐怖に打ち勝ち、僕は勢いよく日記を開く。
目は……閉じたまま。
開けるのが怖いけど……。
勇気を振り絞り、目を開けた。
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私も……好きだよ……。
……うん、ありがとう……。
私も、ユウスケの事が好きなんだよ?
こうして日記書いてて、そう思えるようになったんだ。
だから……シルビィの事ばかり気にしてるのに、私……つい……。
私こそごめんなさい……。
……でも、ユウスケの初めての告白、私がもらえてうれしかったな。
……うん、とっても、とっても、とーーーっても。
ねぇ……。
私ね、時々ユウスケの事、夢で見るの。
……出てくるユウスケは私の想像だけどね……。
……。
……夢の事思い出しちゃった…(/ω\)
私ね。
気軽な気持ちで、「交換日記」ってこの本に書いたの。
そして、私の日常を誰かと共有したいなって……。
でもね。
今はユウスケと、こうして交換日記出来るのが、うれしく思うの。
この本ってね、誰かのところにランダムに飛ぶようになっててね……。
最初は私の話聞いてくれる人なら誰でもいいって思ってたけど……。
今はね。
ユウスケにこの本が届いたのは、運命だと思うんだ……。
……あはは☆
なんか、運命感じちゃうなぁ……。
もしかして、私の運命の人って……。
これからも、こうして交換日記出来ると嬉しいな……。
私も……ユウスケの事、大好きだよ……。
……こうして書くのも、恥ずかしいんだね……。
ユウスケにこんな思いさせちゃったんだ……って思うと、私も胸が痛くなるわ……。
ありがとう。
これからもよろしくね。
……出来ればずっと一緒に……。
……な~んてね♪(/ω\)
大好きなユウスケへ。
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そこには、愛の言葉がたくさん綴られていた。
僕は……嬉しいを通り越して、読んでて気恥ずかしくなった……。




