返ってくる返事
目覚ましの音とともに、僕は目を覚ます。そのまま下のリビングに降りて、食卓に着く。
「おはよう」
「おはよう」
父さんと母さんに挨拶。いつもの日常だ。
「ごちそうさまでした」
僕は挨拶をして、二階の僕の部屋に戻る。
今は夏休みのお盆時期。僕は近くの飲食店で、アルバイトをしている。出かける準備をすすめる。
ふと、僕の机……例の交換日記が気になり、開いてみる。が、僕が書いた後に、続く言葉は無かった。
「悪戯……だよな?」
独り呟きなから、僕はアルバイト先に向かった。
・・・・・・
アルバイトが終わり、家に帰宅。
机の上には……交換日記は健在。きっと誰かの悪戯したノートを、間違えて持って帰ってきてしまったのだろう。そう思うことにした。
僕はベッドに横たわり、ぼんやり机の上を見る。すると、交換日記がほのかに光った……ような気がする。
「まさか……な?」
僕は、恐る恐るノートに近づき、そっと開いてみる。
そこには……続きが書いてあった。
「わ!?」
僕は、気味が悪くなって、思わず交換日記から手を離す。なんか……本当に……続きが?
もう一度、勇気を振り絞って、交換日記を見てみる。
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校長先生ってすごいんですね!
こんにちわ~☆
お返事くれて、ありがとう!
新田雄介さん……なんか難しい名前ですね……。
ユウスケって、日記では呼びますね!
勇者なんて、すごくないですよ……。
ただ、なんかめんどくさそう……( ;∀;)
魔王だかなんだかを倒せって……。
そんな気私にはないのに~!!!
校長って、何ですか?
お話で人が倒せるなんて、すごい魔法の持ち主なんですね!
私は、まだ魔法が使えません……( ;∀;)
レベル10ぐらいにならないと使えないとか……。
だから、今日もスライム倒すの頑張ってみたけど、べとべとで倒すのめんどいよ~。
早く魔法を覚えたい……( ;∀;)
また、お返事くださいね~☆
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また、女の子の字……。文末には顔っぽい絵が添えられている。
これが、本当の『顔文字』であれば、誰かの悪戯と見抜けるんだけど……ちょっとした絵を描いているだけだ。僕は日記を読み返す。
「まさか……な」
今日は疲れてるのかな……寝てから考えよう。
・・・・・・
翌朝、変わらない日常。
僕は朝食を済ませて、アルバイトに向かう。
交換日記の事は、一旦忘れることにして……。
・・・・・・
……。
やっぱり、交換日記はある……。もう一度、広げても確かに、僕の返事が書かれている。
「もう一度、試してみるか……」
僕は交換日記に、こう書き添えた。
ちょっと悪ノリしてみる。
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校長先生は魔法使いですね。
こんにちは。
お返事ありがとうございます。
名前の呼び方はそれでいいですよ!
じゃあ、僕はリノンって呼ばせてくださいね。
目的は魔王を倒すことなんですか?
もしよろしければ、詳しく聞けると嬉しいです。
校長先生は……確かに魔法使いかもしれませんね……。
校長の呪文で、今日は10人倒れました。
魔法はまだなんですね。
スライムを倒すだけで、レベル10になりそうですか?
早く魔法を覚えて、べとべとから解放されるのを祈ります。
どんな魔法を覚えたかも教えてもらえると嬉しいです。
また、お返事もらえると嬉しいです。
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校長先生の話は、終業式の時のだけどね。実質校長先生の話は長い。何人か起立性貧血で倒れたりもするけど……10人は言い過ぎたかな?
でも、相手の事もよくわからないので、多少話を盛り上げてもいいだろう。
交換日記を閉じると、ほのかに光った……ような気がした。