冒険の続きが知りたい
今日も僕は急いで帰る。交換日記の住人・リノンと話をしたいからだ。
急ぐ気持ちで、交換日記を開いてみたが、まだ新しいページは追加されていない。今までの事を考えると、寝る間際ぐらいに返ってくる。
向こうも、一日を終えてから書いているのだろうか?
……いや、向こう……交換日記の世界では、どのように時間が流れているのだろうか? ちょっとした疑問を覚えつつも、僕は返事が来るのを待つ。
季節的には、もうそろそろエアコンの冷房がいらなくなってきた。時々暑い日もあるけど……。
少しずつ衣替えが進んでいくところだ。
ぼんやり時を過ごしていると、交換日記はほのかに光り、交換日記の住人・リノンからの返事が届いたことを知らせる。
僕は、そっと交換日記を手に取り、追加された内容に目をやる。
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私もお魚好き~☆
こんにちわ~☆
うん、そうそう!
お魚、大好きなの!!
ユウスケは焼き魚と煮魚どっちが好き?
魔法、しっかり届いたから、ユウスケは実は偉大な魔法使いだったりして?
そうそう、ユウスケの日記見て、村まで行ってみたの。
一緒の子は、シルビィって言うんだけど、
ちょっと厳しかったみたい。
それでね、村の装備一式シルビィに買ってあげたの。
そしたら、と~っても喜んでくれたよ♪
ユウスケの言う通りにしたら、シルビィレベル8まで上がったの。
びっくりしちゃった!
私はまだレベル16だから、追いつかれないか心配…。
じゃあ、またね~☆
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「魚に食いついてきたか……」
僕は、微笑みながら交換日記を読み解く。焼き魚と煮魚ねぇ……僕、水族館に行こうとしてるんだけど……。まぁ、刺身が好きかな?
仲間は……シルビィって言うんだ。リノンみたいに無茶はさせてないみたい。無茶させてたら怒りたいところだけど……。
僕のアドバイスも受け入れてくれたみたい。基本RPGは先勧めたほうが、レベル効率も良いから、交換日記の中でもそれは通用するみたい。
僕は、知っているゲームの知識で答えれば、交換日記の世界でも通用することを知り、少し安心した。交換日記の世界では、どうなっているんだろう……。そう考えながら、僕は眠りについた。
・・・・・・
すっかり、僕は交換日記にハマっていた。学校も足早に帰り、食事も風呂も済ませて、交換日記に没頭する。
今日はどんなことを書こう……。なんだか増えた仲間の事が気になる。
僕は筆をとり、交換日記にしたためる。
とりあえず、魚の好みの料理方法も、書いて……。
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仲間はシルビィって言うんだね。
こんにちは。
魚……僕は刺身かな……。
魔法使い……まぁ、自分に眠りの魔法をかけたりするのは、得意だけどね(笑)
仲間になったの、シルビィって言うんだ?
村の装備だと楽々じゃないかな?
基準は分からないけど、シルビィがレベル10になったら、クエスト行ってみたらどうだろう?
リノンは回復魔法使えるし、念のため回復薬も持っていくと、良いかも?
クエストは洞窟だっけ?
僕からすると楽しそうだけど、そうでもないのかな?
じゃあ、またね!
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……刺身、通じるかな……海外でも刺身って、あまり食べられないと聞いたこともある。相手は交換日記の住人。この世界では、刺身と言う言葉はあるのだろうか?
言葉という魔法が届いたのは嬉しいけど、なんだか気恥ずかしい。だから、あえてあまり触れないようにしておく。
僕はゲームを進めるようなアドバイスをしてみる。
さすがに、いつまでも村に留まられても、話が見えてこない。僕はこの冒険の続きが知りたく、先に進めてほしい。
そう願いながら、僕はゆっくりと交換日記を閉じる。
交換日記はほのかに光り、交換日記の中の住人に届けられたことを告げる。