届いた魔法
今日も僕は足早に家に帰る。交換日記の住人、リノンと会話をするために。
昨日はキザな事書いてしまったような気がするけど……。ちょっと今日の答えが同返ってくるか、気恥ずかしい。
「今日こそは、仲間出来てるかな……」
ぼんやりと独りつぶやきながら、交換日記の応答を待つ。
今日は……勉強がはかどらない。昨日の書いた内容が、頭をよぎる。ちょっと恥ずかしすぎる……。
そうこうしていると、日記がほのかに光りだす。交換日記の住人、リノンからの返事だろう。
僕は、昨日書いた事を思い出しながら、嬉しさ半分、気恥ずかしさ半分で、ゆっくりと交換日記に手を伸ばす。
そして、追加されたページに目をやる。
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魔法届いたよ~☆
こんにちわ~☆
ユウスケはお魚が好きなんだ~!
私も大好物なの♪
一杯食べてきてね☆
でも、食べすぎは良くないからね?
そうそう、ユウスケの魔法届いたのかも?
今日ね、ギルドで女の子に声かけたの。
そしたら、その子も人見知りだったらしくて……。
最初は二人でしどろもどろやってたけど、
お互いに人見知りってわかったら、笑っちゃった~☆
そして、仲間になってくれるって♪
その子はね、女剣士なの。
まだレベル1みたいだから、しばらくは実家暮らしで
のんびりする~☆
じゃあ、またね~☆
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「魔法、届いたんだ……」
ちょっと気恥ずかしかったけど、届いて仲間が出来たのであれば嬉しい。やっぱり人見知りの子を仲間にしたようだ。多分人見知り同士、気が合ったのだろう。
僕は微笑みを浮かべながら、交換日記に目を通す。
「水族館……説明必要なのかな……」
軽く、水族館が通じなかったことに、ショックを覚えながら、僕はそっと交換日記を閉じ、明日書く内容を考えながら、眠りについた。
・・・・・・
早く返事を書きたくて、食事も風呂もさっさと済ませて、僕は日記を綴り始めた。
水族館……まぁ、説明は割愛して、お祝いの言葉をあげたい。
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魔法届いてよかった!
こんにちは!
お魚……うん、そうだね……。
仲間、出来て良かったね!!
魔法……ちょっと気恥ずかしかったけど……。
届いたなら、うれしいかも?
やっぱり人見知りの人居たんだね。
気が合う仲間と旅をするのって、楽しいと思うよ?
またしばらくはスライム倒すんだね。
リノンが回復魔法持ってるなら、次の村までいけない?
そこでプチデビルをちまちま倒す方が効率良いかもよ。
あと、剣士なら、銅の剣を買ってあげたらどうだろう?
じゃあ、またね!
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……やっぱり、魔法は気恥ずかしかった。でも、喜んでもらえたなら、それはそれで嬉しい。
仲間が増えた以上、仲間の事も気になる。
さすがに……今の交換日記の住人、リノンのような無茶はさせられないだろう。
僕は仲間を思いやってほしい一心で、交換日記を綴った。
これが……後に、話がややこしくなるとは、想像せずに……。
僕はそっと交換日記を閉じて、ほのかに光り、向こうに届いたことを確認すると、眠りについた。