成長する二人
僕はソワソワしながら、家に帰った。交換日記の住人……リノンに会うために。
部活は生物部で、魚に餌をやるだけ。時々、解体とかしてるみたいたけど、こっちは任意参加。ほぼ帰宅部と言っても良いかもしれない。……なんて、言ったら先輩に怒られるか……。
僕は軽く勉強をしながら、交換日記が光るのを待つ。
そうして……交換日記が光りだす。
リノンからの返事だ。
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回復魔法覚えました!
こんにちわ~☆
宿、ユウスケも泊まってみたら?
村の宿だと、プチデビル3体倒したぐらいで泊まれるよ~☆
洗濯はね、宿屋にお願いしてるの。
だって私は、プチデビル倒してるんだもん(笑)
だからね、新しい町とか行くときにはね、着替えに返り血つかないように、気をつけなきゃいけないの……(´Д⊂ヽ
仲間は……いいや(笑)
そうそう、レベル14になりました!
回復魔法を覚えたよ!
これで、回復薬無しでも倒し続けられるよ~☆
まったね~☆
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「……銅の剣、ガン無視!? あと、仲間もいらないって……」
思わず声を上げる。
でも、レベルが少しずつ上がっていくのは、なんだか微笑ましい。
たとえ、向こうが本の世界……ゲームの世界であっても、僕はリノンとこうして、交換日記を取り交わす、嬉しさを感じていた。
もし、これがゲームの世界だったら、ギャルゲー? それとも放置ゲー?
そうであれば、作った人に感謝する。
日記の余韻を残しながら、僕は眠る。
・・・・・・
今日は僕が書く番。
1日おいて、書くのが僕の日課になっていた。
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僕も宿に泊まってみようかな……。
こんにちは!
宿…そうだね、泊まってみようかな…。
僕の場合、バイト3日分ってところかな…。
夏休みのバイト代もあるし、そういうのも楽しそうだね!
なんか、モンスター倒すだけでも、色々と大変なんですね……。
着替えに返り血つかないように気を付けるとか……。
そんなの想像したことがありませんでした。
回復魔法、おめでとう!!
次はレベルいくつで魔法を覚えるの?
なんだか、リノンの日記を見てると、どんどん成長してるな……って、思います。
僕も成長しなきゃな……。
じゃあ、また!
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本当に……ゲームの主人公とかって、大変なんだな……って、思い知らされた。
確かに、残虐シーンはカットされてるけど……。返り血をどうしてるかなんて、考えたこともなかった。
もし、これがゲームなのであれば、作った人はそういう、細かい描写もこだわってるんだろうなぁ……と、感じてしまった。
本当に……僕も成長したいと、望んでしまった。
最初のうちは不気味な日記だったけど、数をこなしていくとなんだかそれは楽しい。
僕はこの交換日記を大切にしたいと、思いながら眠りについた。