交換日記の住人
今日は僕と父さんとで、エアコンを買いに電気店に来ていた。
僕の部屋に設置するエアコンを探しに。
「雄介の部屋なら、これなんてどうだ?」
「僕、わからないから、父さんに任せるよ」
概ね父さんは決めていたらしく、6畳用のエアコンを購入。そして配達の時間指定をしにカウンターに座らされる。
「現在、繁忙期なので、お届け・工事は最短で2週間後位を目安にしてください」
そう、店員さんから言われると、父さんの休みの日で最短日にする。
「母さん居るのに、父さんが居る日にするの?」
「ああ、母さんも色々聞かれると、答えられないだろうからな」
父さんの優しさだろうか? 僕はそういう思いやりが良いなと感じた。
「父さん、ありがとう」
「いいよ。熱中症で倒れられても困るしね。最近気を付けないといけないって、ニュースでもやってるし。これで雄介も勉強がはかどるだろう?」
父さんは、若干嬉しそうに笑う。
僕にはなぜ父さんが嬉しそうなのか、わからなかった。
家に帰ると、リビングで宿題の山を少しずつ、崩していく。
食事を終わらせて風呂に入り、そして僕は交換日記を手にする。
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ナイフ、投げれなかった( ;∀;)
こんにちわ~☆
……ディベート、欲しかったなぁ……( ;∀;)
こっちの世界にもあるかしら?
見かけたら、買ってみるね~!
でも、どうであれ両親を倒しちゃダメよ?
倒すなら、魔王にして!(笑)
うん、今は新しい村で暮らしてるの。
宿代がバカにならないけど……経験値とお金は稼げるから、
何とか暮らしていけてるわ!
ナイフの事、それだ!と思って、5本新調したの。
……でも、このナイフ投げられないみたい……( ;∀;)
銅の剣がもう少しで買えたんだけどね……。
手に取ってみたけど、私には重すぎたので、パス!('ω')ノ
じゃあ、またね~☆
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……ナイフは投げられなかったらしい。何かの制約でもあるのだろうか。実世界ではどんなナイフでも、投げられるはずだけど……。てか、銅の剣があるなら、そっちを買え!!
いつもながら、ツッコミどころが多い、交換日記だな……と思いながら。
あ、宿に泊まってるらしいから、近くの村で暮らしてるのかな?
……ディベートは買えないだろう。
僕は、そんなことを思い浮かべながら、交換日記をそっと机の上に置き、ベッドについた。
・・・・・・
今日はバイトがある日だったので、また夕方に書こうと思う。
僕はどう返したら良いか、ぼおっと考えてしまう。
「雄介!」
「は、はい!」
店長の激が飛ぶ。
バイト中だから、バイトに集中しなきゃなのに……。どうしてこんなに気になってしまうんだろう?
「雄介」
「何ですか?」
「恋でもしたか?」
「ぶっ!」
店長の言葉で、思わずふいてしまう。
恋と言ってもなぁ……交換日記に? なんて思ってしまう。
でも……ただ、交換日記の住人と、もっと話したい……ただそれだけ。
バイトも集中して、今日の仕事を終わらす。
宿題も、もう少しで終わるところ。
もう数日で学校が始まるので、最後の追い込みをかける。
そして……僕は、日記を綴る。
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ナイフ、ごめんなさい( ;∀;)
こんにちは~!
村の暮らし、順調で何よりです!
僕は宿暮らしって、なんだかいいなぁって、思います。
その暮らし、聞かせてくれるとうれしいな。
ディベートで魔王…倒せるなら…ね?(笑)
投げナイフ作戦は失敗だったみたいだね…。
余計なお金使わせてしまって、ごめんなさいm(_ _"m)
銅の剣って、攻撃力ありませんか?
ナイフより長いと思うし…。
プチデビルの返り血、ちょっと怖いかも…?
血まみれで村に帰ってるんですか?
村の人、驚きませんか?
では、また!
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そう、宿暮らし。なんだか憧れる……。僕はそういうところに行ったことって、数えるくらいしかない。しかも両親と一緒だったり、修学旅行くらいしかない。一人で宿なんて一度でいいから、とってみたいと思った。
投げナイフ作戦も失敗したので、出来れば銅の剣を使ってほしいところ。僕だったら、すぐに銅の剣にするかなぁ……。返り血を浴びるって……ちょっと生々しい……。
一体、どんな生活してるのかなと、楽しみながら僕は交換日記を閉じる。日記はいつものように、ほのかに光り送ったことを告げた。