表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/192

賑やかなのは良い事です

 虹結びの祭りとは、クラヴィスさんとアースさんが契約を結んだ際、アースさんが空に虹を架けた事がきっかけで始まったノゲイラの祝い事だ。

 クラヴィスさんという凄腕の魔導士が、天気を変えるほどの力を持った魔物を従えた。

 それだけでも大きな出来事だというのに、そんな存在がノゲイラの領主になると来たわけだ。

 民としては機嫌を損ねたらどうなるかという不安があったろうし、今後ノゲイラを良くして欲しいと願うのも当然だった。


 強大な力を持った新たな領主に対し、ノゲイラの繁栄を願い、最大限の敬意を示す。

 元々はそういった意味合いで行われるようになった小さな祝い事だったのだが、そこに目を付けちゃったのが私です。

 だってノゲイラ独自の祭りとかあったらさぁ、絶対観光になるじゃんって思っちゃってさぁ。

 お試しで城下町で祭りみたいなのしたら、あっという間に広まっちゃってさぁ……!



 結果的に気付いたらノゲイラ全域でのお祭り事になってました。

 やっぱり娯楽は広まるのが早いねぇ。




 祭りは夏の初めにノゲイラの各地で行われる。

 村や町でそれぞれ行われるため日程も規模も様々で、一日で終わる所もあれば三日以上かけて祭りをする場所もある。

 その中でも一番規模が大きく人が集まるのは、やはり城下町だろう。



 彼女の件が落ち着いて以降、観光業にも力を入れるようになっているため、この時期の城下町は特に観光客が多くなる。

 ノゲイラは王都から離れているけれど、何かと注目されている領地だ。

 それに王都や他領への技術提供や、ノゲイラ以外の道路整備も進んでいるから、交通の便も良くなっているため昔に比べて随分来やすくなっている。


 そういった要因から、今年の観光客はどれぐらいくるか、クラヴィスさんでも予想しきれないそうだ。

 まぁ一番の理由は去年グラキエース陛下が見学に来たのもあったからなんだけど。



 王都でも学校の設立とか色々進めているらしく、ノゲイラの学校を見学しに来たのは良いのだが、その時丁度虹結びの祭りがやっていたからって遊びに行っちゃったんだよねぇ。

 クラヴィスさんが護衛に就いて幻影で隠したりしてバレはしなかったけど、その後、王都の収穫祭でグラキエース陛下の提案でノゲイラ式の屋台やらが並んだもんだからお察しというわけです。

 楽しめたのなら嬉しい限りだけど、ノゲイラの祭りは私のせいで独特だからなぁ……しかもグラキエース陛下お気に入りとくりゃ、皆も真似するために下見に来るわなぁ……。



「なんか、今日はいつもより賑やかだね?」


「やっぱりそうですよね。何かあるんでしょうか?」



 今日はクラヴィスさんと用事も兼ねて城下町の視察に来ているのだが、やけに賑やかに感じてフレンと二人、小首を傾げる。

 年に一度の祭りが開かれるといってもまだ数ヵ月先の話だし、観光客もちらほら見かけるが別にいつも通りで特別多いわけではない。


 たまに町の人や商会が協力してイベントを開いたりしてるから、それかなぁ?

 大きいイベントなら私も事前に聞いてるけど、ちょっとしたイベント程度なら私が知らない時もあるもんなぁ。

 護衛をしてくれているスライトに視線を向けるが、スライトも知らないらしい。

 何だろなーと周りの様子を見ていると、店主と話していたクラヴィスさんが戻って来るなり私の頭を撫でた。



「東の市場で商人達が特売を行うと聞いている。

 ノゲイラに来たばかり商会も参加するそうだから、皆、興味があるんだろう」


「ほへー」



 祭りの準備が進んでいくにつれ、賑やかな空気に感化されて財布の紐が緩くなる人は増えている。

 それに宿が取れなくなる前にノゲイラに来ておこうって観光客も少なくないからネ。

 きっと新しく来た商会が参加するのは客引きとお披露目を兼ねてるんだろう。私も気になるもんなー。



「ねぇねぇクラヴィスさん、ちょっと覗いてみるとかって」


「私は構わないが、間違いなく騒ぎになるぞ」


「デスヨネー」



 宥めるように頭を撫でられて思わずへらりと笑う。

 私だってわかってましたよ。でも特売って聞いたら気になっちゃうじゃんかー。



 ノゲイラの皆には、クラヴィスさんだけでなく私の顔もとっくの昔に知れ渡っている。

 その上領地の中、というのもあって変装なんてしていない私達はそりゃあもう目立つわけだ。

 おかげでさっきからお店の人からお菓子とか色々貰ってます。んまんまですわ。


 私達が視察をするのは良くある事なので、城下町の人達は割と気軽に声を掛けて来る。

 勿論私達に対して不敬にならないように一線は引かれているけれど、必要以上に怯えられたりしないのは良い事だろう。

 アースさんに至っては、馴染みの店から味見という名の餌付けをされているぐらいだ。

 一応強大な力を持った魔物って扱いなんですけどねこの龍。なんで私達の誰よりも城下町の飲食店に詳しいんだこの龍。



 とまぁ、皆には受け入れてもらえているので、視察をしていてもそこまで大きな騒ぎになった事は無いが、人が大勢集まる場所だと流石に厳しいだろう。

 特に特売が行われる市場なんて、地元民だけでなく観光客も集まってるだろうしなぁ。

 結構貴族の観光客とかいるからめんどくさいのよね。お近付きになろうと突撃かましてくる人とかさ。急に来るからびっくりするんだわ。



 それに、件の商会とはこれから会う予定だしねぇ。

 特売はまた今度こっそりお忍びで行くとしよう。ディーアかウィルに頼んで、次はいつやるか調べてもらっとこーっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ