幕間 レッツクッキーング
『レ〜ッツクッキーング!』
亀有さん、真希、希望、椿先生、くるみ会長、美咲委員長は調理室で頭に三角巾を着け、エプロンを身にまとってそう言った。
そして、クッキングバトルの火蓋が切って落とされた。
七海ちゃんがオカ研に正式加入するとのことなので、みんなでおもてなしをしようと、お菓子やスイーツを作ることになったというわけだ。
そこで、亀有さん、真希、くるみ会長チームと希望、椿先生、美咲委員長チームに分かれて行われて、どちらがよりおいしいお菓子やスイーツをつくれるかを対決しようとしているのだ。
七海ちゃんに美味しくないものは出せない。
そのため、まずは審査をしようということで、審査員は僕、涼太、番人、ゲイーズ青戸、ガチロリコン板橋、爺さん目白、T高田で、それぞれ1票を持ち、よかった方に投票するのだ。得票数が多かった方が勝ちとなる。
「お前らはどうせ料理なんてできないだろう?」
「はわわわわ! たしかにそうですが、はっきり言われると傷つきますぅ」
「そ、そう言うあなたもできないでしょう!?」
亀有さんにからかわれた真希とくるみ会長はそれぞれにそう言う。
亀有さんは少し顔を赤くして、
「ま、まぁそうだが、チーズケーキなら作れるかもしれない。前に1度だけお母様に教えてもらったことがあるんだ。うろ覚えではあるが作れると思うんだ」
亀有さんは過去を懐かしむように言った。
「じゃあそれですね」
「やるならとことんやりますわよッ!」
真希とくるみ会長はそれに賛成した。
どうやらこっちはチーズケーキを作ることで意見が固まったみたいだね。
こっちはどうだろう。
「実は先生はね、すっごく料理が上手なのよ? えっ? なんでかって? そりゃあ〜」
椿先生は言葉を継ぐ。
「独神だからだよォォォオオオオオ! このクソガキがッ! 貴様ら、まだ若くてピチピチだからって、呑気に学院生活エンジョイしいやがってッ!」
会場にいた全ての、亀有さんチームも審判団も全員がブラック椿に注目した。
「アンコラ! ザルで頭にかちわるぞッ!? って、離せこのゲイ野郎!」
ゲイーズ青戸は暴走した椿先生を止めに入った。
てかザルで頭割れねぇから!
結局、亀有さんチームはチーズケーキ、椿先生チームはプリンを作ることになった。
このクッキングバトルの評価には創作性も問われ、創作的な方が評価が高くなる。
「クリームチーズ、バニラビーンズ」
「砂糖、生クリーム」
「薄力粉、卵をフードプロセッサーに入れるっと」
亀有さん、真希、くるみ会長は一気にフードプロセッサーに入れていき、攪拌する。
「あとこれも入れましょう」
真希は笑顔でそう言って何かをフードプロセッサーに投入した。
「これはなんだ?」
亀有さんは尋ねる。
「カエルです!」
「おお、それはいいな! 食感がいいアクセントになるぞっ!」
「いいねぇ! いいセンスだねぇ!」
っておい! 亀有さんもくるみ会長も何言っとんねん!
てか真希、そのカエルはどっから持ってきた!?
くるみ会長は続いて、
「ならこのダイアモンドとパールも! あとプラチナも入れよう!」
そう言ってくるみ会長はブレスレットやネックレスについたダイアモンド、パール、プラチナを投入。ついでに指にはめた金銀の指輪も入れている。
「いいぞいいぞ! 自然の味なのに高級感が溢れる最高のチーズケーキになるぞ!」
てか富豪スギィ! どんだけ金持ちなんだよ! 高校生が貴金属とか宝石のアクセラリー? 住んでいる世界が違うね。
――ガチャガチャガチャガチャ
「卵にお砂糖に牛乳を入れてかき混ぜましょう!」
向こうはガチャガチャ、こちらはカチャカチャ椿先生が材料を混ぜていく。
「先生、カップ持ってきたよ」
「テーブルに置いといて」
椿先生にそう言われた希望はお盆に乗っけたカップをテーブルに置く。
「よーし入れるわよー。みーちゃん! おさえて!」
「はいです!」
美咲委員長が梯子をおさえ、その上に椿先生が乗る。
「もこ兄流! 天空注ぎ・《エターナルスカイ》!」
そう言って椿先生はめちゃめちゃ上からプリンの液体をカップに注いでいく。
「高い位置からなら何でも美味しい理論ですね! 先生!」
下から椿先生を見つめながら美咲委員長はニコニコ笑って言った。
高い位置からなら何でも美味しい理論はあのクラピカ理論にも並ぶ2大理論である。
ZIPの最後で料理を披露するもこ兄が提唱したものであり、それはとても汎用性の高い理論である。
だけど椿先生! すっごく零れてますよ!
「先生、これも入れてください」
希望が椿先生にそう言って手渡したのはオレンジジュースだ。
「いいわねぇ。きっと蜜柑の風味が効いて美味しくなる!」
椿先生は希望からオレンジジュースをもらってカップに注ぐ。
「先生、これもよろしいですか?」
美咲委員長はコーヒーを渡す。
「これできっといいコクがでるわねぇ!」
椿先生はコーヒーも注いでいく。
だからめっちゃ零れとるって!
高い位置からなら何でも美味しい理論とはいっても、流石のもこ兄もビックリだよ。
しばらくして両チームがチーズケーキとプリンを完成させた。
「ではまずチーズケーキの方を……」
審判長である涼太がそう言うと、全員がチーズケーキをフォークで小さく切って口に運ぶ。
――ジャリジャリジャリジャリ。ガチガチガチガチ
攪拌されたり、されていない貴金属達や宝石が口の中で踊っている。呑み込んだらやばいよ。
しかもその中にカエルのムニャムニャした感触もある。
でもチーズケーキの部分はイケてる感じだ。
続いてはプリンをいただくことに。
こっちは危険性こそないが、味は激マズ。てか固まってないし、もはや飲み物だし。
「じゃあランチーチームかよかったら赤を、椿先生チームがよかったら白を挙げてくれ」
結果は涼太、ゲイーズ青戸、T高田が赤。番人、ガチロリコン板橋、爺さん目白が白だ。
結果は僕にかかっている。
どっちももはやチーズケーキやプリンではなかったし、はっきり言えばどっちも嫌だった。
でも、
「僕はどっちとか選べない。だってどっちも心を込めて作ってくれたのは同じでしょ?」
僕の発言に全員が驚愕していた。
「たしかにそうだな」
「どっちも心はこもっていたと思う」
「手料理を作ってくれるだけで感謝だわぁあ!」
「将来はきっといいお嫁さんにななるだろうなぁ」
「デュフ! どっちもロリのあじがじがじでおいじがっだ!」
「先生の言う通りです!」
涼太、番人、ゲイーズ青戸、爺さん目白、ガチロリコン板橋、T高田はそろって僕に同意した。
「桜田ッ!」
「樹君、そのぉ、ありがとです!」
「まあ、このわたくしが作ったのですから当然ですわね」
「キ君はやっぱり優しいねぇ」
「樹、イケメン」
「樹さん、今の様な発言は風紀を乱すので控えてください……」
亀有さん、真希、くるみ会長、椿先生、希望、美咲委員長はそれぞれそう言った。