頼むから興味をなくしてください。
「えっと・・・・」
どうしよう、どうすればここから逃げられる?彼の興味の対象から外してもらえる?
普段まったく使わない頭をフル回転させて考えるけど、どうしても浮かんでこない。くっそ動けこのぽんこつ脳みそ!
ぐるぐる思考を巡らせていると、一つの妙案が浮かんだ。そうだ、普通に考えて、彼は自分に逆らう主人公を気に入ったはず。つまり、逆らわずにほめたたえてしまえばいいのでは。
「あ、あまりにも美しい方だなと思って、見とれてしまったのです・・。」
どうだ、敬語まで駆使して誉めてやったぞ。興味をなくして立ち去ってくれ。
「ふん、俺の魅力に気が付くとは。気に入った。」
気に入らないで放っておいてってば!!!
「お前、名前は。」
「に、虹咲 雛です・・・・。」
「ヒナか。支援科だな。」
「ハイ。」
「次に会ったらその時は、俺の補佐役に任命してやる。光栄に思えよ。」
光栄でもなんでもなくただただ迷惑だよこんちくしょー!
ひきつった笑みを浮かべていると、突然彼が握るのと反対側の腕を引っ張られた。その先にいたのは、我が愛しの幼馴染杏くんである。助けてくれるのか・・・・さっきは裏切り者とかいってごめんな・・・・。
「なんだお前は。」
「雛は俺のマネージャーになる予定だ。アンタには渡せない。」
「それはコイツが決めることだろう。俺の下にいたほうが、もっと上の景色を見せてやれる。」
「そんなことわからないだろ!」
一般的な乙女ゲームユーザーならあこがれたであろうこの展開でも、私の背筋は凍っていた。
ただでさえ周りに人だかりができているのだ。このままこの話をここで進めていたら、どこでどういったうわさになるかわからない。杏くんトップアイドル計画にスキャンダルはご法度。脳裏に浮かぶ、ヒロインとのスキャンダルで落ち込む杏君の顔を振り払う。安心して?絶対そんな顔をさせずにトップアイドルにしてあげるからね。
私は彼の腕を引いた。
「そ、それでは赤原様、また入学式の後に~!!!」
杏くんの腕を固く握りしめ、ダッシュできた道を駆け戻った。よーし、絶対入学式の後も赤原茜からは逃げ切ってやるからな。
そう決めて、私は行く当てもなく走り続けた。その後の彼の台詞なんて、聞く耳を持たず。
「支援科、虹咲雛・・・何があろうと俺の下においてやるからな。」