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2次元じゃなきゃ許されねぇからな!  作者: 一色音斗
Prolog
6/13

ゆびきりげんまん。

お読みいただきありがとうございます。

やっと個人的に考えていたプロローグ、前日譚終了です。

今後もどんどん更新したいと思っているので、お楽しみいただければ幸いです。

そうして、あっという間に小学校生活は終わりを告げることになる。なんせ、ゲームの舞台は高校だ。いくら小学校生活が目まぐるしく変化する忙しいものであろうと、そこまでの記述は必要ないだろう。 



***


「え、雛、引っ越しするの。」


それは卒業式を間近に控えたある昼下がりのことだった。いつもより早めに宿題を終え、杏と共に録画したミュージックスペースという音楽番組を見ていた時。画面の中では、トップアイドルの赤原楓という青年が歌って踊っている。


「お父さんの仕事の都合でね。」

「なんで早くいってくれなかったんだよ。」

「だって言ったら杏泣いちゃうでしょう。」

「泣かねえよばか!」


 すでに目には涙がたまっているのに。やだ、うちの幼馴染、かわいすぎ・・・?


「大丈夫だよ、きっとすぐ帰ってくるって。」

「・・・・・。」

「杏。」


 ゲームの中で語られていたのは、「ヒロインが中学に入学する際に、遠くに引っ越してしまう。そして奇跡的に、入学時に再会する」という必要最低限の情報だけだ。その時の会話なんてわかりはしない。


「・・・・・・約束したのに。」

「え。」

「俺の、一番最初の、一番近くにいるファンになるって言ったのに。」


 うるうると目を潤わせて私を見つめられる。罪悪感で胸が張り裂けそうだ。しかし、小学生にこの引っ越しについてできることなんて皆無だった。無力。


「じゃ、じゃぁ、もう一つ約束しよ。」

「・・・・・なに。」

「私、きっと杏のところに戻ってくるから。杏がすごいアイドルになれるように、そのお手伝いができるように、頑張って勉強してくるから。」


 杏の表情は変わらない。曇ったまま、ただ私の言葉を待っていた。


「だから、私が戻ってきたら、そしたら、私が杏をトップアイドルにしてあげる!」

「・・・・なにそれ。」

 

 ちょっと驚いたように杏は笑う。良かった、やっと笑ってくれた。


「なにってなによ。」

「俺、別に雛がいなくてもアイドルになるよ。」

「えー、じゃぁ、競争!私が返ってくるのが早いか、それとも、杏がアイドルになるのが早いか!」

「・・・・ぜえったいまけないからな。」

「こっちこそ。」

「負けないけど、」


 小さい声で、彼はつぶやく


「早く帰ってきてね。」


 それはもうマッハで帰ってきますとも。



「ゆーびきりげんまん、うーそついたらはりせんぼん、のーます!」



 杏のかわいらしい声が響く。多分私は、この指切りを戻ってくるまで、いや、一生忘れないだろう。



***



 そして、しばらくの月日がたった。


 春だ。美しい桜の花が、私の周りを舞っている。鼻歌交じりに校門を潜り抜けると、そこはかつての私が幾度となく画面の向こうに見た世界。恋焦がれて、決して手にできなかった、ヴァーチャル世界。



 さて、私の物語はここから始まる。「虹咲雛」による、私のアイドル育成計画。



 私の、長い長い挑戦が、始まった。


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