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第二十九話「吸血鬼の城」後編

 ダンジョンマスター就任記念のパーティーで出会った東条に連れて来られた吸血鬼風のお城……。そこで何故かヴァンパイアキング、要するに自分の魔物のメイドをしていたこの女性がエノルル地方のダンジョンマスター全てをまとめるリーダーだった。


「マスター相川、あなたの事は歓迎しますが聞きたい事が1つあります」


 ダンジョンコアと違い何の可愛さも感じない無表情、むしろ恐怖を感じる……。だがここでびびったら相手の思う壺だ。別に全然怖くないですけど? と相手の目を……見据える事が出来なかったのでちょっとだけ目を逸す。


「……聞きたい事って何でしょうか」


 ナノは、直ぐには聞かずじっと俺の顔を見ている。リースから貰ったダンジョンの事だろうか、それともリースにされたマーキングの事だろうか。でも歓迎すると言っていたから殺される事はないだろうし……。泣きながら事情を話せばきっとわかってくれるだろう……多分。しかし、ナノの質問は俺の予想外の内容だった。


「マスター相川は……クイーンヴァンパイアを連れていますね」


「……はい? あぁ、連れて来ていますね」


「うむ、クイーンヴァンパイアのシロじゃ!」


「ちなみに私は暗黒鳥の……」


「あぁ、あなたはどうでも良いです」


 ガーン……と効果音が出てそうな、悲しい顔をするグレーの頭をそっと撫でてあげた、そんなグレーの気持ちを他所にナノは質問を続ける。


「マスター相川は、ヴァンパイア種が好きですか?」


「え? う、うーん、そう言われてもヴァンパイア種はうちのダンジョンには一人しかいないからなぁ……」


 これは一体何の質問なのだろうか、ヴァンパイアが好きですか? なんて生涯で1回されるかどうかの質問をされて戸惑う俺であった。もういい加減早く帰りたくなってきた。


「では、そこにいるクイーンヴァンパイアは好きですか?」


「……え?」


「……む?」


 矛先が飛んで来てキョトンとしているシロの顔を見ると目が合った。まぁ……でも、シロの事が嫌いな訳ないしここは素直に答えておくか。とりあえず吸血鬼が好きである事を伝えておけば満足するだろう。


「まぁ……好きかな」


「……む、むむむ」


 何故か顔を赤らめてもじもじし始めるシロ。しかし、質問は更に続けられた。


「では、そのクイーンヴァンパイアと結婚したいですか?」


「……はい?」


 思わず聞き返してしまったが……シロと結婚したいかどうか? 結婚なんてまったく考えた事もなかった。まず、女の子と付き合った事すら無いしそもそも魔物とダンジョンマスターって結婚出来るのか……? 何か婚約システムとかがあるって聞いた事があるような無いような……。俺がさすがに結婚までは考えて無いと返事しようとした時であった。


『ここは、とりあえず結婚したいです。と答えておきなさい』


 脳内に突然声が聞こえてきた。思わず誰だ、お前と聞き返しそうになったが……この声は、露出狂女リモである事に気づいた。こいつテレパシー的な魔法が使えるのか、やはり魔道士としてのレベルは高そうだ……変態だけど。


『この人は、ヴァンパイア好きしか心を開かない変わった人よ。あなたは、この人の前にヴァンパイア種を連れてきた。第一関門突破ね』


 お前もかなり変わった奴だよ……。というかこいつに心開かれていい事ってあるの? むしろ波風立たせないで帰りたいのだが……。


『あなたは、訳ありであのダンジョンを手に入れたのでしょう? 今後トラブルに巻き込まれるのは必定。ここでこの人と強い繋がりを作っておくのは大事じゃない?』


 俺がリースと一悶着あった事を察しているようだ。まぁ……確かにリースに目を付けられている以上、ナノと仲良くしておくのは今後ダンジョンマスターとしてやっていくなら大事かもしれない。でも、何故さっき会ったばかりの俺に助言してくれるんだ……?


『あなたの事は、雇い主の東条から色々聞いてるわ。あなたが死んだからこの子が悲しむから仕方なく……ね』


 東条と知り合っていて良かった……。やっぱりパーティーとかはちゃんと出席するのが大事だな~。よし、リモからアドバイスを貰った事だしここはしっかりと答えてやるか。


「マスター相川、どうしました? ずっと黙ったままですが」


「いや、なんでもないです。勿論結婚したいくらい好きです!!」


「「……!?」」


 ポカーンと口を開けるシロとグレー……。二人共許してくれ、これもダンジョンマスターとして今後もやっていくためだ。後でちゃんと説明するからな……。


「そうですか! それほど好きですか!」


 突然能面のような無表情がなくなり、満面の笑みを浮かべるナノ。声にも感情が戻ったのでホッと一息つく。


「も、勿論です!」


「ここにもヴァンパイア好きが居たのですね。私も凄い大好きなんですよ」


「同士ですね、同士! 仲良くしましょう!!」


 あなたがヴァンパイア好きなのは、ダンジョンの見た目だけで何となくわかってました。でも、とりあえず今は話を合わせておこう……。


「私もこの人と結婚しようと頑張ってるの、互いに頑張りましょうね!」


 そう言って椅子に座っているヴァンパイアキングに抱きつくナノ。当のヴァンパイアキングは……。


「……全ては朱に帰るであろう」


 …………まぁ、いいか幸せそうだし。しかし、こんな変人な上に私的感情で動く奴がリーダーを勤めていて大丈夫なのだろうか。ダンジョンマスターも人手不足なのだろうか。


「ところで、ナノさん。この相川が新しく入ったダンジョンなのですけど……例のリースが抑えていたダンジョンなのですよ」


 その言葉を聞いた瞬間にまた能面のような無表情に戻るナノ……。折角感情を戻したのに!! ナノは、口元に手を当てて考える素振りを見せる。


「ふむ……リースが手放した? いや、無条件で手放すほど甘い女ではないですからね。何か狙いがあるはず」


「相川はリースとは繋がってないみたいですけど、リースに襲われそうですよね」


 本当は、繋がっていると言ってもおかしくない関わりをしてしまったが……。本当の事言う訳にもいかないし。


「……俺は一体どうしたら良いですか?」


「とりあえず、マスター相川はそのままダンジョン経営を続けてください。襲撃があったら手の空いた所から援軍を回しますので」


 拒む事も出来ずとりあえず頷いておく。まぁ……でもリースがくれたダンジョンだし、襲われる事はないんじゃないか? それより俺の身体に付いたマーキングをどうしよう。それとなく伝えて解除してもらうかな……。


「ところで……ナノさん。俺の身体どこか変じゃないですか?」


「……? いえ、普通の顔だと思いますよ。かっこいいとは思いませんが」


 いや、顔が不細工かどうか聞いた訳ではないのだが……。何とか遠回しに伝えられないだろうか。


「……何かこう、ほら犬がおしっこ何回も掛ける行為ってあるじゃないですか」


「あぁ、ありますね。それがどうかしましたか?」


「そう! それされた場合ってどうしたらいいですか!」


「…………洗った方が良いと思います」


 軽く引かれたように言われてしまった。何か勘違いされて伝わってしまったような……。


「うわ、おしっこ掛かったままなの……汚いわねぇ、早く洗い流しなさいよ」


「ちがーう!! それは、ただの例であって……」


「ちょっと、近寄らないで! おしっこが移るじゃない!」


「移るかー!!」


 俺とリモが軽く追いかけっこをしていると、ナノが思い出したかのように突然感情を取り戻した。


「あ、もうこんな時間! 申し訳ありません、当主様の食事をお作りしないといけないので今日の面談はこの辺でお引き取りください」


 ニッコリと微笑むナノ。当主様って……。しっかり従者キャラを演じているナノに軽く引きながらこのダンジョンを後にする。

 リース、リモ、ナノの3人はエノルル3大やばい女として俺の記憶に刻まれた日であった。


 その後来た道を戻り移動呪文を駆使し要塞ダンジョンまで戻ってきた俺達であった。


「じゃあ……今日はありがとうな。東条」


「相川さん、何か困った事があったら言ってくださいね!」


「ありがとう、何も無い事が1番だけどな……」


「じゃあね。ちゃんと風呂に入りなさいよ」


「だから違うって言ってんだろ!!」


 最後まで俺がおしっこを掛けられたと信じてやまなかったリモも東条と合わせて帰っていった。残りの帰路を歩いて帰る俺達3人……だがやけに静かだった。


「二人共、わざわざ付いてきてくれてありがとな」


「……え? あぁ、当然ですよ! マスター様を守るのが役目ですからね。ねぇシロ?」


「…………ぬ? 何か言ったかえ?」


 心ここにあらずと言った感じで空をぼーっと見上げていたシロ。先程の俺が発言した言葉で気分を害してしまったのかもしれない……。改めて謝罪をしておこうとシロの前に立つ。


「シロ、さっきの事だけど」


「…………あー! そろそろご飯の時間じゃな! 妾、お腹が凄い空いたぞ! 待ちきれないから先に戻っておくとするかの!」


「あ、おい! シロ!」


 逃げるようにダッシュでダンジョンがある方向に駆け出していくシロ……。そして取り残された俺とグレーであった。


「……シロ一体どうしたんだろ」


「……ま、まぁ。ダンジョンが出来て魔力供給が出来るから早く帰りたかったのでしょう」


 なるほど、そういえば久しぶりにダンジョンから魔力供給が出来るのか。これでクロが一歩も動けなくなるような事態も無くなるな。


「ところでマスター様……先程の発言ですか、本心なのですか?」


「え? あぁ、シロと結婚したいって話? さすがに結婚までは考えてないかな。脳内でリモがそう言えって言ったから言っただけだよ」


「……なんだ、そうだったのですね」


 はぁ……と一息付いて。安心したような表情を見せるグレー。そういえば、グレーは俺の事が好きだったな。先程の発言の真意が気になっていたのだろう。

……まぁ、好きと言えば全員好意的な意味で好きだけど、結婚とか考えた事もないからな。


「しかし、その事をシロに伝えるのは少し可哀想ですね……」


 ……むしろ、好きでもない相手に結婚感情があると言われる方が重い気がするから早く伝えてあげた方がいいと思うのだが。そこら辺は、男と女で考え方が違うのだろうか。


「……でも、もしも話が広まったらダンジョンコアが怖いですね」


 ……何故そこでダンジョンコアが出てくるのだろうか。まったく話に関係ないと思うのだが。もしかして、規定でマスターは魔物に求愛してはいけないとかあるのかもしれない。規定により罰せられるのか!? ど、どうしょう……。


「……グレー、何とかしてくれない?」


「わ、私ですか!? ……うーん、頑張ってシロに伝えてみます。けどマスター、あまり不用意な発言は控えた方が良いですよ」


 少し厳しい口調で叱られたので反省する。そういえば、グレー以外のメンバーは俺の事をどう思っているのだろう。今度機会があれば聞いてみたいな……怖いけど。


 ダンジョンマスターですが、エノルル地方の女性は大体変人。


現在前半部分の修正作業をしております。

投稿が遅くなり申し訳ありません。

なるべく早く投稿できるように頑張ります。

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