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第二十八話「露出狂女にご用心」

 どうも、立派な要塞型のダンジョンを手に入れたダンジョンマスターです。

 ダンジョン内を見て回っている内に何やら外で女性2人の話し声が聞こえたので、近寄ってみたのだが……。


「む? どうしたのじゃマスター。じーっと見つめておるがあの女達に興味があるのかえ?」


「マ、マスター様、あんな女がタイプなんですか!?」


 俺が黒髪の子を思い出そうと記憶を必死に漁っていると、何やら勘違いされてしまったので慌てて否定する。しかし、絶対どこかで会った事があるのだが思い出せない……。


「ふむ、マスターは無駄に女と交流が多いからのう……」


「そ、そんなに多いのですか……知りませんでした」


 ジト目で睨んでくるグレーの視線を躱す……。シロは、話している二人を凝視して何やら考える素振りを見せている。


「む……? 確かに見た事あるような、ないような……」


「え、シロも見た事ある?」


「うーむ……確かあるようなないような……」


 要領を得ない回答を出して首を捻って記憶を辿ろうとしているシロであったが……。


「わからぬ。まぁ覚えてないという事は、大した女でもないのじゃろ」


 両手を上げて思い出すのを放棄したシロ……。諦めるのが早くないか? 俺が少し呆れていると、話していた二人の内、青髪の女の子が俺達の方に顔を向けた。


「……ん? 誰かいる」


「え?」


 眠そうな顔のまま、ゆっくりとこちらに近づいてくる。驚くのはその服装だ、黒髪の女の子に隠れて見えなかったが透明なドレスを着ている……。上下青の下着がしっかりと透けていて、服の役割を完全に放棄している。


「なんじゃ。あの女、痴女ではないか!?」


「へ、変態が近づいてきてるわ!!」


 シロもグレーも完全にドン引きしている。俺の前で下着姿になれるシロでも、さすがに外で下着丸出しで歩くのは痴女に該当するらしい。俺は俺でどう反応していいのかわからず、軽いパニック状態になっている。人間って本当に驚いた時は、反応できなくなるんだなぁ……。


「……そこの3人、一体何をしているの?」


 あまりに攻めの姿勢なため、反応が完全に遅れてしまった俺達。今から逃げ出すのも怪しさ全開な上に、今日からここが俺の住む場所なのだから逃げる事は許されない。


「……散歩?」


「何故疑問形なの? ますます怪しいわ」


 上手い言い訳が思いつかなかったため適当に発言したら更に怪しまれてしまった。


「妾達が怪しいじゃと!? どう考えてもお主の方が変質者じゃろうが!」


「そうよ! あんたの服装見れば一目瞭然よ、ただの露出狂じゃない!」


 的確な口撃を行うシロとグレー、いいぞもっと言ってやれ! 俺はなるべく目を合わせないようにしてるから! ガン見してると怒られそうだし!


「はぁ、なるほど。あなた達私のこの姿……ただの趣味でやっていると思ってるわけね」


「え……違うの?」


 露出が激しい女の子に向き直る、眠そうな顔は相変わらずだが腕を組んで少し自信気な姿を見せている。


「私は魔道士をやっているのだけれど、魔力消費が激しいからこの服を着て魔力を常に回復しているの」

 

 なるほど、そういう事情があったのか。良かった、ただの露出狂じゃなくて……でももうちょっと何かやり方があったのじゃないかと思うが……。


「なんじゃ、マジックアイテムの一種かえ……」


「良かった、露出狂じゃなかったのね……」


 シロとグレーの二人も安心したようで、肩の力を抜いていた。しかし、目の前にいる青髪の女の子はキョトンとした表情をしていた。


「マジックアイテム? この服は、別に変わった効果はないわよ?」


 その発言を受けて今度は、こちらがキョトンとする番だった。シロとグレーはポカーンと口を開けていたが思い出したかのように口を動かし始める。


「いやお主……魔力消費が激しいからその服を着ていると言ったではないか」


「えぇ、そうよ。魔力回復するために着ているわ」


「じゃあ、その服に魔力回復効果があるんじゃないの?」


 その言葉を聞いて何かを理解したのか、あーと言いながら頷き始める青髪少女。


「別にそんな効果はないわよ。ただ私の場合、感情の高ぶりによって魔力が大きく回復する体質だから着てるだけね」


 なるほど、体質を利用するためにスケスケの服を選んだ訳か……ん? 感情の高ぶり?


「と……言うことは、その服を着ると感情が高ぶるって事?」


「えぇ、そうよ……だって下着姿を晒して見られてると思うと興奮するじゃない!」


「「「変態だー!!!」」」


 やはり、変態だった。なんという事だ、新しい住処の近くに変態が出現してしまった。シロとグレーは後ずさりをして関わるのを拒んでいるし、さてどうしたものか……。


「あのー……」


 俺達3人が変態にドン引きしていた間に、黒髪の女の子が近づいてきた。近くで顔を見るが……うーむ、絶対どこかで会った事あるような……。俺が再び記憶を取り戻そうと努力しようとしたがそれより先に相手の女の子が驚いたような表情を作った。


「え……? 相川さん!? なんでこんなところに?」


 突然名前を呼ばれてびっくりする俺であった。やっぱりどこかで会った事があるようだ……。


「私です、東条光です。パーティーでお話させて頂いた……」


「……あぁー!! 東条か!!」


 魔王軍幹部が開いたパーティーで立派な寝具を貰ったんだよな。そこで東条とダンジョンの事を少し話したはずだ。


「まさか東条とこんなところで再開するなんてな……」


「本当ですよ……。なんでこんな辺鄙な場所にいるのですか?」


 さて、どうしたものか。目の前の要塞にダンジョンを作りましたと言ってもいいのだろうか……。知り合いに出会うのは、完全に想定外だがどうしよう、シロはグレーに東条が誰か説明しているようだが心底興味がなさそうな顔をしている。


「まぁ、色々事情があって……ところで東条、この青髪の子は誰?」


「あぁ……この子は、ダンジョン専門の傭兵です」


「どうも、リモです」


 相も変わらず眠そうな顔をしている露出狂……。ダンジョン専門の傭兵? そんな職業があるのか? 東条が俺の顔を見て疑問を察したのかダンジョン専門の傭兵について詳細を教えてくれる。


「普通の傭兵は、ダンジョンを攻略したり魔物から対象を護衛したりダンジョンマスターと敵対関係な人が多いですが。ダンジョンマスターに協力的な傭兵もいます」


「なるほど……でもなんでわざわざダンジョンマスターに協力してるの?」


「え? そんなのお金が稼げるからに決まってるわ」


 当然でしょ? みたいな顔をするリモ……。そんなにお金が稼げるのだろうか、俺が今まで貧乏生活をしてきたからあまり実感がないのだが……。


「報酬でGを貰うより、DPをGに変換して貰った方が割がいいじゃない。一つのダンジョン攻略して1000とか2000しか貰えないなら弱い冒険者10人、20人殺した方が楽だしね」


 なるほど、滅茶苦茶道徳に反してるとは思うが……お金だけ稼ごうと思ったらマスター側に付いた方が楽かもしれない。


「へー……じゃあ、マスター側に付く傭兵って結構いるの? 人気ありそうだけど」


「いや、殆どいないわね。リスクが高すぎるし」


「リスク?」


「えぇ、まず冒険者ギルドに所属出来ないし。そのせいで普通の冒険者が受けられるサービスも殆ど受けられないわ。よほど、実力に自信がないと無理ね」


 ハイリスクハイリターンという訳か、という事はこの目の前にいる露出狂……滅茶苦茶強いのか……。人は見かけによらないって本当なんだな。


「ところであなた、ダンジョンマスターなんでしょ。この近くにダンジョンでもあるの?」


「え、そうなんですか!?」


 鋭い質問をぶつけてくるリモに何故か凄い驚いている東条。しかし、ダンジョンマスターだと知られている以上。冒険者ですなどという言い訳も通じないしどう説明しようかな……。


「まぁ、マスター。知り合いなら事情を説明しても良いのではないか?」


「そうですね。ようやくダンジョンマスターと接触出来た事ですし……」


 シロとグレーの言うことは最もだ。俺だって出来れば事情を全部説明したいが、リースにされたマーキングの効果がよくわからないので非常に怖い。会話内容まで全部聞かれるのだろうか……? しかし、このまま何もしなくてもリースの気分次第で処刑されてしまう。なんとか脅されている事は、避けて重要な情報だけは東条に伝えてしまおう。


「……あー、実は色々あって元居たダンジョンを放棄してダンジョン探しの旅をしていたんだよ」


「そうだったんですか!? 大変だったんですね……」


「ぷっ、じゃあ。ずっとダンジョンが無かったんだ。ダンジョンがないダンジョンマスターとか初めて聞いたよ」


 鼻で笑ってくるリモ……。正直最初からダンジョンなんて無かったのだが、それは別に言う必要もないので言わないでおく。


「ははーん、それでエノルルに来たわけね。廃棄されたダンジョンも多いし、何より人手不足だから歓迎されるしね」


 俺の狙いを簡単に看破された、さすが魔道士を名乗っているだけあって頭は良いらしい。変態だけど……。


「それで、ダンジョンは見つかったんですか?」


「あぁ、この目の前にある要塞をダンジョンにすることにしたよ」


 とりあえず、俺がいる場所を教えておけばいざという時に助けて貰いやすくなるだろうと思って特に気にもせずに伝えたのだが……。東条とリモは驚いた表情をみせる。東条だけがすぐにキラキラとした目を俺に向けてきた。


「あ、相川さん。本当にこのダンジョンを手に入れたのですか!?」


「え……? あぁ、うん。そうだけど」


「凄いです! さすが相川さんです! 私達同期の希望の星ですね!」


 目をキラキラさせてよくわからない事を言う東条……俺が首を傾げていると疑わしい目で俺を見てくるリモ。


「……あなた、本当にこのダンジョンのマスターになったの?」


「そうだけど……なんで?」


「このダンジョンをずっと守り続けていたリースっていう女冒険者がいたはずだけど、どうやって倒したの?」


 あいつ、このダンジョン守ってたのかよ……。もしかしてギルドから離れている間ずっと……? という事は、やっぱりここ重要な場所なのじゃないだろうか。


「あー……あぁ、あいつね。俺達全員で相手したら逃げていったよ。あいつそんなに強いやつだったの?」


「……さ、さすが相川さんです!! エノルル最強クラスの冒険者を退けるなんて!」


「こ、こいつらがあのリースを……?」


 信じられないという表情を見せるリモと完全に信じ切ってしまっている東条。リースってそんなに強いんだ……。もうエノルル地方から出て行きたくなってきたぞ。


「あぁ、でも戦う前にどこか行っちゃったから……俺達の実力って訳でもないかも……」


 さすがに実力で倒したとかいう噂が流れてしまったら静かに隠居生活が出来なくなってしまう。俺は争いとは無縁に静かな暮らしがしたいんだよ!


「へー……運が良かったわね。でも、このダンジョンのマスターになったのは最悪ね」


 俺はまだ知らなかった、このダンジョンのせいでこれからとんでもない出来事に巻き込まれていく事を……。


 ダンジョンマスターですが、露出狂には気をつけましょう。


本日21時投稿予定でしたが事情により27日の21時に投稿とさせてください。

申し訳ありません。

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