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第二十六話「ダンジョンマスター復活?」

 どうも…………ダンジョンマスター辞めたいです。目の前にいるニコニコ顔な金髪少女は、俺の目を真っ直ぐ見つめ続けている。対象に俺の表情は恐らく引き攣っているだろう。先程少女が発した声が脳内に響き渡る。


『あなたダンジョンマスターでしょ?』


 何故バレた? シロ達の変装が見破られたからか? 擬人化の術は呪文で看破されない限り大丈夫だったはずだが……。それとも俺のダンジョンマスターとしてのオーラーがすごすぎたか? 

…………ふざけている場合じゃないな。しかし、こんな可愛い少女があんな人を殺せそうな声を発したのだろうか? ただ単に俺の幻聴だったのではないだろうか。きっとそうだ、こんな子がそんな事出来るわけがない、とりあえず目の前の子に笑顔を返してみる。


「おい、無視してんじゃねぇぞ」


 凄いドスの効いた声で怒られた……。目の瞳孔ガン開きで怖い、泣きそう。

いや、待てよ。本当にバレたとは限らないな、抗争の真っ最中だしスパイ警戒のために怪しそうな奴にカマをかけているだけかもしれない。下手にダンジョンマスターですと言ってしまったら何をされるかわかったものではない。


「いや……違うけど? 俺達は気ままな旅をしている旅人だよ」


 とりあえず否定しておく、そもそも俺ダンジョンないし……ダンジョンマスターではないと言っても過言ではない。俺が否定した事に不服なのかわからないが金髪少女は顔をどんどん俺の方に近づけてくる。無言の圧を感じるが俺は負けるわけにはいかない、少女の目を見つめ返す…………あれ、顔の距離近すぎない?


「……ん」


「…………は?」


 少女の顔がそのまま近づいてきたかと思えば口元に柔らかい感触、目の前の少女は不敵に笑っている……これはまさか。


「な、な、な、マスター様になんてことを!?」


「ふ、ふ、ふ、不純です!」


 グレーとクロが顔を真っ赤にして怒りと戸惑いが混ざった表情をしている。どうやら俺はキスされたようだ、何だろうあまりにも突然の出来事だったためどう反応していいのかわからない、しかも周囲が慌てふためいているため逆に冷静でいられるのかもしれない。


「……やれやれ、元気じゃのう」


「いちゃつくなら外でやれ!」


「初対面なのに……手が早いねぇ」


 呆れた様子のシロ、少し頬を赤くして怒っているブラン……そしてエミはどこか楽しそうに笑っている。楽しんでないでフォローの言葉を出して欲しい……何も言ってこないダンジョンコアの方に目を向けてみる。


「…………」


 無言の圧力……いつもより視線がきつい気がする。でも今の事は仕方ないと思う俺にはどうしようもなかった……はずだ。1回のキスだけで俺のパーティーをここまで混乱に陥れるとは、さすが団長……というのは置いといて何故キスしたのかを聞くために金髪少女に向き直る。


「なんでいきなりキスなんてしてくるの? そんなにしたかった?」


「……ぁ? 人を欲求不満みたいに言うんじゃねぇよ、お前にマーキングしといたんだよ」


 マーキング……何それ犬みたい、俺がよくわからず首を傾げているのを見て楽しそうな表情の金髪少女、そのまま俺に小さな声で話しかける。


「言うなら呪いみたいなもんだ、これでお前がどこに居るか何をしているかが大体わかるようになったんだよ」


「え、何それプライバシーの侵害だぞ! 今すぐ辞めろ!」


「うるせぇ、誰に口聞いてんだ。安心しろ、永久に効果が続く物でもないしな」


「……えぇ、じゃあ何で俺に呪い付けたの?」


「ふん、お前が優秀なダンジョンマスターなら向こうから接触してくるだろうからな。その時はお前共々殲滅してやるよ」


 ……つまり俺は毒付きの餌って事? まるでゴキブリ退治の商品みたいだな、でも間違いなく他のマスターが俺に接触してくる事はないだろう、自分で言うのも何だが優秀云々の前にまず自前のダンジョンがないのだから……。


「……ダンジョンマスターじゃないけど、もし他のマスターが接触してこなかったら?」


「その時は、どうでもいい。私の気分しだいかな」


 ニッコリと微笑むが目は笑っていない金髪少女、これつまり気分次第じゃ殺されるって事だよね……。この呪いの効果っていつまで続くんだろう、エミかダンジョンコアに聞いてみるしかないよな……。


「あ、この事は私とお前だけの秘密だからな。もし喋ったりしたら……」


「………したら?」


「…………」


 無言で首切りサインを見せる金髪少女……こ、殺される。俺が怯えていると受付のお姉さん事チーが俺達の傍まで駆け寄ってくる。


「団長! 何いきなり発情してるんですか!」


「ごめんごめん~、一人旅してると暇でさー。ところでこの人達とどこで会ったの?」


「もー……この人達は、私がリザードマンの群れに襲われているところを助けてくれた恩人ですよ」


「へー……」


 その言葉を聞いて意外そうな顔をして俺の方を見る金髪少女。まぁ、まさかダンジョンマスターが同業者の魔物を殲滅するなんて思わないよなぁ……。何か考えているような素振りを見せているし、このまま冒険者として認識してくれないかな?


「……随分と仲良さそうですね、マスター様」


「会って間もないのにもう内緒話ですか……」


 俺がほっとしたのも束の間、グレーとクロの視線が痛い事に気がつく。そんなに仲良さそうに見える!? 脅されてただけなんだけど!!


「ところでリース、長い間ギルドを空けたと思ったら急に戻ってきて一体どうしたんだ?」


 リードという名のコートを着た男が金髪少女に質問をした、リースという名前なのか……何だか似てる名前だな、もしかしたら兄妹か姉弟だったりして。


「あぁ、兄さん。その事なんだけどね」


 本当に兄妹だったー!! 妹はヤクザだし兄の方はちょっと厨二入ってそうだし、どうなってんだよこの兄妹!


「遂に見つけたのよ、ダンジョンマスター共の集会場所。これで連中に決定的な一撃を与える事が出来るわ」


「ふっ……さすが俺の妹だ、これでこの地方に平和が戻ってくるな」


「さすがー! 団長、かっこいいー!」


「パチパチパチ~」


「では、今日はお祝いという事で豪勢な料理を作っちゃいましょー!」


 喜ぶ影のギルドのメンバー達……そして盛り上がってるのはいいけど、流れに付いていけない俺達との温度差を感じる。メンバー達から少し離れて、皆と作戦会議という名の内緒話を始める。


「マスター、どうするのじゃ? さすがにこのまま協力し続けるのは、立場的にもまずくはないかのう」


「そうだよねぇ……ダンジョンコアは、どう思う?」


「…………ダンジョンコアは、マスターに従います」


 どこか不機嫌そうに見えるダンジョンコア……先程の事だろうか……。理由を説明したいが説明したら俺の首が地面に落ちてしまいそうなので、話すのはここから離れてからになるだろう。


「他の皆はどう思う……?」


「マスター様に任せますよ! 私は別に他のダンジョンマスターの事とか知らないし興味もないので!」


「うーん、ご飯が食べられれば何でもいいです」


 クロとグレーは、俺の判断次第らしい。らしいと言えばらしい回答だ。


「目的は、ダンジョンを持って隠居生活する事だろ。このまま協力しても当初の目的から離れていかないか?」


「そうだねー、魔王軍上層部の耳に入ったらどうなるかわかったものじゃないよ」


 否定的な意見を述べるブランとエミ。確かにリザードマンを殲滅した時点で結構やばい事をしている、少なくとも当初の目的はダンジョンを持つ事なのでこの連中に付いていっても目的達成にはならない。


 やはり、ここから離れないといけない。しかしマーキングされたせいで直ぐには、他のマスターに合流できないだろう。もう暫く放浪生活が続くのか……。


「ちょっと、あなた達。私に付いてきて~」


 俺が逃げようとしたのを見透かされたのか、金髪少女事リースが声を掛けてきた。俺達の返答を聞く前に広場から離れるように歩いて行くリース。いくか迷ったが……無断で逃げるのも怖いので、一応着いていく事にした。何かあったら皆と一緒に全力で逃げよう……。


 広場には複数の通路があり、俺達が着た通路とは逆方向の通路を進んでいくリース。何処に連れていくのか聞いても返事はしてくれない。迷路のようになっている無数の通路を20分ほど歩くと……階段を上がって地上に出る。


「……何処、ここ?」


 見た感じ屋内の倉庫みたいだ、清掃は一切されていないのか埃が凄く息をするのも厳しい。まさかここで俺達を処分する気じゃ……。


「…………ここは」


 ダンジョンコアがキョロキョロと当たりを見渡している、もしかしてこの場所に何か覚えがあるのだろうか。見た感じは倉庫にしか見えないのだが……。


「ここがどういう場所かわかるって事は、お前がダンジョンコアか」


 ダンジョンコアの反応を見て、断定してきたリース。しまった特定するためにここに呼んだのか……何とか誤魔化さないと。


「違います、ちょっとこの子は不思議ちゃんで霊とか見えちゃう子なんですよ」


 よし、完璧に誤魔化せたと思ったらダンジョンコアから軽い蹴りが飛んできた。痛い! 人が折角誤魔化そうとしてるのに!


「あー、そういうのもう良いからあんた達がダンジョンマスターとその魔物だって事は会った時点でわかってるから」


「ふむ、妾達の術を見破るとはかなりレベルの高い冒険者なようじゃの」


「誤魔化しても無駄そうですね、被害が出ないように私達をわざわざ遠ざけたという事ですか」


「ふん、人間如きが粋がるんじゃないわよ!」


 勝手に術を解いて戦闘体勢に入る3人、やっぱりこういう展開になってしまうのか……。リースはゆっくりと両手の平を俺達に向けた、何か呪文でも撃ってくるのかと身構えた。


「まぁ、待てよ。お前達の事今まで見た事なかったし他地方から来た奴らだろ。 見た感じ魔物共の魔力供給も完全じゃなさそうだし……訳ありでダンジョンが無いとかだろ?」


 見ただけでそこまでわかるのか……。しかし、どうやらここで始末してやるとかいう展開ではなさそうだ。とりあえずリースの話だけでも聞いておこう。


「そうだな、そこのダンジョンコア。ここは一体どこかわかるか?」


「ここは、ダンジョンですね。ダンジョンコアが確認されないので破壊、もしくは廃棄された物と思われます」


「そう、ここは小さな要塞の形をしたダンジョンだ。この部屋はダンジョン内にある倉庫だな」


 へー……ここダンジョンだったんだ。地上にある建物だとあまりダンジョン感ないなぁ、俺がずっと地下生活をしていたからだろうか。


「それで……この廃棄されたダンジョンがどうかしたの?」


 よくわからないので俺が質問をすると腕を組んでドヤ顔をするリース。そして予想外な言葉を発した。


「このダンジョン、お前達にやるよ」


「……は?」


 ダンジョンマスターですが、遂にダンジョンマスターに戻れるかもしれません。


毎週木曜日21時更新でしたが、金21時更新に変更させて頂きました。

今後共よろしくお願い致します。

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