表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/39

第二十四話「超高級ホテル」前編

 どうも、エノルル地方を目指して旅を続けていたダンジョンマスターです。遂にエノルル地方に足を踏み入れた。そんな俺達が最初に向かった場所は……。


「とりあえず、この宿泊券を使おう」


 祭りのくじ引きで手に入れた特賞、最高級ホテルの宿泊券。折角なので使わなくちゃ損だ。ダンジョン暮らしになったら使う機会も無くなりそうだし……。


「ところでマスター、その宿泊券は人数制限とか無いのですか?」


 ダンジョンコアの一言ですっかりシワシワになってしまったチケットの裏側を見てみる。裏側にはホテルの場所と人数規定が……。


「……1枚で2名様までだって」


「ここには7人おるが……どうするのじゃ? 人数オーバーしておるではないか」


 完全に失念していた、そうか我がメンバーもかなりの大所帯だった。割りと小さい面子が多いからそこまで感じていなかった。これ言ったら怒られそうなので言わないけど。


「あ、でもこれ10歳以下のお子様は2人で1名扱いにしても良いって書いてあるよ」


「本当だ、凄い小さく書いてある」


 ただでさえ小さめのチケットの右隅に小さい字で書かれていた。しかし、それよりも気になる事が出来た。


「……そういえば皆って年はいくつなの?」


「「「「「「…………」」」」」」


 一斉に黙り始めた!! 女性陣の視線が痛い!


「やれやれ……マスターは女心がわからぬのう」


「女性に年齢を聞くのは良くないですよ……」


「マスター様でもちょっと……年は……」


「普通あんなにストレートに聞くか……?」


「やれやれ、僕もびっくりして対応できなかったよ」


「……ダンジョンコアに年齢などありませんので」


 凄く微妙な空気が流れたので、とりあえず謝っておいた。しかし、この中で1番年上なのは実際誰になるのだろうか? 非常に気になるのでいつか聞いてみたいものだ。


「しかし、これでとりあえずエミとブランを子供にすれば収まりが良くなるのう」


「すると残りは3枠……マスターの分を入れると残り2枠で2人溢れますよ?」


 とりあえずブランとエミを子供枠で1つ使うのは確定のようだ。それに1枠使ったとしても全員入るのは厳しそうだが……。


「俺様が子供枠……」


「仕方ないよ、折角見た目は子供なんだし子供料金で入ろうよ」


 ブランは何故かガックリしていた、もしかして自分が子供だと思っていないのかもしれない……。どう見ても子供だけどなぁ。そしてシロ、クロ、グレーの3人は話し合いを続けている。


「……ここは3人の内誰かが変化の術を使って動物になるしかないのではないか?」


「ペット枠で入るという事ですね……でも私変化の術使うと竜になってしまいますよ……」


「えぇ……じゃあ、私とシロになっちゃうじゃない。ずるいわよ!」


「クロ、何とか変化を抑えてトカゲくらいにならないかのう?」


「いや、トカゲと竜だと全然違いますから! それにかなり巨大になってしまうので厳しいですよ……」


「むぅ、仕方ないのう……では、妾とグレーが変化するしかないようじゃな」


「……しょうがないわねぇ。この借りは必ず返しなさいよ!」


 どうやら話し合いは終わったようだ。クロが申し訳なさそうにしている中、シロとグレーは、顔を両手で覆いながら座り込む。すると二人の姿は、液状化し空中でそれぞれ小さく形を作っていく……。グレーは灰色のカラス、シロは白い蝙蝠に姿を変えた。


「おぉ、すげー」


「ふふふ、この姿を見せるのは初めてじゃな。これが変化の術じゃ」


「うぅ……この姿マスター様には見せたくなかったわ」


 凄い、蝙蝠やカラスの状態で喋れてる……。この芸だけでお金取れそうとか最低な事を考えるダンジョンマスターであった。


「じゃあ、とりあえず行こうか。ほらおいで二人共」


「うむ」


「マ、マスター様……すいません、肩をお借りします」


 右肩にシロを左肩にグレーを乗せて、ホテルを目指して歩く。傍から見たら肩に蝙蝠とカラスを乗せているやばい人である。現代なら写真撮影間違い無しの出で立ちだが、高級ホテルに入れるのか疑問でしかない。そのままホテルまで30分ほど歩いた……。


……


…………


………………


「……あれー、おかしいなぁ。チケットだとここ何だけどなぁ」


「私の見る限りホテルは見つかりませんね、半壊した建造物なら目の前にありますが」


 チケットの裏に描かれてある地図を頼りに歩いて来たが、目の前にあったのは高級ホテルとは程遠い建物であった。5階建てほどの石造りだったのだろうが、3階から上が崩れ落ちて周囲に瓦礫が散乱している。


「これは……どう見ても泊まれなさそうだね」


「……いや、まだ俺は諦めない。中に入ってみよう」


「往生際が悪いですね、マスター」


 折角ホテルに泊まれるチャンスなのに無駄にしてたまるか! でも見た限り灯りも無いし、人も居なさそうなので泊まれなさそうだなぁ……。


「あのー、泊まりに来たんですけどー」


 瓦礫を踏み越えて、半壊しているホテルの入口を進む。ホテル内部も隅の方に瓦礫が積まれているが歩けるスペースは確保されている。内部は床も天上も木で出来ていた、受付らしき場所にはロウソクが2つ置かれており仄かな灯りがあった。


「わーー!! お客様ですか!?」


 突然受付の下から飛び出して来たのは、薄いヒラヒラのドレスを着た金髪の女性だった。薄すぎて下着が軽く透けてしまっている。そしてこの女性の胸の大きさ……クロ並にデカイ。


「はい、お客様です!!」


「マスター、視線が下過ぎるので上にあげてください」


 いや、違うんだよ? 欲望に忠実になって胸を見たのではなくて目のやり場に困って偶然胸を見てしまっただけだからね? 当のお姉さんは、俺に胸を見られた事は特に気にせず目をキラキラさせている。


「ご宿泊ですよね! 何泊されますか! 部屋のグレードはどうしましょうか! あ、当ホテルの自慢はですね……」


 よほど俺達が宿泊に来た事が嬉しかったのか饒舌なお姉さん、とりあえず手に持っていたチケットを取り出して渡す。


「あー、観光招待券のお客様ですか。そう言えばこんなのありましたね……」


 露骨にテンションを落としたお姉さん、高級ホテルの接客にしてはかなり雑な気がするが……ぬか喜びさせた俺も悪いのだろうか。しかも特賞で当てたチケットこんなのとか言われちゃったよ、ひどくない?


「えーっと、見た感じ5人のようですが?」


「あー……この2人は10歳以下なんですよ」


 ブランとエミを指差す俺、ジーっとお姉さんが2人の顔を見ている。見た目は子供にしか見えないから大丈夫だと思うけど……もしかして疑われてるのだろうか。


「ちなみに2人は何歳ですかー?」


「えへへー、僕8さーい!」


 猫なで声で返答したエミ、思わず吹き出しそうになるがグッと堪える。クロも必死に笑いを堪えるために俯いている。


「そっちの子は、何歳?」


「ぇ、お……わ、私……も8歳」


 真っ赤になりながらとりあえず8歳児になったブランであった。俺の手にスマホがあったら間違いなく写真を撮っていたであろう。

 お姉さんも特に問題無いと思ったのか2人から視線を外した。


「じゃあ、4名様ですね……。部屋は2階の201と202にどうぞ」


 もう完全にやる気を無くしてしまっていたお姉さん、俺の肩に止まっている灰色のカラスと白い蝙蝠も一瞥したが微妙な顔をしただけだった。何か言って揉めるのも面倒臭いと思われたのだろうか……。


 お姉さんから鍵を2つ貰い、入口から真っ直ぐ進んだ場所にある階段を上がって部屋に向かう。ホテルの中はまったく人気ひとけが無く薄暗いためかなり不気味だ。とりあえず、階段を上がると目の間に廊下があるが201号室と202号室はすぐ傍にあった。

 そして疲れたし、とりあえず部屋に入ろうかと思ったところでふと気がついた。


「……あ、部屋割どうしよう」


 特に疑問も無く鍵を2つ受け取って来たが、恐らく寝具は1部屋に2つしか無いだろう。蝙蝠とカラスの姿になっているがさすがに寝る時は、人間の姿で寝させてあげたい。


「ふむ、とりあえずブランとエミで1台使うじゃろ? 残り3台にどう割り振るかじゃな」


「待ってください! 何でお……私がこいつと一緒に寝る事になっているのですか!?」


「仕方ないですよ、組み合わせ的に1番ピッタリですから」


「ぴったりだって、良かったね。今日は僕と一緒の寝具だよ?」


「いやだーーー!!」


 何やらブランが叫んでいるが……それを無視して他のメンバーは、寝具をどう振り分けるかの話し合いを続けている。


「マスターには1台空けるべきだと思うので残り2台ですね」


「別に私がマスター様と同衾どうきんしても良いのよ!」


「却下じゃ」


「却下です」


「羽を毟りますよ?」


「なんか怖い台詞が聞こえたー!! 誰よ、ボソッと怖い事言ったの!」


 俺の聞く限りダンジョンコアが呟いたと思うが……。俺としては正直誰と一緒に寝る事になっても構わないけどな。最初は寝にくかったけど一緒に生活してる期間が長くてもう大分慣れたはずだ。…………でも傍で寝ていただけで同じ寝具で寝た事は無いな、変に意識してしまうと寝れなくなってしまうかもしれない。


「では、組み合わせはグレーとクロ、妾とダンジョンコアで良いな?」


「異論ありません」


「仕方ないわね……」


「ダンジョンコアに寝具は必要ありませんが、まぁ問題無いですね」


 いつの間にか話し合いが終わり、寝具の割り振りは完了していた。そして201号室には俺とダンジョンコアとシロ、202号室にはクロとグレーとエミとブランという部屋割になった。

 とりあえず部屋を開けてみる。部屋は中々広い、外は崩壊していたが部屋の中は非常に綺麗だ。寝具の大きさも普段より1.5倍ほど大きい、これなら二人で寝ても困らないだろう。

 シルクのカーテンを開けて外を見てみると、少し離れた場所に海が見える。しかし、今は泳げる暑さなのに砂浜に人の姿は無い。やっぱり荒れてる影響だろうか……。


「ほう、結構寝具もフカフカではないか」


 シロは、人型に戻り白い寝具の上に飛び乗って跳ねている。触ってみると普段泊まっている宿屋にある堅い寝具と違いフカフカだった、今日はよく眠れそうだな……。


「ところで、ご飯の説明とか受けてないけどどうすれば良いんだろう」


「恐らく部屋まで持ってきてくれると思います、食事を取る場所が見当たらなかったので」


「じゃあ、暫く部屋でのんびりするか」


 そう思い寝具で横になった瞬間に扉が強めにノックされた。誰だろう、クロかグレーかな? と思い扉を開けた。


「お待たせしました! 料理をお持ちしましたよ!」


「早いな!? 部屋に着いてまだ10分くらいしか経ってないけど!?」


 大きい銀色のティーカートに料理を乗せて運んで来た受付のお姉さん。後ろでドタバタ鳴ってるのはシロが慌てて隠れているのだろう……。料理は、みずみずしいサラダや美しく光る黄色いスープ、香ばしい匂いを放つお肉のステーキなど確かに食欲をそそるが……それどころじゃない、シロを今見られたらまずい。


「……あー、お姉さん。このホテルの魅力とか教えて欲しいなーなんて」


「すいません、隣の部屋の料理が冷めちゃうので! また後で!」


 そう言ってお姉さんがティーカートを押し込んでくる、轢かれそうになったため慌てて押し返すが凄い力でズリズリ部屋に押し込まれていく。この人本当に人間か??


「おや……?」


 お姉さんが不思議そうな視線を送っていたので俺もその視線を追ってみた。先程シロが飛び跳ねていた寝具の上に白い蝙蝠が1羽、横になっていた。


「……あのー、何故蝙蝠を寝具で寝かせているのですか?」


「え? そりゃー……蝙蝠だって寝具で寝かせてあげないと可哀想じゃないですか?」


「そうですか……まぁ、お客様の夜の事情には口を挟みませんけどね」


 そう言って料理を机の上に並べて、お姉さんはそそくさと廊下に出ていった。


「……何であのお姉さん凄い微妙な顔してたの?」


「おぉ、トマトがあるぞ! 早く食べないと冷めてしまうぞ!」


「とりあえず、食べましょうかマスター」


「……まぁ、良いか」


 料理を食べたが今までの旅で1番美味しい味だった。さすが高級ホテルを名乗っているだけあるな、あのお姉さんが作ったのだろうか……。ご飯を食べ終え部屋で色々と話していたら気がつけば寝る時間になっていた。


「寝るかー、おやすみー」


「うむ、おやすみなのじゃ」


「とりあえず、明日起きたらどうするか朝に話し合いましょうね。マスター」


「はーい」


 二泊三日のチケットなので後1泊出来るが……。いい加減ダンジョンを手に入れないと、ダンジョンマスターとしての存在意義が無い気がしてきた。とりあえず、明日時間があったらお姉さんにでも聞いてみようかな。今日は、そこまで歩いて無かったが疲れが溜まっているのかすぐに意識が薄くなっていった。


……


…………


………………


『ギ……ィ……』


 何かが軋むような音でゆっくりと意識が戻ってきた。しかし、意識の半分はまだ夢の世界に置いてきてしまっている。残り半分で何の音か考える…………あぁ、床が軋んだ音だろうか、この床は割りとギシギシ歩くと音を出していたからな……。と一人で納得しているとゴソゴソと何か傍で音がする。


 ん? 何だ、この音。ゆっくりと目を開けてみると……。蒼色……の髪?


「…………」


「…………」


 何故か目の前にダンジョンコアが居た、目が合うと不味いと思い目を閉じてしまった。何でダンジョンコアが俺の寝具に……寝ぼけて入って来たのだろうか、そもそもダンジョンコアって寝ぼけるのだろうか? それとも俺が寝ぼけているだけなのだろうか。


 俺の胸部分にダンジョンコアが頭を置いてくる。夢なのか確かめるために抱きしめるように腕を回す、程よい暖かさが伝わり安心感からかゆっくりと眠りの世界にまた戻されようとしている。果たしてこれは、俺が寝ぼけていただけなのだろうか……。


「…………マスター」


 何か聞こえた気がしたが、その発言に俺が反応する事は無く夢の世界に帰っていった。


……


…………


………………


「ふぁ……ねみぃ」


 カーテンから溢れる朝日で自然と目を覚ます。ふと周りと見てみるが……俺の寝具には、誰も居ない。隣の寝具を見るとシロとダンジョンコアがまだ眠っていた。

 やはりあれは、夢だったのだろうか。ダンジョンコアの頭を軽く撫でると、昨日の夢で伝わった暖かさを再び感じる事が出来た……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ