第二話「10連ガチャに勝機を見い出せ!」★
どうもようやくダンジョンを手に入れたダンジョンマスターです。3マスしかないけど!
今俺はシロと一緒にとある場所に来ている……どこかと言うと……。
「では、そこの2人自己紹介をお願いします」
「はい!」
とりあえず指名が入ったので挙手し立ち上がる俺。
「相川瑠比! 職業は……シーフです!」
「おぉ、シーフですか。解錠とか頼りにしていますよ」
「ま……任せてください」
「では、隣の方」
「うむ! 妾の名はシロ、職業は魔法使いじゃ! よろしくたのむぞ!」
「可愛い魔法使いさんですね、よろしくお願いします」
そう、俺とシロはダンジョン攻略メンバーに加わったのだ。
事の発端はシロが街で出稼ぎした所でまともなダンジョンが出来るのに何年かかるかわかったものじゃないぞ! と怒り始めたからだ……。
そんな中、街で見つけたダンジョン攻略メンバー募集中という張り紙に飛びついた俺達である。
ダンジョンマスターが他のダンジョンを攻略するなど前代未聞らしいがダンジョンマスターなのにダンジョンがない事が既に前代未聞なのでしょうがない。俺だって早くまともなダンジョンが欲しいので他のマスターには犠牲になってもらう。
全員の自己紹介が終わったので酒場を出発し目的地であるダンジョンを目指して進む。あ、ちなみにシロだが擬人化の魔法を使っている。羽が隠れた以外に変化した部分がわからないが……。
今回の目的はダンジョンの奥にいるボスモンスターを討伐し宝を入手する事だ。報酬として一人あたり1500G。俺とシロで合わせて3000G。なんと30マスも掘り進む事が出来るのである!!
攻略人数は俺とシロを入れて6人であり。他の4人は戦士2、僧侶1、格闘家1という構成だ。正直、俺鍵なんて開けた事ないけど……最悪シロに泣きついて物理的に開けて貰おうと思う。
街から少し歩いた山の中に目的のダンジョンはあった。俺のダンジョンとは違いちゃんと入り口に扉もある……妬ましい!! こちとら扉もないむき出しだぞ!!
あまりの格差に憤りを覚えたが先頭の戦士2人が入っていくのを見て慌てて付いていく。
少なくとも俺のダンジョンのように3マスで終わっているなんて事は当然なく、中は幾つも道が別れておりどこに行っていいのかわからない構造になっている。というかこれが普通なのだろう。
「道が3つに分かれていますね……」
今回応募をかけた戦士の1人が困った顔をしている。いいなぁ、俺も冒険者を悩ませたいなぁ……。と羨んでいる所、僧侶が提案する。
「2人組を3つ作ってそれぞれ進んでいきますか?」
なるほど、こうやって分割させて各個撃破する方法か……。他人のダンジョンから冒険者を以下に撃退するかの方法を真剣に学んでいる俺であったが……。
「その必要はないぞ」
「魔法使いさん? 何かいい案があるのですか?」
自信満々な表情を浮かべているシロ……一体何をするつもりだろう。
「妾の魔法に”ライフソナー”という呪文がある。本来は、冒険者の位置を把握する呪文じゃが術式を変えればモンスターにも適応出来る。これでボスのいる位置を探れるぞ」
おぉーーすげーーと歓声があがる。なんというバランスブレイカー……ここのダンジョンマスターは泣いていいと思う。本当にごめんね。でもDP欲しいから仕方ないんだ。
「ところで何で冒険者の位置を把握する呪文を覚えているのですか?」
「さ、さーて。ボスのいる道は~こっちじゃな~」
的確な質問をしてきた僧侶の発言を無視してボスのいる道に進むシロであった……。
道中に出てくる岩や土などの見た目をしたモンスター達が出て来るが戦士や格闘家が倒していく。ふむふむ……山だからこういうモンスターで統一しているのかな?
色々と感心しながら進んでいくと広場に出た。大体縦2マス…横10マスくらいだな……20DPのボス部屋か……。職業病なのか知らないが他人のダンジョン構造を勝手にDP計算してしまう悲しいダンジョンマスターがここにいた。
『キュルキュルキュル』
気色の悪い奇声と共に現れたのはサソリ型のモンスターだ。サソリといってもかなり大きく尻尾から頭の部分までで4mはありそうだ。DPでいうと2も領域使うぞこいつ!!
「よし、いくぞー!!」
戦士や格闘家達が突撃していく。今までの道中からボスも対した事ないと思ったのだろうか、正直俺もすぐ終わると思っていました……。
「な、なんだこいつ……。強い」
「俺の拳が効かないだと!?」
どうやら物理ダメージに耐性があるようで脳筋3人組がまったく歯が立たないようである。
『なぎ払い』
突然かっこいいエフェクトがボスの頭上に浮かび上がったと共に脳筋3人組が尻尾のフルスイングを食らって壁にふっとばされていく。
「ま、まってください……い、今回復を……」
『叩きつける』
脳筋達に回復魔法を唱えようとしている僧侶に2つのハサミを叩きつけるサソリ。死んではいないが一撃で気絶してしまったようだ……。ちょっとボス強すぎない?? 俺もこのボス欲しい!!
「き、気をつけろ……そいつ……物理が効かないぞ」
うん、知ってる。見ればわかるような情報を伝えてくる格闘家。
「やれやれじゃのう……」
他のメンバーの体たらくに呆れて頭を掻いているシロの目の前にボスが迫ってきた。
「に、にげろー!」
格闘家が思わず叫んだ。サソリは尻尾を振りかぶりシロに……。
「きしょい」
『クリティカル』
シロの頭上に6文字が浮かび上がったと同時にサソリは壁に叩きつけられた。
衝撃で潰れ緑色の体液を床と壁に撒き散らし一撃で絶命した。技名とかも特にはない、ただのパンチ一発で絶命した。ボスを倒したからか壮大なBGMと共に赤い宝箱が出現した。その光景を見て呆然とする他のメンバーと……。
「うえぇ~、体液ついた~。手を洗いたいぞ……」
殴った時に緑色の液体が付着した手を汚そうに見つめるシロ……。
うーん、ごめんね。ここのダンジョンマスター。折角設置したボスを一撃で消し飛ばされたマスターの心境を思い懺悔する俺である……。
報酬である1500Gをそれぞれ貰い3000Gを獲得した俺達であった、他の皆に魔法使いじゃなかったの? と質問攻めをされた挙句に身体能力を魔法で強化して殴ったと誤魔化してさっさと切り上げてきたシロ。DPが手に入ったからか上機嫌である。
3マスしかない自分達のダンジョンに帰ってきた。先程のダンジョンを見ると確かにただの穴でしかないな……。
「おかえりなさい。マスター、クイーンヴァンパイア」
「うむ、くるしゅうないぞ」
「30DP稼いできたぞ!」
俺は特に何もしてないけど!!
「お疲れ様です。マスター」
「よし……早速10マスくらい広げるか!」
他人のダンジョンを見て色々と創作意欲が沸いた俺であった。
「マスターにお知らせする事があります」
「ん? お知らせ?」
「はい、魔王軍500周年記念で現在ダンジョンマスター限定の10連ガチャをやっていますね」
「え、何その素敵な響き。どんなのがあるの?」
「ガチャの中身ですがそうですね。レアな魔物。レアな装備やアイテム。魔法や薬に書物色々ありますよ。後ダンジョン拡張セット何かも入っています」
「その拡張セットってどれくらい拡張出来るの?」
「多い物だと500マスは拡張出来ます」
「引く!! 俺それ引く!!」
そんなお得なセット引くしかないじゃない!
「な、なぁ。ダンジョンコアよ。それは一回いくらするのじゃ?」
「一回30DPですね。クイーンヴァンパイア」
「なーーー! 今日の稼ぎ全部ではないかー!」
「まぁまぁ、10個は物が出て来るんだから引いてみようぜ」
「ガチャはガチャじゃ! どうせ碌な物出て来ぬのじゃから真面目にコツコツ進めた方が絶対によいぞ!」
何か嫌な予感でも感じ取っているのかガチャを拒むシロ。しかし……男にはロマンがある……俺は一山当てたい! いや、当てる!!
「シロ! お前を引き当てた俺の豪運を信じるんだ!」
「……妾にとっては最悪の運じゃがな」
もうどうにでもなれと思ったのかそれ以上何も言わなくなったシロ。ごめんな、今度トマトジュース買ってくるね。
「という事でダンジョンコア! この10連ガチャを引かせてくれ!」
「了解しました。では、DPを消費します」
シュンという聞いた事のある音と共に魔法陣が頭上に浮かび上がる……白い魔法陣だな。
「ジュースセットですね。10本入りです」
「よし……次!」
その後も魔法陣が次々浮かび上がってくるがどれも白ばかり。
・藁の寝具:DP1
・ロウソク:DP1
・ほうき:DP1
・ラム肉:DP1
・エール:DP1
・ロックピック:DP1
・ヒーリングポーション(効果小):DP3
・空箱:DP5
「……」
「見事にゴミばかり引き当てますね。マスター」
呆れたのかまたふて寝を始めるシロ……。
「あ、後一回あるから……」
「そうですね。マスター」
最後の魔法陣が浮かび上がる……どこかで見た事のある色……。
「マ……マスター」
「こ、これは!?」
そう……金色の魔法陣が再び浮かび上がった。そこからゆっくりと降臨したのは……。
「ダークドラゴンナイト召喚に応じました。お会い出来て光栄です。マスター」
微笑む美少女。肩上ほどの黒髪、紫色の目、頭には2本の角が生えている……ドラゴン族とかいうのだろう。身長は170cmほどだろうか。
全身を漆黒の鎧に身を包み腰にはこれまた漆黒の剣をぶら下げている。何より特筆したいのは……おっぱいがでかい、そう、おっぱいがでかいのである!! これだけで30DPを使ってよかったと思う!!
「ち、ちなみにダンジョンコア! この子はDP換算でどれくらいだ!」
「クイーンヴァンパイアと同じで50万DPであります。マスター」
「グェウエ!? ダークドラゴンナイト……!」
俺達が叫んでいたため寝るのをやめてこちらを向いたシロが驚愕している。
「おぉ、あなたはクイーンヴァンパイアですね。お会い出来て光栄です」
「う……うむ」
「共に冒険者を倒しましょう。よろしくお願いしますよ」
「そ、そうじゃな……」
にっこり微笑むダークドラゴンナイトとどこか罰が悪そうにしているシロ……。というかダークドラゴンナイトってやっぱり素だと長いな……。
「あ、ところで君も命名権は俺にあったりする?」
「はい、勿論です。マスターの仰せのままにお決めください」
「えっと……じゃあ、クロで」
「クロですね。猫のような名前ですが頂戴いたします」
何か俺のネーミングセンスがことごとく馬鹿にされている気がする。
「では、マスター。お手数ですがダンジョンへ案内をお願いします」
「……」
「……」
「……」
一斉に無言になる俺とダンジョンコアとシロ。
「……? どうかしましたか?」
「えっと……実はここが既にダンジョンだったりして」
「ふふふ、マスターは冗談が上手いですね。ここはただの穴ではありませんか」
全く冗談ではないのだが……人のダンジョンをただの穴呼ばわりされた! ひどい!
「残念ながら真実です。ダークドラゴンナイト」
「……ダンジョンコア?」
「このマスターは、手違いによりダンジョンがありません。一から作っている最中なのです」
「……しかし、クイーンヴァンパイアや私はどうやって召喚したのですか?」
「それは……俺が天より授かりし力で……」
「ただの運です」
「ただの運じゃ」
ひ、ひどい……。せめてかっこいい感じにしたかったのに!
「…………」
やばい所に来てしまったとそわそわし始めたクロ。
「そ、そうですか……。まぁ、住めば都といいますしね……。ところで私の個室はどこでしょうか?」
「個室なぞ存在せんぞ、妾もここで寝ておる」
「……」
目のハイライトが完全に消えたクロ……ごめんね!! そのうち個室あげるから!!
「と、とりあえず……これ使ってよ」
先程のガチャで出た藁の寝具をそっとクロに渡す。クロは目のハイライトを消したまま藁の寝具にゴロンと横になる。恐らくふて寝をしたのだろう……。
「また犠牲者を増やしてしまったのう」
横になりながらジト目で攻めるような視線を向けてくるシロ……。仕方ないじゃん!! 引きたかったんだもん!!
「とりあえず、マスター」
「……なに?」
「来週も稼いできてくださいね」
「…………はい」
ダンジョンマスターですがダンジョンが広がりません
長編物初ブックマークが嬉しかったので2話を投稿しちゃいます。
これからもよろしくお願いします。