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第二十二話「冬の宝具はこたつにみかん」

 どうも氷の神殿をダンジョンとして持つマスターの所で、少しトラブルを起こしたダンジョンマスターです。マスターのミツルがダンジョン内部を案内してくれるが……感想はただ1つ。


「滅茶苦茶広いな!!」


 ダンジョンマスター専用の通路があるらしいが、折角他のダンジョンに来たので丁重にお断りして冒険者と同じルートを案内して貰っているが……。


「まさか30分も歩き続けるとは思わなかったな……」


「俺も正規ルート歩いたのは久々だよ……足がいてぇ……」


 ダンジョン内部も雪と氷により形成されており、モンスターも氷で出来たスライムや見た目が白い動物系モンスターなど氷ステージらしいのしか居なかった。


 このダンジョンを作るのに一体DPをどれくらい使用するのか考えただけでも恐ろしい……。やっとの思いで最深部らしき場所にたどり着いた、帰りは絶対に専用通路で帰ろうと心に誓うのであった。


「ここが最深部か? 凄く広い空間だな」


 目測で……縦3DP、横は15DPほどだろうか……? 真ん中の天井部分には、氷で出来たシャンデリアが飾られており非常に豪華な作りとなっている。

 そして壁際には氷で出来た高さ2mくらいのゴーレムが20体は並べられている。しかし動く気配はないのでただのオブジェクトなのだろうか……。


「いや、ここはケーニヒの部屋だな。俺の部屋はもう1個奥」


「奥……? どう見ても行き止まりだけど?」


「隠し部屋になってるんだよ、ここがスイッチ」


 壁にいたゴーレムの内1体を4回ノックするミツル、するとゴゴゴゴという効果音と共に壁に現れる氷の扉。そういえばダンジョンマスターの部屋は、隠し部屋にするのが普通なんだっけ……。ダンジョンらしいギミックに感心している俺だったが、ミツルの後に続いて部屋に入っていく、そして部屋の中にある物に思わず感動してしまった。


「おぉ!! こたつだ!」


 目の前にあったのは、冬の定番アイテム……こたつとその上に乗ったみかん! まさか異世界でお目にかかれるとは思わなかった……。こたつはかなり大きく10人は軽く入れそうだ。


「良いだろ、かなりDP使ったんだぜ。寒いだろうし中に入ってくれよ」


「すげー! 冬と言えばこたつにみかんだよな~」


 早速こたつの中に入ってみる。冷えた身体がゆっくりと暖かさを取り戻していく、練炭を燃やしているようださすがに電気式は無理か、しかし温かい事に変わりはない。


「なんじゃそのよくわからぬ箱は……」


「マスター様、こたつとは一体どういう物ですか?」


「異世界の……冬に温まる道具かな? 皆も入ってみればいいよ」


「マスター、みかんを食べてもいいですか?」


「うん、それは俺じゃなくてミツルに聞いてね」


 各々、恐る恐るこたつの中に入っていく。そしてクロは無事にミツルから許可を貰ったのでみかんを食べ始める。


「おぉ、暖かいのう」


「あぁ~、癒されます……巣を思い出す暖かさですね……」


 こたつに入りぬくぬく感を手に入れた二人。特に寒がりな、グレーはこたつを完全に気に入ったみたいだ。


「あー、確かに暖かいな」


「そうだねー、冬と言えばこたつにみかんだよね」


「……なんでこんな時にまでくっついてくるんだ?」


 ブランとエミもこたつに入っている、距離感がかなり近いが特に問題はないだろう。


「……あれヴァイスは入らないの?」


 唯一ヴァイスだけがこたつの中に入らずに壁際で立っていた。俺が視線を向け声を掛けて見るが露骨に目を逸らされた。ひどくない?


「あぁ……ヴァイスはちょっとこたつが苦手なんだよ」


「溶けちゃいそうだしな、そりゃそうか……」


「こたつに最初入った時、気持ちよすぎてお漏らししちゃってから入らなくなりましたね~」


「ミーツ!!!」


「きゃー、マスター助けて~」


 突然の暴露話に鎌を取り出して叫び始めるヴァイスに、棒読みでミツルに助けを求めるミーツ……。


「うげぇ、漏らしたのかえ。汚いのう……」


「漏らしてない!!」


 顔を赤くして涙目なヴァイス、これ以上弄るのも可哀想な気がするので話を流れを変えようと思う。


「……ところで広いダンジョンだよな、何年前からダンジョンマスターやってるの?」


「そうだなぁ、10年くらいかなぁ?」


「10年!? お前年いくつだよ!」


「ダンジョンマスターは老けないからさ、実年齢で言うと30ちょいになるかな?」


 同年代かと思いきやまさかの年上だった。若干対応が大人だなと思ったけど、本当に大人だとは思わなかった……。

 しかし、これはある意味チャンスかもしれない。ベテランダンジョンマスターに色んな事を聞くいい機会だ。ダンジョン経営のノウハウとか色々聞いておこう。


……


…………


………………


 というわけでミツルから色々とダンジョンマスターのノウハウを聞いたが……正直参考になるか怪しい。勿論為にはなったが、そもそもミツルの場合は初期DPが50万あったらしいからもう論外である。ダンジョンマスターも格差社会なんだという事を改めて知っただけになった。


「ところでミーツってかなり感情豊かだよな、治療とかしてたし他にどんな機能追加してるんだ?」


「機能……?」


 不思議そうに首を傾げるミツル、あれおかしいな……俺何か変な事言ったかな? 助けを求めるようにダンジョンコアの顔を見る。


「私と彼女は、ダンジョンコアとしての種類が違います。彼女は、所謂オリジナルと呼ばれている個体です」


「オリジナル……?」


「そしてあなたのダンジョンコアは、ナンバーと呼ばれていますね~」


 オリジナル……? ナンバー? 話にまったく付いていけない、それはミツルも同じなのか二人で困惑している。


「オリジナルのダンジョンコアは、世界で500ほどしかいません。冒険者の増加による需要により量産されたのが私のようなナンバーを持ったダンジョンコアです」


「まぁ、でも特に私と彼女達に違いはありませんよ? ただナンバーはナンバー同士、通信で繋がりが強いくらいですかね。ただ派閥が違いますけどね!」


「派閥?」


「……それは機密情報ですよ」


「あ……うっかり口が滑ってしまいました」


 ミーツが口を滑らせた事で多少ダンジョンコアについてわかった気がする……。しかし、ダンジョンコアにも派閥があるのか……。だから相容れない存在とダンジョンコアが言っていたんだな。


「ところでさ、諸事情でダンジョンがないって聞いたけど……これからどうするんだ?」


「あぁ、エノルル地方を目指してるんだよ。後もう少しで着くよな?」


「え!? エノルル地方に行くのか……?」


 ドン引きした顔をするミツルとミーツ、そんなに危険な場所なのか……いや、危険なのは知ってるけどもしかしたら俺の想像以上にやばいのかもしれない。


「……そんなに危ないところ? エノルル地方って」


「そうだなぁ……毎日、人と魔物が死にまくっているところかなぁ」


「抗争が起きてるのは知ってるけど、他に行くところがないんだよな」


「なるほどなぁ、ミーツ土地半分貸してあげるとかは無理だよな……?」


「さすがに無理ですね~」


「気にしなくても大丈夫だよ、俺の仲間達は皆強いから何とかなるさ」


 さすがに知り合ったばかりの相手に頼るのは申し訳がない。それに別に俺達は抗争に参加するつもりはない、ただ土地だけ貰ってひっそりと暮らしていければいいだけだし……。


「そうか……気をつけていけよ、一応ここから半日くらい歩いた先に街があるけどそこから先には何もないからね」


「おう、ありがとう。じゃあ、そろそろ皆行くか」


「そうじゃな、ヴァイス。もう漏らすでないぞ」


「漏らしてない!!! 次会った時覚えてなさいよ!」


 シロとヴァイスも色んな意味で仲良くなったようで良かった……。そしてダンジョンマスター専用通路を使い氷の神殿を後にした俺達。

 ちなみにケーニヒさんは少し溶けていたのであった……。


 ダンジョンマスターですがエノルル地方までもう少しです。




気がついたら総合評価が450を超えていました……。

本当に皆様ありがとうございます。

今回の話は短めですがテンポよく投稿出来るように頑張ります。

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