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第十九話「墓場の中で肝試し?」

第二章遅くなり申し訳ありません。

なるべく早めに投稿していくので引き続き皆様よろしくお願い致します。

 どうもダンジョンの無いダンジョンマスターです。エノルル地方を目指して現在徒歩で移動中です。馬車で半月ほどかかる場所にあるらしいエノルル地方だが飛んだり移動系呪文を使わないのは何故かと言うと……。


「エノルル地方は警備が厳重なんだっけ」


「はい、そうです。抗争が起きてピリピリしているだけではなくあちらこちらに移動呪文妨害用のジャマーが設置されています。一部領域は飛行している対象を自動的に迎撃する術式が組み込まれた兵器を設置しているとの話です」


 というわけなので楽に移動出来るわけではないため歩いて移動している我々であった。まぁ、放浪旅が出来るのもダンジョンが無い今だけだし折角なので楽しもうと思う。


 平地から続く道に沿っていくと山の中に続いている、そのまま歩き続けていると日が暮れてくる。周囲に灯りがないためエミとシロがライトの呪文で周囲を照らしてくれる。


「ふーむ、このままいくと野宿になってしまうのう」


「ここまで来る間に村が無かったから仕方がないですね」


「皆、ごめんな」


 さすがに女の子達を野宿させるはめになったため申し訳なさを感じて謝る。


「マスター様、私は野宿でも平気ですよ!」


「鳥は木に止まれば寝れるからよいのう、ほれそこの木は枝が太くて良さげじゃぞ」


「蝙蝠だって木にぶら下がって寝れるらしいじゃない、そこの木で蚊でも食べてなさい」


「こらこら、喧嘩は良くないぞ」


 シロとグレーが煽り合いを始めたため止めに入る、ダンジョンが無くなった今魔力回復手段が食事でしか得られないため皆ストレスを感じてしまっているのかもしれない。

 持っていた所持金である程度の食料を持ってきているので平らな場所で火をつけて貰って食事にするか……。


「む……何やら食べ物の匂いがします」


「本当かクロ」


 クロの食べ物に関する嗅覚は凄いためどこかで料理でもしている場所があるのだろう。クロが匂いを辿るのに着いていく俺達、暫くすると奥に灯りが見えてくる。


「どうやら集落があるみたいだね」


「本当だな、篝火かがりびが見えるぞ」


「うむ、どうやら野宿はせずに済みそうじゃな」


「マスター、お腹が空きました……」


「よしよし、じゃあ宿屋がないか探してご飯を食べよう」


 クロの嗅覚のお陰で野宿は何とか免れそうだ。後は泊めてくれる場所があるかどうかだが……集落の中に入り人の姿を探す。すると馬小屋の近くで何やら作業をしていたおばあさんを見つけたので声を掛ける。


「あのー、すみません。旅の者なのですが宿屋みたいな場所ってありますか?」


「おぉ、もしかしてあなたは冒険者様だったりしますか……?」


「はい、そうです。冒険者様です」


 皆が責めるような視線を送ってくるのが振り向かなくてもわかる、仕方がないダンジョンマスターですなんて言えないし、冒険者と言った方が色々と優遇してくれそうだ。マスターのプライドとかよりも今は泊まる場所の方が大切なのだ。


「冒険者様……よろしければこの村をお救いください」


 平伏し始めるおばあさん、突然の出来事に驚くがとりあえず顔を上げて貰い事情を聞く。


「……悪霊が出る?」


「そうなのです……死人は出ておりませんが気分を悪くして倒れ込んでいる者もおりまして」


「なるほど……良ければ悪霊が出るところを教えてもらえますか? 後、寝床を用意してください」


 後ろでブランが小声でこいつ滅茶苦茶厚かましいな……って言ってるけど聞こえてるからな? 俺わりと耳良い方だからな? 侮るなよ。


「おぉ……早速退治してくださるのですか、悪霊はここから東に15分ほど歩いた場所にある墓地でよく目撃されています、時折村の中に来て徘徊して周るのです……」


「なるほど、ではさくっと討伐……? 除霊? してきますね。あ、寝床用意しといてください」


 あまりの厚顔無恥ぷりに一部呆れている者がいたが、今日寝る場所が地面になるか柔らかい寝具の上になるかの瀬戸際なので俺も必死になる。


「はい、空き家がありますので冒険者様が帰って来るまでに用意しておきます。なにとぞ……お願い致します」


 任せてくださいよと意気込みを伝えて、悪霊を退治しに墓場に向かう。


「ところでマスター、簡単に引き受けていましたが勝算はあるのですか?」


「大丈夫だよ、ダンジョンコア、俺の仲間達は全員強い……悪霊の1匹や2匹くらいなんとかなるんじゃない?」


 他人任せで申し訳ないが魔法を覚えたとは言え、何が出るかわからない上に3割失敗する使いづらい呪文なのであまりにも運要素が高すぎるから使いたくない。また味方に害を与えないとも限らないし……。


「悪霊のう……ただの雑魚であると良いが……」


「強力な悪霊の場合、光属性の呪文か神聖装備がないと少し面倒かもね」


「しかし、死者は出していないならそこまで凶悪な相手ではなさそうですね」


 シロ、エミ、ダンジョンコアの頭脳担当3人組が早くも歩きながら作戦会議を行っている。俺が勝手に知力数値を付けるなら100上限で70くらいありそうだ、この世界にステータス表があるのか知らないが……。


「ところで暗黒鳥は夜ですが目は大丈夫ですか?」


「ちゃんと見えてるわよ! ただ……ちょっと眠気がきてるけど」


「私もお腹が空いているのでお互い様ですね」


「何の関係もないわよね! というか私を暗黒鳥って種族名で呼ぶのをやめて、マスター様から頂いたグレーという素晴らしい名前で呼んで!」


「……そこまで素晴らしいでしょうか、あなたとは感性が異なるみたいですね」


 クロとグレーが何やら雑談をしている、俺の素晴らしいネーミングセンスをわかってくれるのはグレーだけか……というのは置いといて、俺を護衛してくれる頼もしい二人だ、悪霊の事とかよくわからないが二人なら何とか物理的に除霊してくれると信じている。


「……うーむ」


「どうしたブラン?」


 俺の傍で何やら微妙な顔をしているブラン、周囲を気にしているのかキョロキョロしている。……あぁ、なるほど、わかったぞ。俺はブランの耳元で囁いた。


「……トイレに行きたいのか?」


「変態かお前は!!」


 何故か怒られた、納得いかないのだが……。


「じゃあ、なんでそんなに周囲を見てるの?」


「……誰にも言うなよ?」


「え、なに?」


 ブランが俺の耳元で囁く……ふむ、何々?


「おばけが怖い?」


「声がでかーい!」


 俺が思わずそこそこの声量で発言するとブランがそれを上回る声で叫び皆が振り返ってくる。


「なんじゃ、突然叫び始めて……」


「ふむ、どうやらブランは幽霊が怖いみたいだよ」


「しっかり聞いてるんだな……」


「まぁ、耳は良い方だからね」


 どうやらエミも俺と同じで耳が良いらしい、内緒話をする時はエミがいない場所でしようと思う。


「ほー、犬はおばけが怖いのじゃな。妾がお手を繋いでおいてやろう」


「だ……大丈夫です!」


「なーに、遠慮することはないもしもの時は妾が守ってやるから安心せい」


 シロが問答無用で手を繋ぐ、ブランは恥ずかしいのかもじもじしている。


「大丈夫ですよ、幽霊も頑張れば物理的に切断できますから!」


「まぁ、ダークナイトドラゴンもいるから平気でしょ。心配しなくてもいいわよ」


「むぅ、自分の事は種族名で呼ぶなと言っていたのに私の事は名前で呼んでくれないのですね」


「え……あぁ、悪かったわね……クロ」


「はい、それで良いのです。暗黒鳥」


「あんた絶対いつか泣かす!」


 クロとグレーもブランを励ましてくれている、ある意味この2人は仲良しなのかもしれない。


「……お前、許さないからな」


「睨まないで、怖い」


 ブランが顔を赤くし涙目で俺の事を睨んでくる、目線を逸していると先頭を歩いているシロに引きずられる形でどんどん前に進んでいく。


「マスターも中々えげつない事をしますね」


「いや、ダンジョンコアわざとじゃないんだ。俺は悪くない」


「犯罪者は大体そういう発言をします。ですがダンジョンマスターは多少性格が悪い方が務まるかもしれませんね」


 気がつくと俺の傍を歩いているダンジョンコア、どこか機嫌が良さそうに見えるのは何故だろうか……。


 歩き続けていると目的地である墓場にたどり着いた。平らな土地に風化した墓石が不規則に並べられている、そこまで広くないのは集落自体が小さいからだろうか。

 とりあえず墓場全体を見渡すが特に異常はない、俺に霊感がないせいだろうか?


「何かいる? 俺何も見えないんだけど……」


「特に強い魔力とかも感じぬのう。クロとグレーはどうじゃ?」


「私も感じませんね」


「私も……本当にいるのか怪しいわね」


 首を傾げる3人、少なくとも凄く強い敵がいるわけではなさそうで安心した。


「よし、帰ろう! きっとあのお婆さんの見間違いのはずだ!」


「まぁまぁ、村の人が倒れたりしているって事は何かしら原因があるわけだしとりあえず調査してみよう」


 帰りたそうにするブランをしっかりとシロとエミの2人が手を掴んで離さないよう

している。

 このまま帰ったところで宿を用意してもらえるのか怪しいし、用意して貰えたとしても詐欺のようで寝覚めが悪い。とりあえず墓場の中を歩き回り何か異常がないか手分けして探す事にした。


 しかし、10分ほど墓場の中や周辺を歩き回るが襲われたりする事もない……。本当に悪霊などいるのだろうか。


「……うーん、もしかしたら村の中を徘徊してるのかな。戻ってみる?」


「そうですね、ところでマスター。1つ良いですか?」


「どうしたのダンジョンコア、何か見つけた?」


「はい、マスターの肩に何やら手のような物が乗っていますよ」


「またまたー、そんなご冗談をダンジョンコアさん~。肝試しの定番台詞すぎて怖くないよ」


 ダンジョンコアの方を見て笑う。ダンジョンコアは無表情で俺の顔ではなく肩の方を見つめ続けている。え、怖いんですけど……。


「……うん? ぎゃああああ!? おばけーーー!!」


「こ、こら、抱きつくな。動けんじゃろうが!」


「大丈夫ブラン? 僕が傍にいるから平気だよ」


「違う意味で怖いわーーー!!」


 突然ブランが俺の方を見たかと思うと近くにいたシロに抱きつき始めた。え、何その反応? 肩見るの凄く怖いんだけど……。


「……あのー、クロさんグレーさん? 僕の肩に何か止まっているか見てくれませんか?」


「どうしたのですかマスター様、そんな他人行儀な……て、えぇ!? 何か肩に付いてますよ!」


「あ、本当ですね。手が乗ってますよ」


「取って! 取ってー!!」


 なるべく首を動かさないようにしてクロとグレーの方に近づいていく。虫が付いた女の子みたいな反応で恥ずかしいが、人体の一部が身体に付着していたら殆どの人がパニックになるだろう。


「ふむ……む? 何か紐が付いていますが……」


「……紐?」


 クロが取ってくれたそれは確かに手の形状をしていた……しかし本物の手ではなくグニュグニュしたゼラチンのような物質で作られていた。それに透明な糸がくっついて暗闇に向かって伸びている。


「誰だ、こんなコンニャク吊るしたドッキリアイテムみたいなの使った奴!! クロさんグレーさん成敗してやってください!!」


「あくまで自分では行かないのですね、マスター」


「だって近づいて刺されたりしたら嫌だし……」


 こんな暗闇の中、墓場でドッキリアイテム使って脅かしてくる精神異常者だ。何をしてくるかわかったものじゃない。

 俺の一声でクロとグレーの2人が糸を辿って暗闇の中を走っていく。犯人を村の中で物理的に吊し上げてやるからな、覚悟しておけよ……。


 そんな小物臭い事を考えていると3分もしない内に2人が戻ってきた。2人が両手で何かを引きずっている……。


「マスター、犯人を捕まえてきましたよ」


 引きずられてきたのは半透明の小さい男の子だった、身長はブランより少し大きいくらいだろうか。クロとグレーに怯えているのか口をパクパクさせている。


「こ、ころされる……」


「いや……もうあんた死んでるじゃない……」


「……君は一体誰? とりあえず自己紹介してくれる?」


 状況がよく飲み込めないので本人に説明させる。どうやら実力がまったくない浮遊霊のようで色々各地を周っていた所、ここが1番皆驚いてくれたので定住していたらしい。人を驚かしている隙に魔力吸収を行っていたようで村の人が気分を悪くしていたのはそれだろう。


「なんでこんなドッキリアイテム使ったの? 普通に姿見せれば驚いてくれそうだけど」


「子供の姿のままだと……舐められて驚いてくれないから……」


「大変だな……でも、この場所からは出ていってくれるか? 村の人も迷惑してるからさ」


「う……でも、移動して魔力吸収出来なかったら僕消滅しちゃう」


 泣きそうな顔をする少年、さすがにこのまま出て行けと突き放すのは可哀想な気がする。しかし、かといってダンジョンがない俺が引き取るわけにもいかないし……困ったな。


「ダンジョンコア、なんとかならない……?」


「……仕方ありませんね、地図を渡しますからここに向かってください。このマスターなら引き取ってくれると思いますよ」


 ダンジョンコアから地図を笑顔で受け取る少年、ダンジョン内にさえ入れば消滅する事は無いから安心だろう。この場所にはもう近づかない事を条件に離れていく少年を見届ける。


「これにて一件落着か……精神的に疲れたな」


「集落に戻って報告しましょうか」


「ようやく、ご飯が食べられるのですね!」


「あんた……クロはそればっかりね」


「ご飯を食べられなかったら死んでしまいますからね」


「大袈裟ねぇ……」


 ウキウキで戻っていくクロとグレー、俺とダンジョンコアも二人に続いて行く。ふと後ろを見てみると……。


「……いい加減離してくれぬか?」


「すいません、村に着くまではこのままで……」


「ふふふ、楽しいね~肝試しって」


 シロ、ブラン、エミの3人が楽しそうに歩いていた……楽しそうなのでそのまま放置しておいた。


……


…………


………………


「お婆さん、悪霊は退治したよ」


「おぉ、本当ですか。冒険者様、ありがとうございます……」


「はい、ところで寝床はどこですか?」


「1番広い家を用意させていただきました……どうぞ、こちらに」


 お婆さんが案内してくれた家は2階建てでそこそこの広さを持っていた。とりあえず屋根と壁と柔らかい寝具があれば何も文句はない。


「気分を悪くしていた者達が皆、元気になり始めたのでもしや……と思いましたが迅速な対応ありがとうございます」


 少年が魔力を多少返したのだろうか、何はともあれ解決してよかった。お婆さんが山菜やお肉料理を提供してくれたのでそれを食す俺達。へー、ゼンマイとかも普通に存在するんだなぁ、と感心しながら食べる。


 プチ英雄扱いされているようで大量の料理が運ばれてくるが殆どを食べ尽くすクロ。ダンジョンを出てからクロの食欲が増している気がするが……食費が持つか不安だ。


 ダンジョンマスターですが幽霊退治もお手の物です。

諸事情により本日(6/15)投稿予定ですが

明日(6/16)とさせてください、大変申し訳ありません。

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