第一話「とりあえずガチャを引こう」★
どうも、ダンジョンのないダンジョンマスターです。さすがにダンジョンがないとDPを稼ぐ事すらも出来ないため今街で出稼ぎをしています……。
普通ならモンスターやギミックを設置して冒険者を撃退したりしてDPを稼ぐらしい。でも、俺にはダンジョンがないもん!!
一週間住み込みで働き、厨房で皿洗いや掃除などの雑用をする事で得たお金……500G。宿屋代金が10Gでランチが2~5Gくらいと考えるとそこそこの額なのだがDPでいうと5でしかない。
賃金を握りしめてダンジョンに帰還した俺であった。
「ただいま、ダンジョンコア」
さすがに下着姿の子を街で連れ回すわけにもいかず、目印を付けた所に宝石を埋めておいた。
「マスターおかえりなさい、どれくらい稼いできましたか」
「……500Gです」
「5DPですね」
「これで掘れても5マスか」
「直下で掘ると10mほどですね。マスター」
「落ちたら十分冒険者倒せそうだけどダメ?」
最早倒せれば何でもいい気がしてきたぞ。
「残念ながら冒険者達も馬鹿ではないので宝などを設置してあげて、その情報を公表しないと来てくれません」
「なんて欲にまみれた連中だ……許せない!!」
「冒険者をDPとしか見ていないマスターに言われたくないと思ってますよ。きっと」
「しかし5マスか……どうしよう」
「横に掘りますか? 縦に掘りますか?」
何かダンジョンというより用水路作ってるようにしか思えなくなってきた
「……ちなみにさ、DPって他に使いみちないの?」
「他にもたくさんありますよ、マスター」
そう言ってダンジョンコアは、メニューよろしくDPで買えるリストを取り出して見せてきた。
・スライム:DP1
・ゴブリン:DP2
・大芋虫:DP2
・吹き矢 (トラップ):DP3
「……うーん」
DPが低い奴は、あまりぱっとしないのしかない。当然といえば当然か……。しかし高い物は高い物で……。
・カオスドラゴン:DP150万
・デスシザー(トラップ):DP160万
・サタンサーヴァント:DP180万
・ルシファー:DP300万
とても手が出る物ではなかった。というかこれ買える奴いるの??
「はぁ……」
俺がセレブにしか買えない物を見て意気消沈している所、リストに気になる物を発見する。
「ダンジョンコア、リストにある初心者ダンジョンマスター限定DPガチャとは何だ!」
「あぁ、それですか。それはダンジョンマスターになって1ヶ月以内のマスターだけが1度だけ引く事の出来るガチャですよ」
「これDP1で引けるじゃん! 俺これ引く! これがいい!」
「わかりました、マスター。ただし、それはあくまでもガチャなので期待しないでくださいね」
「それでも1マス掘ったりスライム出すよりマシな気がするから頼む!」
「はい、では。DPを消費します」
シュンと独特な効果音がどこからか聞こえたと共に目の前に金色の魔法陣が空中に出現する。
「おぉー、かっけー」
「こ……これは……マスター、あなたは運がいいかもしれませんね」
「え、まじで?」
魔法陣から何かが勢い良く飛び出してきた、同時に魔法陣は消滅して目の前に飛び出してきた者が立った。
「クイーンヴァンパイア、馳せ参じたぞ。お前がダンジョンマスターか」
腕を組んで不敵に笑っているのは、白髪で朱色の目を宝石のように光らせ紫色のローブを身に纏った吸血鬼だった。身長は140cmくらいしかないけど!
「ダンジョンコア、これもしかしてレア? 俺レア引いた?」
「確率で言うと0.0001%ですよ。マスター」
「マジで!? これDPで買うとどれくらい??」
「DP50万クラスですよ。マスター……これは凄いです」
「やったー!! 激レア引いたー!」
「妾を無視するなー!!」
俺とダンジョンコアが手を取り合って喜びをダンスで表現していた所、激レアモンスターが怒り始めた。
「ごめんごめん、あまりにも嬉しすぎてさ」
「ふふんー、そうかそうか。そういう事なら許してやろう。妾は寛大じゃからな」
ない胸を張り、俗に言うえっへんのポーズを取るクイーンヴァンパイア……名前長いな、ダンジョンコアよりも長い。
「ところで名前とかってあるのかな?」
「妾の名か? それは召喚したマスターに命名権があるぞ。好きに決めるがよい」
「えー……うーん、俺こういう名前付苦手なんだけど。じゃあシロって呼ぶね」
「なんだか、犬のような名付けセンスじゃのう。まぁ、よいか」
白髪だからシロって単純すぎたかな? 今後白髪モンスターが大量増殖したら……まぁ、そのとき考えるか。
「さて、ダンジョンマスターよ! お主の住処を妾に案内せよ」
「……」
「……」
沈黙してしまう俺とダンジョンコア。いつまで経っても案内しようとしない俺達に不信感を募らせるシロ。
「……どうした? 早く案内してくれぬか?」
「えっと……ダンジョンだけどまだ作ってる最中で」
「……なぬ?」
「クイーンヴァンパイア、実はこのマスターは手違いで自分のダンジョンを所持していません」
「でも、土地はあるもん! ここ俺の土地だもん!!」
「……お、お主等はどうやって妾を召喚したのじゃ! 50万DPもあればかなり巨大なダンジョンが作れたじゃろうが!」
「えっと……実はガチャで運よく出ただけだったり……」
実は偶然ガチャから出てきただけと知り不貞腐れ始めるシロ。うん、まぁ、俺もシロの立場なら不貞腐れてると思う。消滅覚悟でどこかに逃亡してないだけかなり優しいのかもしれない。
「……どうするのじゃ? さすがに妾は日光で消滅したりはせんが出来ればダンジョンの中で寝たいぞ」
「とりあえず、もう日が暮れます。残りのDPを使って何マスか掘りましょうマスター」
仕方がないので1マス下に掘った後に横に2マス掘ってみた。階段とか扉の設置もDPが必要なようなので土がむき出しである、もう子供が作った秘密基地のようになっている。
「妾は夜寝をする」
露骨にふて寝を始めるシロ……。寝具の類もないので土の上にそのまま寝ている、流石に不憫に思えてきた。
「ダンジョンコア……寝具とかってDPでいくらくらい?」
「安いのでDP1で出せますよ。藁で出来た寝具ですが」
「もうそれでいいからそれ1個出してあげて……」
「了解です。マスター、これでDPを使い切りましたね。来週もまた頑張って働いてください」
「はい……」
シロの横にそっと寝具を置いてあげる。露骨に嫌そうな顔をしたがないよりはマシと思ったのか寝返りをうって寝具の上で寝始めるシロ。
「でも……これで他のモンスターは設置しなくてもすみそう?」
「いえ、マスターそうでもないですよ」
「え、なんで?? もうシロだけで殆どの冒険者倒せるんじゃない?」
「確かにクイーンヴァンパイアならレベルの低い冒険者程度は一撃で倒せるでしょう。しかし対した宝もないのに一撃死するようなモンスターがいる所にマスターは行きたいですか?」
「……」
「それが答えです。あまりにもオーバーパワーすぎましたね」
「……俺はどうしたらいいの?」
「とりあえず、私から言える事は……働いてくださいマスター」
養う対象が増えただけのような気がする……、寝ているシロを見てそう思った。
ダンジョンマスターですが僕のダンジョンは3マスです。