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第八話「おっぱいお姉さん来訪」

 どうもついにダンジョン内部を完成させたダンジョンマスターです。地下2Fまでしかないけどな……。今日は魔王軍の幹部様が来る日だ、正直来なくていいんだが拒否権は俺にはない。


「むぅ……緊張するのう。クロ、妾の髪は撥ねておらぬか?」


「はい、大丈夫ですよ。折角なので櫛で梳かしましょうか」


「うむ、頼むぞ。終わったらクロのもやってやろう」


 背中を向けたシロの髪を手入れするクロ。我がダンジョンにいる女性陣は皆髪がサラサラしている。自分で言うのも何だがこんな環境に住んでいてどうやって髪質を維持しているのだろうか……。


「……おい」


「どうしたブラン?」


 黒白の方を見ていたブランが俺に近寄ってきた、一体なんだろう。


「俺様の髪を梳く権利を貴様にやろう!」


「えー……俺やり方わかんないんだけど」


 櫛を突き出して何故かドヤ顔のブラン。しかし俺は他人の髪を触った事なんてないしペットを飼った事がないのでブラッシングの経験すらない。ブランの表情が暗くなったけどどうしよう……。


「仕方ないのう、犬の髪は妾が梳いてやるからこっちにこい」


「本当ですか!」


「よかったですね。ブラン」


 飼い主? であるシロに声を掛けられて尻尾を振る犬の如く喜ぶブラン。


「お前はもういい! 櫛返せ!」


 勝手に渡してきた櫛を奪って黒白の方に駆け出すブラン……。俺の扱いひどくない?


「マスター」


「ダンジョン……おぉ!?」


「私はダンジョン王ではありません、マスター」


「いや、そうじゃなくて……その服装は?」


 ダンジョンコアは10連ガチャで衣服を引いてからは、白いワンピースで活動していた。しかし今のダンジョンコアはスーツを着ている。


「はい、魔王軍の幹部様が来るというのに礼装がない事を心の中で嘆いていたのですが」


「色々とごめんなさい」


「いえ、マスターを責めているわけではありませんよ? それを聞いた親友のダンジョンコアが一日レンタルしてくれたのです」


「へ~、レンタルなんて出来るんだ」


「はい、1日限定ならシステム上はDPがかかりません」


 要するに他のダンジョンマスター同士で色々物とかやり取りする事が出来るのだろう。ただ俺に仲の良いダンジョンマスター何ていませんけどね!


「ところでマスター……」


「ん、どうした?」


「マスターの視点から見てこの礼装は似合うように見えますか?」


 スーツを俺によく見えるようにくるっと回転して見せてくるダンジョンコア。身長が低い上に見た目が幼いダンジョンコアが着ているのでコスプレ感が漂っている。


「うむ、可愛いと思う」


「可愛いですか」


 無感情なダンジョンコアだがどこかお気に召す解答じゃなかったようだ。女心って難しい。


「可愛いじゃダメ……?」


「いえ、この服装は異世界でよくある礼装との事なので仕事が出来るダンジョンコアのように見えないかと思っただけです」


「ダンジョンコアはいつもよく働いてくれてるからさ……」


「そうですか」


 とりあえず俺の必死なフォローで満足はしてくれたのだろうか、それともこいつにまともなコメントを期待するのは無駄だと思ったのかわからないが入口の方に向かっていった。もうそろそろ来る時間だから準備のために向かったのだろう。

 5分ほどしてからかダンジョンコアの通信で幹部様が来たとの事なので俺だけ出迎えをする。他3人は自分の部屋に戻ってもらった。


「どうも~初めましてあなたがここのマスター?」


「あ、はい。どうも」


 なんとやってきたのは、かなり際どい衣装を着ている紫髪に紫目のお姉様だ、赤いハイヒールを履いており全身が色のビキニアーマーみたいな変わった服装。

 身長は175cmほどだろう何よりやばい点はおっぱいがクロよりもでかい!! クロがEだとするとGかHくらいあるのではないだろうか。


「私は魔王軍生産管理担当のメルキダ・ナッシュよ。よろしくね」


「相川瑠比です。よろしくお願いします」


 おっぱいお姉さんと握手を交わす。俺的には勢いでハグまでしたかったがダンジョンコアが俺の一挙一動を見てくるので止めておいた。明らかに胸に視線が言っているのを咎めるかの如く顔に視線を向けてくるのだが……男の性だから仕方がない。


「じゃあ、案内よろしくね~」


「あ、はい。目の前ですけどこれが入口です」


「なるほど~、よく砂漠とかでこの形を採用するマスターが多いけれどやっぱりダンジョン感出るのかしら」


「そうですね~、やっぱりピラミッドは……何かあるぞ! 的な感じは出てくると思います。はい」


「そういうものなのね~」


 凄く頭の悪そうな会話を繰り広げながら手元の紙に何かメモし始めるおっぱいお姉さん。しかし砂漠系で入口をピラミッドにする安直な考えのマスターが多いんだな……。

 ちなみに俺は、材料費が安く済むからこの形にしただけで特段ピラミッドが好きなわけではない。


「じゃあ、中を見せてくれるかしら~」


「いやー、今日はいい天気ですね~……いたい!」


「うん? どうかしたの?」


「なんでもありませんよ、幹部様」


 頑張って意識をダンジョン内から外に向けようとしていた俺であったがダンジョンコアがお尻をつねってきた。

 ひどい! 耳元で案内してくださいマスターと小声で言ってきたため仕方なくダンジョン内部に案内する。


「いきなり地下に行くのね~」


「そうですね」


「地上に階層を設けなかったのは何故かしら?」


「……ほら、地下ってダンジョンぽいじゃないですか? 自分地下が大好きなんですよ」


「なるほど~、マスターの趣味というわけね」


 またもや何かメモし始めるおっぱいお姉さん。地下が好きとか書かれてるのかな。というか先程から質問にどう答えていいのかわからずにかなり適当な返事をしているけど大丈夫なのだろうか……。目の前のお姉さん何だかほんわかしてるから案外いけそうな気もする。


「地下はまっすぐなのね」


「はい、僕の心もまっすぐなので」


「……?」


 ダンジョンコアが……は? 的な視線をこちらに向けてきているのが辛いです。そのまま真っすぐ歩いて行くお姉さんであったが……。


「あらあら」


 プスプスプスとお姉さんに突き刺さる毒矢。


 うむうむ、ちゃんと動作するなと一人で満足気に頷いていたらダンジョンコアがお尻を強めに蹴ってきた。とはいえ少女の脚力なのでギャグ漫画よろしく壁まで吹っ飛んでいくような事はない。


「いたい! 暴力反対!」


「何故トラップを起動しているのですかマスター?」


「いや……だって折角設置したんだから見せないと失礼かなって……」


「客人をトラップにかけてどうするのですか? 口頭説明で十分では?」


 どんどん顔を近づかせて怒っているような素振りを魅せるダンジョンコア……。今日のダンジョンコアはかなり怖い。


「大丈夫よ~、これくらいダメージに入らないから」


「大変失礼しました幹部様」


「いや~、さすが幹部様だ。これくらいの毒矢わけないですねぇ」


「マスター?」


「大変失礼致しました幹部様!」


「いいのいいの、こういう事は慣れてるから平気よ~」


 そう言いながらどんどん罠を踏み抜いていくお姉さん……。マジで全然効いてなくて凄いと思った。この毒矢トラップは安物なので上位冒険者に効かなさそうだなぁ……。

 なんて感心して見ている俺と慌ててトラップを切ろうとするダンジョンコア、何か最初と比べてダンジョンコアにかなり感情的な行動が増えて来ている気がする。


「そしてここが地下2Fね、地下1Fすぐ終わっちゃったみたいだけどあれでいいの?」


「いいんですよ、お姉さん。冒険者って奴はMAPが広いのがいい奴も入れば、狭い方が攻略時間短くて助かるって奴もいるのですよ」


「ニーズに敢えて合わせる事で冒険者数を増やす算段という奴ね~」


「そういう奴です」


 勝手に納得してくれたのでとりあえず賛同しておく俺であった。ダンジョンコアが若干挙動不審気味にそわそわしているのはいつボロが出ないか心配しているからだろうか。

 安心しろ、俺に任せとけ的なウィンクを飛ばしてみると……は? 的な視線を送られた辛い。


「あれ地下2Fは迷路みたいなのね、地下1Fはまっすぐだったのに」


「お姉さん、人生って奴は迷路のように色んな選択肢がある方が面白いじゃないですか。ダンジョンも人生と同じですよ。時にはルートがいくつも合った方がいいのです」


「私は魔族だから人の一生は、わからないけどそういう物なのね~」


 またお姉さんがメモをし始める。人の人生は迷路みたいな事を書いているとしたら他の人類に悪い事をしている気がする。ちなみに宝箱付近のトラップはダンジョンコアに解除されたので何事も起きませんでした。


「ここが最深部かしら?」


「はい、ここが最深部です」


「わぁ、あそこにあるのはブラックアイテム? 凄い~」


 恐らく聖剣の如く地面にそれらしくぶっ刺してあるレインボーソードの事を言っているのだろう。


「まぁ、あれが我がダンジョンの目玉アイテム的な存在で……」


 折角なので俺がこのアイテムについて適当にでっちあげたエピソードを熱く語ろうとしているところに……。


「くっくっく、よくぞ最深部までたどり着いたな」


「ほう、ここまで来れる者がいるとはのう……精々妾を退屈させてくれるなよ」


「……あなたを漆黒の闇で包み込んであげましょう」


 周囲が突然真っ暗になりどこからともかく声が聞こえてくる。こ、この声は……。


「デデーン! クイーンヴァンパイアが現れた!」


「デデーン! リトル族の魔王が現れた!」


「デ……デデン! ダークナイトドラゴンが現れた!」


 SEを設定していないためか自分達で声出して登場してきやがったー! 本人達は至って真面目なのかは知らないが小学校のお遊戯感が漂う。クロだけがかなり恥ずかしそうにしている。


「魔王軍の幹部様でしたか、これは粗相をしてしまいましたのう。」


「我がマスターのダンジョンへようこそ。何もない所ですが寛いで行ってください」


 白々しく接客対応を始める黒白。何もないは余計じゃない?


「クイーンヴァンパイアにダークナイトドラゴン。あなた達が大会で活躍した2体ね」


 メモを取り始めるお姉さん……。しかしお姉さんは何故かブランの事を凝視している。


「おれ……私が何か?」


「いえ……あなたリトル族なの?」


「……そうですけど」


「ふむふむ……」


 何故かブランを見ながらメモをしているお姉さん、ブランは怖いのかわからないがシロの後ろに隠れ始めた。


「ここにいる3体以外の魔物が見えないけど他にはいないの?」


「うちは少数精鋭が売りなのでこの3人だけで十分なんですよ」


 少数すぎるけど精鋭なのは間違いない、お姉さんは部屋の中をぐるっと見渡す。同居人達と色々と世間話を始めるお姉さんに黒白が対応をしてくれている。ある程度話せて満足したのか俺の方に戻ってきた。


「案外狭い気がするけど……これで全部かしら」


「まぁ……まだ開発段階なので……」


「なるほど~、開発段階なら仕方ないわね~」


 のほほーんとした感じでメモをする。何を書いているのか凄く気になるが豊満な胸でブロックされているため覗き見る事は出来ない。クソ……あのメモに転生出来ていれば!!

 などとアホな事を考えている内にお姉さんは踵を返して入口の方に足を向けた。


「こんなところね~、今日は案内ありがとう」


「本日はご来訪ありがとうございました」


「「「ありがとうございました!」」」


 全員ペコリと頭を下げる。営業所に社長が来るとこんな感じになるのだろうか?


「じゃあね、相川君だっけ。またどこかで会えたらいいわね」


「デートの予定ならいつでもいけますよ?」


「マスター???」


「はい、すいません。何でもありません」


「ふふふ、面白い子ね。デートにいつか行きましょうね」


「まじですか?」


 喜びのあまりガッツポーズを決める、ダンジョンコアを含めた4名から蔑んだ視線を送られるがこれくらいで心の折れる俺じゃないぜ!


「えぇ……いつかね」


 意味深なセリフを微笑みながら残したお姉さんは一瞬で消えた。瞬間移動か何かだろうか? 呪文か能力かはわからないが便利だな……。


「マスター、お疲れ様でした」


「あぁ、ダンジョンコア……それに皆もおつかれ」


「やれやれ……自分よりも格上の魔族が来ると疲れるのう」


「私も疲れました……」


「俺様もどっと疲れたな……」


 時間にして数十分程度だったがかなり疲れたようで3人共装備を脱いで大きなベッドに飛び込んでいった。一緒に飛び込みたくなる気持ちをぐっと抑えているとダンジョンコアが話しかけてきた。


「マスター……」


「どうしたダンジョンコア」


「いえ、あの……イベントが立て続けに起こるようで申し訳ないのですが」


「また誰か来る感じ? まぁ……俺はこの世界での交友関係まったくないからいい機会なんじゃないかな」


 元居た世界でも殆ど友達いなかったけどな! そんな過去は置いといてダンジョンコアの話に耳を向ける。


「このスーツを貸してくれたダンジョンコアが……マスターのダンジョンに遊びに来たいとの事です」


「ダンジョンコアの親友だっけ……それはいいんだけどダンジョンコアが2人になるとややこしいからその子に名前とかある?」


「マスターからはサヤと呼ばれています。ダンジョンコア同士は№で呼び合いますから私は彼女の事を№34729と呼んでいますが」


「そんな沢山いるのか……。ところでダンジョンコアは№いくつなの?」


「…………秘密です」


 人差し指を一本口元に当てて内緒のポーズを取るダンジョンコア、非常に可愛らしい姿だが何故秘密にされるのかわからない。まぁ、女の子には秘密の1つや2つあった方がいいのかもしれないので追求はしなかった。


 ダンジョンマスターですがおっぱいお姉さんの視察を乗り切りました。ちょろかったです。


……


…………


………………


 場所は変わって黒い神殿の中。神殿は黒曜石で出来ており内部を青い光が灯している。


「今戻ったわ」


 先程ダンジョンで見せていたほんわかとした雰囲気は彼女から消えていた。彼女の目の前には黒いフードを全身に被り顔に白い鬼の面を被っている。異様な風貌だが背はかなり低い、彼女の身長が高めなのも合わせて相対的にさらに小さく見える。


「あぁ、メルキダか……有望株の新人はどうだった?」


「そうね……今はまだ対した事ないけれど。今後に期待と言った所かしら?」


「今年の新人は不作だったな。彼には頑張って貰うとしよう」


「えぇ……私も暇が出来たら援助するわ」


「そうしてくれ」


 男は全身を黒い霧と化して女は瞬間移動して消えた。周囲は静寂に包まれた……。


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