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episode1 転生した道化

 目が覚めると、暗闇で何も見えない場所にいた。

 ここが死後の世界だと言われても納得してしまうような、光もない、物が存在するのかもわからない、周りを見てもただ黒い景色が広がっている。

 闇という言葉を表現するのならこの空間こそが最も適しているのだろう。

 意識はあるはずのに、体が存在していないかのように感覚が無い。

 声を出そうとしても声が出ないし、体を動かそうとしても体の感覚が無いので動いているのかさえわからない。 

 

「哀れな道化だね。守る事が出来ぬと知っても、命を投げ打って守ろうとする。本当に哀れだ」


 慣れない感覚に困惑していると、ただ黒いだけの空間に声が響き渡る。

 周りを見ても誰もいないはずなのに、声だけが空間に響き渡っていた。

 響いたのは、男とも女とも判別がつかない声。それは同情しているかのように、哀れみ含んでいるような声音。


 「次があるのなら、守りたいと望むと共に悪者の魂は刈り取りたいと願う。相反する願いを持つ道化……か。その望みを叶える機会を与えてあげるよ」


 響く声は、こちらを無視するように一人で話を続けている。

 望みをを叶える機会を与える?

 声の主が誰なのかすらもわからない。何故そのような機会を与えるのかも理解出来ない。


「興味が湧いたんだよ。神っていうのは、暇を持て余しててね。相反する望みを持つ道化が、守りしものとなるのか、殺戮者になるか、それとも……それ以外か」


 こちらの考えていることを読み取ったかのように話す声。

 声の主は、自分を神だと言って暇を持て余してると言った。

 正直、こんな状況でなければ狂人の戯言だと相手にもしないだろう。しかし、今は違う。

 神と名乗る者は、守りし者となり大切な人を守っていくのか、ただ悪者と見なした者の魂を刈り取る殺戮者となるのか。

 または、その二つ以外のモノになるのかに興味が湧いたと。それだけの為に自分に機会を与えると言っている。


「さぁ演じてくれよ。守りし者か殺戮者か、それともその以外か。君の舞台は整った。後は君が決めること」

 

 こっちの意見すらも聞かずに神と名乗る者の声が響くと共に、暗く闇に包まれた空間を光が打ち消していくように徐々に空間が崩壊していくと共に意識が薄れ始めていく。


「あれ?君も付いていくのかい?」

「……」

「なるほどね、君が望むなら行ってきなよ。そのほうが彼の望みを叶えることが出来そうだからね。私からも1つだけ力を授けるとしようか」


 意識ごと光に呑み込まれそうになっている中で、そんな話が聞こえた。

 神と名乗る者が君と言った存在の声は聞こえなかったが、一緒に来るということは理解出来た。

 会話が終わると同時に、自分の中にある何かが少しだけ欠けたような感覚を覚えながら意識が呑み込まれていく。 




 眩しい。

 そう思いながらも重い瞼を上げるように目を開ける。

 目の前には、日の光がこちらを祝福するかのように照らしていて眩しくて目を細める。


「ここは……どこ?確か死んだはず……」


 確かに自分が死んだと言う事は覚えているし、今でも最後に見た醜悪の笑みは脳裏に焼き付いている。

 落ちた時の事を思い出すと、今でも体に激痛が走っていく感覚がする。

 それでも体に激痛は襲ってこない。

 腕を、足を、体を動かしても激痛は襲ってこない。おかしい。

 自分は確かに死んだはずなのに、体は動くし意識もしっかりしている。立ち上がって周りを見渡すと広大な草原に、照りつける太陽、雲一つない真っ青な空には鳥とも何とも言えない生物が飛んでいる。

 壊れたと思われた体でさえも何事もなかったかのような状態になっているのだから、自分のいた世界で死んだ事は確信できる。

 しかし、死者の世界と言われると違和感しか無い。


「夢を見ていたような気が」


 目が覚める前に、夢のような物を見ていた記憶があるのだが記憶の内容が全く思い出せない。 

 それで、もこのような状況になっているのは、その夢が関係しているのは確かなはずなのに内容が全く思い出せない。

 夢の内容を必死で思い出そうとしても、何かに妨害されるように思考が乱れ、思い出すことが出来ない。


 夢の内容が思い出せないのであれば、とりあえず現状を確認するしかない。

 今いる場所は、元の世界とも死者の世界とも違う気がする。お伽噺の世界と言ったような場所だと思われる所。それは、空を飛んでいる見たことも無い、生物が証明してくれてる。

 ここは、元の世界ではなく違う世界なのではないだろうか?

 そして、一番気になっている……


「仮面と鎌?」


 目の前には、横向きにした菱形が少し丸みを帯びたような形をした二つの目があり、右目の下には涙を模したかのような青い雫の模様、左目の下も涙を模したかのような赤い雫の模様がある。口の部分は笑っているような口角が上がっている白い仮面。

 その仮面の隣にあるのが、漆黒の大鎌。

 大人の身長よりは少し小さい長さを持つ漆黒の長柄。刃も色黒く、血管を思わせるような赤い線が何本も浮かんでおり、不気味さをより一層引き立てている。

 不気味な二つの物を見てどうするかを考えるのだが、何故かこの2つが自分を呼んでいるような感じがしたので着けてみることにした。


「この仮面を着けると落ち着く気がする。この大鎌は理解でき……うん?」


 仮面を着けると、自分の体の一部分なのでは無いかと思ってしまい欠けていたピースがかっちりと嵌ったかのよう感覚がしてすごく落ち着くのだ。

 大鎌の方は持ってみると何故か自分には必要な物で無くてはならないモノなのだと本能的にわかってしまった。

 何故そんなことを思ってしまったのかはわからないが、少し振ってみると仮面を付けるまでは見えなかった線が出ており、その先には説明文の様な文章が並んでいる


☆クラウン・ジョーカー|《道化の切り札》

・主の要望に答え形状や性能を変化する大鎌。

 ソウルポイントを振り分ける事で性能を強化する事が可能。

 主以外使用不可

・現在の性能:狩魂の大鎌

└狩魂の大鎌で得られたソウルポイントに+1多く吸収する。

└???

 所持スキル

・身体強化 Lv10

・????


 説明文のような文章に書かれている事を全て理解する事は出来なかった。

 ソウルポイントやスキルと書かれていても意味がわからない。

 名前を見る限りでは、道化の切り札と言うぐらいなのだから、やっぱり自分の物なんだと思う。

 形状や性能を変化させる事が出来ると書いている。ということは、刃を出したまま持ち歩く事をしないでも良いということか。

 着けた仮面は、しっかりと顔に嵌まり激しく顔を振っても落ちず自分で外さない限りは外れなくなっているようだ。

 この仮面。もしかしたら、見たものを鑑定のような事をしてくれる物なのだろうか?


「さて、どうしようか。この世界の事も、スキルと呼ばれる物も何も知らないんだから。やっぱり情報収集かな」


 この世界の事など何一つ知らずに目覚めたのだから、情報を得るために行動する事が優先だと思う。

 人に聞くなり、調べるなりする為に街や村を探さなくてはいけないのだが……自分がどこにいるのかさえわからない。

 

「お?あそこなんて良いんじゃないか!」


辺りを見回して見晴らしのいい場所を探してみると、近くに辺りを一望出来そうな丘を見つけた。

 その丘まで走って、上っていき頂上まで行ってから辺りを見回す。 


「あれは、馬車?と人か?」


 少し離れた場所に馬車らしき物を見つける事が出来たのだが、その周りには戦っているような人達が見えたので何か起きているのだと嫌でもわかる。


「見世物では無いと思うけど、見に行きますか」


 見世物をしているようには見えないが、せっかくこの世界で見付けた人だし色々と聞かなきゃダメか。行きたくない気持ちを抑え、馬車の方へ走る。


 


 

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