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東口百貨店闇物語  作者: リノキ ユキガヒ
「点と面」
7/25

「こんな事でヤツがくたばるとは思えない」

余りの反応の無さに疑心暗鬼に駆られる美雨。

再び目を凝らし屋上を見る。

美雨がその視線を建物の真ん中辺りまで移動させた時だった。

「シュポン!」

とまるでシャンパンのコルクが抜ける様な音がした。

「!?」

聞き覚えのあるようなないような不思議な感覚に襲われた美雨は感覚を研ぎ澄まし辺りを伺った。

すると夜空に飛行機雲のみたいな一筋の細い雲の様なものを発見した。

漠然とその行方の目で追いつつその飛行機雲のような物の正体を探ろうと必死に思考を巡らせる。

やがてその飛行機雲は美雨に向って落ちて来た。

そして頭上を掠めると雷の様な轟音を放ちながら落着した。

それと同時に発せられた嵐の様な凄まじい熱波が美雨の身体を襲う。

その熱波が通り過ぎ呆気に取られる美雨だが一つの可能性を見出した。

「まさか!」

気が付くと先程の飛行機雲の様なものが闇夜に三つほどたなびいていた。

美雨はそれを見ると核心を持った。

「迫撃砲か!?」

そしてそれは再び志摩丹の屋上で爆ぜると美雨の全身を襲った。

「くそっ!くそっ!くそっ!ヤツめ!迫撃砲なんか引っ張りだしてくるとは!!」

美雨はそう吐き捨てながら屋上を走り抜けて迫撃砲の弾道を交わす。

そして屋上の淵まで辿り着くと目を皿のようにして六越の屋上を見渡した。

次に射撃するのであれば発砲炎で辺りが明るくなるはずだ。

そこには必ずヤツが居るだろう。そしてそこに掃射を加えればいい。

当たり前の事だが迫撃砲は重い。

陣地転換するにはそれなりに時間がかかる。

その隙を狙えばいいのだ。重火器は威力は絶大だが機動力に劣る。

美雨の持つ軽機関銃は迫撃砲に比べれば威力は劣るが機動力は抜群だ。

「さぁ、撃ってこいよ。その時がお前の終わりだ」

そう呟きながら美雨は片脚を縁に載せる。

喉の辺りに渇きの様なえもいわれぬ緊張感が芽生える。

後ろの方で爆ぜた炸薬が紅蓮の炎を上げて美雨をくれないに染め上げる。

トリガーに掛けた指先に全神経を集中させた。

勝負は一瞬で決する。

志摩丹と六越新宿店の間を風が吹き抜ける。

その瞬間に六越の屋上のど真中が一瞬光るのを美雨は見逃さなかった。

そこから蜘蛛の糸の様に推進剤から発せられる煙が延びていく。

彼女はそれを見送ると

「もらったぁぁぁぁぁ!!」

と叫びながらMG34の引き金を引いた。

総統閣下の電気ノコギリは銃口から青白い炎を吐き出すと連なった弾丸がまるでチェーンソーの歯の如く六越の屋上を切り裂いた。

一連射終えると美雨はニタリと笑い

「くっくっくっ…ヤツも中々やるじゃないか。スピードで私に敵わぬと思うや否や、迫撃砲で面制圧してくるとはな。流石の私も少し動揺したよ。くっくっくっ…」

肩をわずかに震わせながらそう呟くと美雨はMG34を肩に担いだ。

そして自由になった片手で内ポケットから煙草を取り出すと火をつけた。

くわえ煙草のまま、一服吹かし、次を吸おうした瞬間、紫煙の向こうにさっき耳にしたシャンパンの抜けるような音が再び鳴った。

「!!」

美雨は慌て音のする方を見るとそこにはメイド服姿の華がしゃがんでいた。先程まで屋上の設備に身を隠しながらの射撃ではない。

そして、その傍らには見慣れない武器の様な物があった。

美雨は一瞬目を疑ったがそれは紛れも無く旧日本陸軍の弾丸投射量を飛躍的に押し上げた立役者。


「八九式重擲弾筒」


だったのだ!


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