エピローグ
今日も新宿に夜が訪れる。
あの夜以来、サチも華も美雨を見る事はなかった。
家電量販店に成り果てた元六越新宿店の屋上に二人はいた。
サチは屋上のテラスの縁に腰掛け華に話しかけた。
「志摩丹の娘、成仏しちゃったみたいだねぇ」
「そのようですね」
サチの傍に佇んでいる華が穏やかに答える。
「結果的に彼女は救われたのかなぁ」
サチは新宿のネオンをボンヤリ眺めながらそう呟いた。
「それは神様にしか解りませんわ」
華のスカートの裾が夜風になびく。
「あーあ。何だか毎日退屈だなぁ」
サチは立ち上がると背伸びをしながらそう言った。
「そうですね。夜がめっきり静かになりましたね、サチ御姉様」
「たまにはいいけど…ね」
「ふふ。紅茶でもいれましょうか?」
華はそう微笑むと回れ右をした。
あくる日の百貨店•志摩丹のワインコーナー。
腰まである長い髪をなびかせながらワインのボトルを陳列している女性店員の姿があった。
そこに白いワンピースを着た品の良さげな女性客が興味あり気に近づいて来た。
黒髪の女性店員は彼女の存在に気付くと「いらっしゃいませ」と軽く挨拶をして様子を少し伺った。すると彼女は
「ワインってこんなに種類が有るのね」
とボトルの入った棚を見上げながらおもむろに呟いた。その声は黒髪の女性店員の耳にも入り
「そうですね。よろしかった試飲できますけどいかがします?」
そう微笑みながら話しかけた。
「そうね。折角だから頂こうかしら?まだ昼間だけど、フフ」
「かしこまりました」
黒髪の女性店員はそう言うと彼女の前を離れようとした。しかしそれと同時に騒がしい声が近づいて来た。
「チョットあんた~、こんな所で道草喰ってるじゃないわよ!オルタでバーゲンやってるだから早く行かないと!」
彼女は白いワンピースの女性とは対象的にミニスカートで髪は鮮やかな金髪に染め上げられていて二つに束ねられていた。
金髪の女性はワンピースの彼女の腕をつかんだ。
「お姉さんチョット待って、今店員さんが…」
そう言う彼女の言う事を無視する様に、お姉さんと呼ばれた金髪の女性は腕を引っ張りワインコーナーから離れようとしていた。
そして、その様子を試飲用のワインをトレイに載せた黒髪の女性店員が苦笑いを浮かべながら眺めていた。
東口百貨店闇物語 完
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……。
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「おい、志摩丹のヤツはいなくなったぞ」
「って事は何かい?歌舞伎の?お前さんどうする?」
「あたい?そうさね、あの二人が東口の顏ってちょいと解せないね」
「うぅ~う。何か起こりそうな予感がするよ~」




