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東口百貨店闇物語  作者: リノキ ユキガヒ
「心」
19/25

来客

 宴は厳かに続いた。普段は激しくぶつかり合う三人だがこの日ばかりは違った。

 そしてディナーは終わりを迎え華とサチが美雨のいるテーブルに揃って現れる。

 二人はそろってお辞儀をすると華は

「いかがでしたか?」

 と美雨に感想を求めた。

 彼女は食後に出されたワインを一口飲むと

「申し分ない」

 と短く感想を述べた。しかし短い感想の割りには美雨の表情は満足気で鋭い目の目尻は下がっていた。

 そんな美雨の表情を、華とサチはみると顔を見合わせて微笑みあった。

「さて、私は帰るかな」

 美雨はそう言うと椅子から立ち上がった。

 それと同時なエレベーターのチャイムが鳴る。

 三人共そのチャイムが鳴る方を見た。

 エレベーターガールが深々とお辞儀をする中、一人のスーツ姿の男性が降りるて来る。その男性は迷う事なく三人のいるテントに向かって来た。

 美雨がその男性をいぶかしげな視線で追う。

「普通の人には私達の姿は見えないはずだが…」

 美雨がそう呟いた瞬間、華が声をあげる。

「元山館長!!どうされましたこんな夜中に!?」

 元山館長と呼ばれたその初老の男性は挨拶代わりに右手を上げると優しい口調で彼女達に話しかけた。

「いやなに、久しぶりに夜の新宿を歩いていたら何やらウチの屋上から楽しそうな雰囲気がしたんで、のぞきに来たんだよ」

 彼はそう微笑みながら話した。そして改めて三人を見て美雨に視線を合わせると

「今夜の主賓はあなたですね。始めまして、私が元新宿六越の館長、元山です。まぁ今ではただの大家みたいなものですけど」

 と言いながら手を差し伸べた。

 美雨はその手を受け取り握手を交わす。

「どうですか?楽しんで頂けたかな?志摩丹さん」

「えぇ。もちろん」

 美雨は力強くそう答える。

「そうですか。それは良かった」

 元山館長は満面の笑みをすると華とサチにそれを向ける。

 二人とも同じく笑顔でそれを受け取る。

 三人の微笑ましい光景を見た美雨は

「こういう雰囲気は苦手でね。私は失礼するよ」

 そう言いながら回れ右をする。

「そうですか」

 元山館長は少しもの悲し気に彼女の背中を見ながら呟く。

 その声を聞いた途端美雨の行き足はピタリと止まる。

 そしてそのまま背を向けたまま。

「でも、あれだな。このまま六越にやられっぱなしと言うのも志摩丹の名に傷が付く、ここは一つ…」

 美雨はおもむろに片手を上げパチンと弾いた。

 美雨達がいた屋上が一瞬光輝いたかと思うと、サチと華のいるテントを囲うようにワインボトルの入った棚が現れた。

 そしてその棚から美雨は一本のワインボトルを引き抜くとテーブルの上にドンと置いた。

「まずはこれから。1929年のボルドー」

 元山館長はその年号を聞くと

「六越新宿店が開店した時の年ですね。さすが志摩丹さん」

 彼女を細い目で見つめる。



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