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東口百貨店闇物語  作者: リノキ ユキガヒ
「陸の王者」
13/25

サチの正面に対峙する伝説の重戦車「タイガーⅡ」。

彼女は恨めしくその砲塔を睨みつけると日本刀を構えた。

その姿を美雨は見ると

「ハハハハ!!睨み付けても砲弾は避けてくれ無いぞ!」

高笑いをしながらサチに言い放った。

サチはニヤリとするとキリリとした眼差しで

「さあね。どうかな?ゴチャゴチャ抜かしてないで撃って来なよ」

そう珍しく冷静な口調で言い返す。

「フン!貴様なんぞ徹甲弾のシミにしてくれるわ!!」

サチの含みのある態度がカンに触ったのか?美雨は怒りで冷静さを失った。

「秒速1000mの矢を受けてみろ!」

そう言った瞬間、戦車が揺れた。砲身から発砲炎と硝煙が吹き出ると長細いタングステン鋼の矢がサチに向って飛び込んで来た。


バキン!


次の瞬間、金属と金属がぶつかり合う音がした。

そして徹甲弾はあらぬ方向にそれ空高く舞い上がった。そしてそれは力を失うと地面に向け落ちて来た。

ドスンと言う音と共に徹甲弾はサチと美雨の駆るタイガー戦車の前に突き刺さった。

「な、なんだと…」

一瞬何がおきたか解らず言葉を絞り出す美雨。

アスファルトの地面に無残に突き刺さる徹甲弾を見ると彼女はゆっくりとオルタの正面口にいるサチの方に視線を向けた。

中腰になり刀を上方に向け振り抜いた姿勢のままで彼女は無傷でオルタの正面口に佇んでいた。

美雨の視線を感じたサチは刀を下ろしながらニタリと妖しく微笑んだ。

「あなたの戦車よりもサチの日本刀の方が強いみたい」

彼女はそう挑発するように美雨に言い放つ。

「徹甲弾を日本刀でいなすだとぉ~」

美雨は思いもよらないサチの反攻に地団駄を踏むように歯ぎしりをした。

その悔しそうな姿を見たサチは日本刀を肩に載せ、片手を差し出し平手を上にして手招きをした。

「もうお終い?サチこれじゃぁ満足できないよ~」

あからさまな挑発に美雨は身体中の血液が煮えたぎる様な感覚に襲われた。

「貴様~」

ハッチのリングを硬く握りながら怒りに身体を支配されたままで打開策を模索する。

「まてよ…」

美雨の脳裏にある考え浮かぶ。彼女はその策がサチに気付かれ無い様に咽喉マイクに手を添える。

そして小声で囁く様に搭乗員に指示を出した。

レシーバーから「装填完了」の旨が美雨に伝えられると、彼女は口角を釣り上げるような含み笑いをした。

「これならどうかな?」

と言ったあとに砲塔から発砲炎が迸る。

サチは砲弾を先程と同じくいなそうとしたが先程の徹甲弾と比べると初速が遅く感じられた。

嫌な予感がしたが構わず眼前に迫る砲弾を刀でいなそうと先程と同じく下から上へ振り抜いた。

サチの日本刀は砲弾の弾道を反らす為、先端に触れた。しかしその刹那。

砲弾の先端から鋭い炎の槍のようなものがサチに向って伸びてきた。

「!!」

彼女は自分に一体何が起きたか解らなかった。

その鋭利な炎の槍はサチの身を焼き切らんばかりに切っ先を伸ばして来た。

本能的にサチは身体を反らしそれを何とか交わす。

そして地面に倒れこむとその奇妙な爆発を起こした砲弾は上方へと反れて行った。

「なに?今の魔法みたいな砲弾?」

呆気に取られるサチをよそに美雨の高笑いが聞こえて来た。

「あっはっはっは!どーだ!形成炸薬の威力は!」

「けいせいさくやく?」

「爆風を一点に集中させて装甲を貫く特殊な砲弾の事だよ!!」

「サチ、頭悪いからわかんな~い」

おどけて余裕のある様にサチは言い返す。

しかし彼女には一片の余裕も無かった。

次にいなす事の出来ない砲弾を打ち込まれたらお終いだ。

絶対優位の美雨は終始ニタニタした表情をしながらサチを見続ける。

「さぁ、どうするお嬢さん?形成炸薬のメタルジェットに焼き殺されるのと、MG43に引き千切られるの?」

美雨は嫌らしい表情を浮かべると砲塔ハッチの脇に備え付けてある軽機関銃MG43のスライドを引いた。

「どっちも嫌だよ!バーカ!!」

小学生がするような幼稚な悪態をとるサチ。

その余りにも低俗な返しに再び頭に血がのぼる美雨。

「貴様みたいなヤツに砲弾も弾薬もいらぬわ!!踏み潰してやる!!」

そう叫ぶとキングタイガーは化物の雄叫びのようなエンジン音を響かせた。左右互い違いに作動するキャタピラ。

戦車の重い車体がその場で旋回する。俗に言う超信地旋回だ。

車体がサチに向くとキングタイガーはそのまま一直線に彼女に向って突っ込んで来た。

サチはそこから逃げようとしたが備え付けの機関銃からの制圧射撃を受け逃げ場を失った。

アスファルトを砕き、鋼鉄の虎は内燃機関の雄叫びをあげ迫って来る。


正に門前の「虎」


「サチは加藤清正ぢゃ無いっつーの」

そう愚痴をこぼすと、チラと後ろを伺った。ボロボロになったオルタの正面口。

「これ以上下がれないしー。背水の陣ってーのコレ?」

サチは苦笑いを浮かべながら後ずさる。

「あーもー!テンパッてオッサンみたいな事ばかりサチ言ってるよ!ココはNOWなヤングが集う所なの!!そんな可愛くないイカツイ戦車は出ていけーーーっ!!」

サチの叫び声も虚しくキングタイガーのエンジン音に掻き消されるだけだった。

そして遂にキングタイガーは歩道にその巨体を乗り上げた。

美雨の容赦無い制圧射撃が続けられる。

このままだとサチはオルタの正面口とキングタイガーに挟まれてしまう。

サチはなす術なく後ずさるだけだった。




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