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老婆のお迎え

作者: コッコ

ショートです。

読んでいただけたら幸いです。


---------

老婆がいた。


老婆の口癖は、


最近の若い男は、魅力がないだった。


回りばっかり着飾って、中身が見えない、それとも中身がないのか。


昔の男は、かっこよかった。


着ている服は、ぼろだったけど、りっぱな中身を持っていた。


ちゃらちゃらしてなくて、皆、誠実でりっぱな信念を持って生きていた。


ああいう男はよかったねぇ。


今の男なんて、子供っぽくて何の魅力もない。




ある日、老婆は、ぽかんと考えていた。


私ももう直ぐお迎えがくるのかねえ。


私って何のために生まれてきたんじゃろうねえ。


年取ってからは、体のあちこちにガタが出てきた。


それは、よくなるどころか、あちこち悪くなるところが増える一方だった。


まるで、廃車寸前の車じゃないか。


別に、こんな晩年を過ごしているのは、私だけじゃないって分かっている。


私ぐらいの年の者は、皆、似たり寄ったりで、体にガタがきまくって苦労している。


年だから仕方ないと諦めている。


今は元気な若者も、年を取るにつれて、


何れ皆私みたいに、体のあちこちに故障が出てきてしまいポンコツになるんじゃ。


私の体のガタは、最近、特に激しくなってきた。


もう、あの世に往く兆候なのかのう。


往く時は、苦しのだろうなあ。


なぜ、最期の最期になって、苦痛を味会わないといけないんじゃ。


人生って理不尽だ。


夜寝て、朝起きたら、人生を全うしてた。


そのような最後がいいんだけどな。


でも、そんなうまい往きかたをする人って、


20人に一人もいないって聞いている。




時々、老婆は、見えない相手と会話をするようになっていた。


老婆「ねえうちらは、何のために生まれてきたの。」


相手「それは、役割があって生まれてきたんだよ。」


老婆「いったい、なんじゃね、うちに割り当てられた役割っちゆうのは、


相手「生き物の生を過去から未来へ引き継ぐことだよ。


あなたは、りっぱにその役目を果たされた。」


老婆「その役目を果たしたからと言っていったい何になるんじゃ。」


相手「生物には、皆大きな目的があって生まれてきているんだ。


そのために、地球上の生物が皆協力しあって生きて行かねばならない。」


老婆「目的って、なんじゃ。」


相手「それは、生のリレーなんだ。


あなたは、生を引き継いでいくために生まれたんだ。


そして、りっぱに子孫を残すことができた。


老婆「生を引き継いでいっていったい何になるんじゃ。


うちらも昔からずっと考えてきたんじゃが、


うちらちっぽけ過ぎるのかのう、


全く分からんやった。


人間だけでなく、生物っていう枠まで広げて考えてみることもあった。


生物には、利用するものと、利用されるものがいた。


それは、生物にとって不公平であり、


生物にとって大変不幸な弱肉強食の世界だった。


うちだって、強い者の犠牲者になりながら、


弱い者を苛め利用して生きてきたと思う。


強い生物が弱い生物を食らっていかないと、


生のリレーができない世界だった。


あまりにも、理不尽でこの世の存在する意義を理解できなかった。


どうして、


こんな嫌らしい世界の生のリレーをしていかなといかんのか、


全く理解ができんやった。


この世は、神様の設計ミスでこんな変な世界になってしまったのかのう。」


相手「どうでしょうね。でも言えることは、


皆がいるからこそ、この地球上では、生のリレーができているのです。


そして、地球は、華やかに繁栄しているのです。


食べたり、食べられたり、弱肉強食っていう大変嫌な面もあります。


しかし、それが結局は、お互い協力していることになっているのです。」


老婆「そうかもしれんが、


個々の生物の魂のことを考えると、協力しているとは思えない。


一寸の虫にも五分の魂で、食べられる方は堪らない。」


相手「もっと、心の広い考え方は、できませんか。


自分が他のためになったため、他が生かされた。


その他は、生をリレーしていく主役を担う。


自分は、犠牲になったようだけど、それを喜びと感じることはできませんか。」


老婆「うちは、自分が食べられたりする立場になったら、


他を怨むことはあっても、とてもじゃないけど、喜びなんて見いだせん。」


相手「あなたって僻みっぽいんだなぁ。もって広い心を持って下さい。」


老婆「持てるかっ。」


老婆は、相手の顔面に正拳を喰らわした。相手は、あっけにとられ顔を抑えていた。


相手「おのれ~、人間の分際でよくも食らわしてくれたな~。


俺は、こんな侮辱的なことされたの初めてだ。


もっと俺を敬え~。」


老婆「ふざけるな~。」


老婆は、今度は、金属バットを持ってきて、相手の頭を叩き割った。


相手「くっそう、もう許さねえ~。


設計ミスで、できたできそこないの豚どもが~。」


老婆「やっぱり、てめ~の設計ミスのせいだったのか。」


相手「俺一人で設計したんじゃない。


他にも設計に加わったやつがいるんだ。


俺だけのせいにするんじゃない。」


老婆「てめ~みたいな、心の狭いやつが設計したから、


このような失敗作ができたんじゃ~。」


老婆は、相手の股間を思いっきりけりあげた。


相手「そんなことしても、痛くも痒くもないよ。


俺達は、おまえ等みたいに、下等でないため生殖活動をしない。


んでもって、急所なんか持ってないいもんな。」


老婆「恋愛もできないんだな。そりゃ寂しいことで。」


相手「よくもいいやがったな。


ばあさんよ、折角、お迎えにきてやったんだけど、や~めた。


設計ミスの製作物さん、さようなら、いつまもでもお元気で~。」


このような経緯で、老婆は、お迎えの方に見捨てられ、この世に残ることになった。


老婆は、山姥として、永遠にこの世で暮らしたとさ。

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