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リプレイ  作者: タンポポ
2/3

第二話〜身勝手〜

『お、おい…その目』


「…あ!!」


愛は慌てて人間の姿に戻り、作り笑顔で微笑む。


「見られちゃったね…譲君は怒りの感情が溢れると、私は悲しみの感情が溢れると赤くなるの…」


『…そうか』


「…って、私はこんな事言いに来たんじゃなくて!……なに笑ってんのよ」


いつの間にか俺は笑っていたようだ。


『別に、ただ嬉しくって』


「…嬉しい?」


『あぁ、今まで辛かった。あんただってそうだろ?天使だろうと人間だろうと…一人は淋しいょな』


「そうね、だから私はあなたを助けに…」


『あんたが俺を助けたらどうなる?俺は救われるのか?一人じゃなくなるのか?』


「そうさせてみせる…!」


『あんたは…?』


「…え?」


『天界に帰るのか?』


「もちろん。仕事が終われば私の役目は終わる。譲君の私に関する記憶も消させてもらうわ」


『それじゃあんたは救われない。あんたはこの仕事が終わればまた一人になっちまう』


俺の言葉に愛は呆気をとっている。


「…フフ、珍しい人間ね。大丈夫。譲君より不幸な人はまだたくさんいるの。次の仕事が始まれば…」


『いつ終わる…?』


「だから、譲君が救われれば…」


『そうじゃない。あんたの悲しみゎいつ終わるんだ?』


「終わらなくても…仕事だから…」


愛の目はまた赤くなっていたが、俺はあえて触れなかった。


『そうか…、じゃあそろそろその仕事という内容を聞こうか』


「うん。まず、譲君には生まれ変わってもらうわ」


『生まれ変わる…?』


「えぇ、一度くらい何かになりたい。って思ったコトくらいあるでしょ?」


そりゃあ、鳥になって飛びたい…とか、まぁ思った事はある。


『記憶はどうなる?俺は昔人間だった…なんて記憶は残るのか?』


「最初は残るわ。シュミレーション期間は一週間。それで生涯この姿で生きると決めたら、譲君の人間としての記憶は消える。嫌ならまた変わる。でも、同じ物に二回なれないから気をつけてね」



『なるほど…』


「たとえシュミレーション期間でもその間に命を絶つかもしれないからね」


『あんたはその間どこにいる?』



愛は少し黙る。


「そのあんたってのはやめなさい。愛って呼んでよね」


『…分かった。愛はどこにいる?』


「天界から譲君を見守ってるわ。譲君がきてほしいタイミングでまた現れる」



大体話はつかめたな。


用は俺にとって、今のこの生活を変えるチャンスなんだ。


「さぁ、何になりたいか考えておいて。三日後の三時にまたこの場所で会いましょう」


愛はそう言い残すと空高く飛んでいった。


残された俺はまだその場に立ち尽くした。頭の中ゎ何になるかよりも、今起きた事態が夢じゃないか確認する。



なんか今日は色々あったな。


辺りは日も沈み、うっすら暗くなっていた。


『今日はもう寝るか』



俺は家…というよりも施設に帰り、部屋で眠りについた。



ーーーーーー。


朝、目が覚めると時計の針は信じ難い事になっていた。


何になろう…



そう考えただけで悩み、あまり眠れなかった。


『もう…人間は嫌だな』


人間は嘘をつく。自分が有利な様に。


それに身勝手だ。信用の場所がない。


信じれば利用される人間はもうゴメンだ。



動物になろうか…。


動物は自由だ。学校も仕事もない。群れを作るが、人間とは違う協力性を感じる。


『あ…しまった。肝心な事を聞くのを忘れた』


俺が聞き忘れた事…それは生まれ変わっても目は赤くなってしまうのかだ…。それが分からなくては、生物に生まれ変わるのは考えものだ。



『まぁ、今度でいいか』




〜三日後〜


「こんにちは」


『ウッス、時間通りだな』


「フフッ、今回はあいさつしてくれたね」


『まぁ、愛には世話になりそうだしな』


仲間…と呼べるのが天使だっていい。ただ、愛と話すのが楽しみだった…なんて口が裂けても言えないな。


「じゃあ改めて聞くね…何になりたい?」


『その前に一つ…俺の目はどうなる?』


「…それは分からない」


予想外の答えが返ってきた。


『ちょっと待てよ!前の仕事で俺みたいな奴はいなかったのか?』


「…いたわよ」


…あ、愛の目が赤くなってる?


『じゃあ、そいつはどうなった?』


聞いちゃいけないと思ったけど、聞かずにはいられなかった。


「死んだ。正確には、殺した」


『…なぜ?』


「譲君はラッキーなの。赤い目を持つ人間は殺さなくてはならないのが天界の決まり。でも、これからは生まれ変わればどうか?って事になったの」


つまり、俺は神様の実験台ってわけか。それになんか…天使って悪魔みたいだな。そりゃそうか、天使のイメージは俺達が勝手に作ったものなんだからな。


「…さぁ、どうする?」


俺は深く息を吸い込んだ。


『…鳥になりたい』


「分かった」



愛があきらかに日本語でも外来語でもない言葉を放つ。おそらくこれが呪文というやつだろう。


愛が両手を俺の方に向けると、目も眩む程まぶしい光に包まれた。



『…ぅ』




別に痛みなどはない。ただ、不思議な気持ち。


フッと体が楽になった。ギリギリで目を開くと俺の体が目の前にあり、徐々に体から離れ、俺は意識を失った。




ーーーーーー。


目を開くと目の前は真っ青に白い雲…ここは空だ。


『飛んでる!…スゲェ!』


「どう?一週間以内に答えを出してね。じゃないとずっとこのままの姿になるからね。それから、死なないように!」


『分かった。しばらく慣れるために飛んでみるよ』



黒い翼、黒い体。しゃべろうと声を出すとカァーという泣き声。俺はカラスになっている。


これでもう俺は人間ではないし、人間としゃべる事もできなくなった。


愛は天使だからきっと言葉が通じたんだな。



『おぉー、なんか気持ちいいなぁ。ハハハ、人間があんなにちっちゃいや』



するとカラスの群れがやってきた。俺もそこに加わる事にした。


そっか、食べ物を取りに行くんだな…って、ゴミ箱ーーー!?


集団は家庭ゴミを出す場所に群がり、食べ物を探している。


『こんなん食えるのか?』


ぐちゃぐちゃになった家庭ゴミ。なんとか食べられそうな物は…



〜バササッ〜


何を思ったか、一斉に逃げ出すカラス達。俺は訳も分からずア然としていた。


が、次の瞬間…



〜ドゴッ!!〜


鈍い音と共に激しい痛みが頭に走る。


……ほうき、…人間?


「またこのカラス共はゴミ荒らして!」


薄れゆく意識の中で覚えているのは人間にほうきで殴られた事。






そうか…。忘れてたぜ…。


人間は身勝手なんだ…。


人間ゎ動物を平気で殺しているが罪に問われない奴がほとんどだ。


大袈裟な話、悪人を裁くものだって…動物からすれば罪人なんだ。


動物の肉を食ってるからだ。


なのに、人間ゎ【生きるためだ】だからしょうがないって言うんだ。


今、人間を客観視して分かった。


動物は人間に逆らえなぃ。




たとえ…生きるためでも…



許されないのだ。




『う…あ…』


まだ…生きてる。助かるか…?


「ホント気味悪いカラスだこと…!」


ほうきを手に持ったおばちゃんが俺に制裁を食らわした後、散ったゴミの片付けをする。


「おーい、カラスが道端で死んでるぞぉ〜!」


「あ…生きてる!殺せ殺せ!」



くそ、近所の餓鬼どもか…。死にかけた俺をエアガンで狙っている。




ちくしょう、もうダメか?

なぜ助けない…?

俺がカラスだからか…?

人間じゃないからか…?


これじゃあ何も変わってないじゃん。







人間は…身勝手だ…。

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