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一人百物語 2

忘れ物

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/20


タクシー運転手をしていた従兄弟の、同僚だった川村さんの話。

ある夜遅く、川村さんは駅のタクシー乗り場でお客を待っていた。

ふと後部座席を見ると座席の真ん中あたりに、赤いショップバッグがある事に気付いた。

川村さんが車から降りてショップバッグを手に取り中身を確認すると、中には古びた男ものの黒い革靴が入っていた。

「なんだこりゃ?」

前のお客の忘れ物かな?

お客が降りる時には気がつかなかったが。

会社の事務所に届ないといけないな、と思っているとお客が来たので、とりあえずはその赤いショップバッグを助手席の足元においてお客を送った。

それから事務所に寄った。

車を車庫に入れて、ショップバッグを事務所に持って行こうとした。と、

急にバッグの中がズシリと重くなり、女性の泣きわめく声がした。

赤いショップバッグの中から。

「!」

川村さんはバッグを放り出した。

ショップバッグは車庫のコンクリートの上にドサリと落ちると横倒しに倒れ、中では何かがモゾモゾと動いている気配がした。

暗くてよくわからなかったが、中から何かがうーうーと呻きながら出てこようとしている様だった。

川村さんは悲鳴をあげて事務所の明かりの方へと走り出した。

それから記憶の一部が無い。

次に気がつくと事務所の中にへたり込んでいて、電話番をしていた同僚に

「どした?!」

と声をかけられている自分に気が付いた。

それから同僚と一緒におっかなびっくりバッグを見に行ったが……

赤いショップバッグは車のそばに落ちていたが、中身は空だった。

「他にも妙な事はちょこちょこあったらしくてさ」

そういった事がまるで駄目な川村さんは、それからしばらくしてタクシー運転手を辞めてしまったらしい。



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