表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンリミテッドバトルガール~病弱なゲーマー少女、修羅の国で天下に武を布く~  作者: 波 七海
第二章 関東鳳凰会編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/18

ラウンド7 狂乱の乱舞

ありがとうございます。

本日も3話更新です。

 宣戦布告された以上、受けるしかないと烈華は判断した。



 どこまで『アンリミテッドバトルガール』の力が備わったのか分からない以上、逃げても必ず捕まってしまうだろう。


 中途半端に実力を示してしまったために、この狭間義元(はざま よしもと)と言う男は全力で挑んでくるのは疑い様のない事実だ。


 完全に夕陽が沈み、場は闇に支配されてしまっている。

 等間隔の街灯のみが、周囲を明るく照らしているが、視界は良くない。


 烈華と義元がお互いに睨み合う状況が続いていた。


 先程、止まったと感じられた肌寒い風が吹き始め、烈華は思わず身震いを1つ。


 果たしてこの悪寒の正体は何なのか?

 義元から感じられる雰囲気によるものなのか、突如目覚めた『アンリミテッドバトルガール』の能力に感情が飲み込まれそうになった気付きからくるものか、単なる喧嘩の恐怖心からくるものなのか。



「私は『アンリミテッドバトルガール』の力が現実となったことに喜びを感じている……でもそれと同時に怖れているのかも知れない……」


「なーにごちゃごちゃ言ってんだ? こないならこちらから行くぜ!」



 大柄な義元が大地を蹴って、猛烈な勢いで烈華との間合いを一気に詰めてくる。

 途端に湧きあがってくるのは激しいまでの高揚感。

 直前まで感じていた怖気(おぞけ)は既に吹き飛んでいた。

 理解できない現象が今まさに、烈華の中で起こっているのだ。

 烈華の脳内に響いてくる抗えない甘い言葉。




≪戦え。今こそ、その力を解放する刻。修羅となり戦いに喜びを見い出すべし……『アンリミテッドバトルガール』こそ最強なり≫




 義元が大きく踏み込んで右正拳突きを放ってくる。

 かなり大振りな一撃。

 脳裏に浮かぶのは、使い慣れたコントローラーであり、脳内で直接それを操作する。


 烈華は右突きを半身になって躱すと、右裏拳をカウンターで突き出した。

 戦いの場を得たことで高揚感がどんどんと高まっていた烈華だが、その心は逆に凪いでいた。



 恐らく――義元の行動を予測する。



 瞬時に頭が次の動作の最適解を弾きだす。

 裏拳がその顔に炸裂する前に左腕を突き出した義元は体全体を使って、烈華に覆いかぶさるようにしてくる。

 烈華は、すんでのところで裏拳をピタリと止めると、体を沈めてしゃがみ込み、蹴りを放った。




『下段右払い蹴り』




「うおッ!」



 見事な反射神経で跳んで回避した義元は、そのままの勢いで烈華にその巨体を持って迫りくる。


 ならその勢いをそのまま利用するまで――。


 烈華は上体を起こして中腰になると、義元の右腕を巻き込み、その体を小さな自身の背中に乗せる。ズシリと体重を感じるものの、力を流す方向さえ間違わなければ潰されることはない。


 左足に力を込めて回転の力を使う。

 足から膝、膝から腰、腰から上体、そして全ての力が結集されたか細い右腕でぶん投げた。




『一本背負い』




 義元の体が思いきり大地に叩き付けられる。

 勢いが乗った上、地から吸い上げた回転力を使っての投げに彼自身の体重が乗るのだ。

 その衝撃波計り知れないだろう。



「ぐあッ……!!」



 ここは現実――ゲーム世界ではない。


 都合よく空中で逃れて態勢を整えるなどと言うことはできないのだ。

 普通の人間が空中で虚空を蹴ることなど不可能。

 とは言うものの、死合モードに入っている烈華の『アンリミテッドバトルガール』のプレイ中と同様に無表情。


 湧きあがる高揚感はあれど、それを表情に出すことはない。




『左踏み砕き』




 容赦ない追撃が義元の顔面に迫るも、ギリギリで地面を転がり回避すると、慌てて立ち上がる。

 その息は荒く、肩で大きく呼吸している。



「お前さん、容赦ねーなぁ!」



 態度とは裏腹に嬉しそうな笑みを浮かべて、張りのある声は明るい。

 一方の烈華の声は抑揚のない平坦なもの。

 ボソッと小さく呟くのみだ。



「K.O.するってそう言うことなのよ」


「ああ? K.O.だと? ボクシングか何かの話か?」



 烈華の意識は既にゲームプレイ時のようなトランス状態になっている。


 再び両腕をボクシングスタイルに構えながら、今度は慎重に近づいて来る義元。

 経験者なのかは烈華には判断できないが、上体を左右にゆらゆらと揺らしなが左ジャブを連打してきた。


 それを烈華はいなす、いなす、いなす。


 彼の顔は相変わらず笑っているが、何処か強張ってもいた。

 攻撃は左ジャブからの右ストレート。

 お手本のような動きだが、単調にも見えるので烈華は余裕を持って見切り躱している。



「シッ! シッ! シッ!」



 短い呼気が繰り返し義元の口から吐いて出る。

 あまりにも単調で工夫のない攻め。

 そこに何か狙いがあると考えるのは当然であった。

 烈華は様子を見つつも、彼の目から視線を離さない。


 人間の目は雄弁に心理状態を語ってくれるから。


 烈華が読み取ったのは、驚愕と喜び、畏怖……そして疲労。

 ゲームにあって現実にないもの。

 それは体力ゲージ。


 全てを理解して気付きを得た烈華の口角が吊り上がった。

 彼女は義元が時間稼ぎをしているものと判断し、自ら前へ進み出る。

 多少の攻撃など見切れるし反応できると言う圧倒的な自信。




『← ←』 


『急加速』




 技を使って瞬時に加速した烈華は、義元の懐に飛び込むと、脳内でコントローラーを操る。



「なッ!?」



 とてつもない進入速度に義元は反応できず驚きの声を上げるが、烈華は止まらない。




『右中段正拳突き』




 まともに入った正拳突きにガクンと膝が崩れそうになる義元。

 烈華は落ちてきた頭部を両手で抱え込み追撃を掛ける。




『中段左膝蹴り』




 完全に顔面を捉えた膝が、義元の鼻を砕き大量の出血をもたらした。

 上体は浮き苦痛のあまり、目すら開けていられないようだ。



「あはははは!」



 響くのは烈華のような少女の愉悦の笑い声。

 彼女は自分が何故、これほどまでに笑っているのか理解できない。

 反射的に顔を抑えてがら空きになった脇腹に更なる攻撃。




『右鉤突き』




「ぐがぁッ」



 確かな手応えを感じた烈華の頭の中にあるのは、対戦相手を沈める。

 ただそれだけ。

 K.O.するまで戦うだけ。



「あははははははは!」



 響くのは高揚感に包まれたか弱き少女の楽しげな哄笑。

 湧きあがる破壊の衝動。


 体をくの字に曲げた義元の口から呻き声が漏れ出して止まる気配はない。

 完全に彼の体勢が崩れたところに――




『→ ↗ ↑ ↖ ←』


『中段突き掌底』




 相手を巻き込み、零距離ぜろきょりから烈華が発勁を打ち込む。

 低い重心から烈華が大地を踏みしめ、気を取り込んで足元から回転の力を上体に伝える。


 フィニッシュは左の掌を相手の丹田に。




龍咆上掌りゅうほうじょうしょう




 突き抜けるようにその衝撃が胸板を打ち据える。

 何とか踏み止まっていた義元が崩れるように膝を付き大地に倒れ伏した。

 白目を剥いて、口からは泡を吐き出しており、最早、ピクリとも動かない。



「あはははははははははははは!!」



 烈華の狂乱の笑みが、静寂を破り闇夜に咲き乱れた。

 いつまでもいつまでも。



「れ、烈華……烈華か?」



 空を見上げて見たこともないような笑顔を見せる烈華を目撃したのは偶然通りかかった武士。


 戸惑いながらも彼はその異様な光景に思わず魅入ってしまう。

 バイク5台が放置され、男が5人倒れ込んでいる中心で楽しげに顔を崩す烈華に。


 とめどなく響き渡る声が満月に吸い込まれて消えてゆく。



「おいッ! どうしたんだよ! 何があったッ!?」



 破顔する烈華の肩に手をやって武士は必死にその体を前後に揺さぶり、彼女に向かって呼びかける。

 事態を把握できない彼は困惑を隠すことができない。


 そして烈華の脳内には再び"あの声"が流れた。




≪敵の殲滅を確認。『アンリミテッドバトルガール』を終了し、平常モードに移行します≫

お読み頂きありがとうございました!

面白い、興味があると思って頂けた方は是非、ブクマや評価を!

励みになりますのでよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ