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アンリミテッドバトルガール~病弱なゲーマー少女、修羅の国で天下に武を布く~  作者: 波 七海
第一章 覚醒編

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ラウンド4 アンリミテッドコンボ

いつもありがとうございます。

本日は3話更新です。

 取り敢えずはチャットで挨拶だけはしておく。

 こう言う些細なことも大切だと烈華は思っている。



「えっと……よ、ろ、し、く、お、ね、が、い、し、ま、す……と」



 文字を打つのが苦手な烈華がたどたどしく入力していると、画面に対戦相手の『猫猫ナース』からの挨拶が書き込まれる。

 表示された文字が烈華の目に飛び込んでくる。



『烈華さん、果たし状ありがとうございます! 以前から戦ってみたいと思っていました!』


 自分が認知されていたことに喜びを隠せない烈華であったが、何しろ入力が遅すぎる。嬉しさで目を輝かせて一生懸命に文字を入力を打ち続けるも、次々とチャットが進んで行くので烈華のコメントが追いつかず、会話が噛み合っていない状態だ。



「ちょちょ……速すぎ……スーパーハカーなのかな?」


「んだよ、それは……?」



 惚けたことを呟きつつも、何とか対戦前の交流を終えた烈華は気合を入れ直した。


 最早、隣に座っている武士のことは眼中にないほど集中し始めている。


 いよいよ最上位ランカーとの戦いだ。

 烈華が使うキャラクターはいつも通り『巴』である。

 『猫猫ナース』は『アシュリー』と言う金髪の女性キャラクターのカスタマイズ版を使用するようだが、烈華は普段使わないものの名前や技は知っている。

 対戦時の対策が練れるし、自分がどんなキャクラクターを使用する際にも絶対勝利を目指しているからだ。


 そう――烈華は全キャラクターの技を覚えており、使いこなすことができる。


 それほどの格ゲーオタク。

 またの名を死合狂。


 『アンリミテッドバトルガール』を自称する女――それが波取烈華と言う女。


 彼女はちょっぴり痛い女の子なのだ。


 死合は2本先取制。

 つまり先に2勝した方が勝ちと言う訳だ。



『3、2、1……ファイッ!!』



 アナウンスが始まり死合が開始される。

 画面右側にいる襷姿の巴が、何の躊躇もなく前へ進み出る。

 烈華の戦闘スタイルは超攻撃型だ。

 攻撃に勝る防御などない。

 そう考えている。



「……」



 既にゲームに入り込んでいる烈華は誘いの右拳(みぎこぶし)を放ち、相手の動きを凝視する。


『視る』


 それが烈華の強みであった。

 一瞬たりとも目を逸らすことはない。

 瞬きすらしない烈華は1フレームも見落とさない。


 相手が右足を上げて中段ガードしてくると、烈華の口角が吊り上がる。

 安易なガードは死に直結する。

 繰り出した右手を引かずにそのまま相手を掴むと神速のキー入力と十字キー操作。




『→ ↗ ↑ ↖ ←』



『左中段突き掌底』




「おいおいマジかよ……なんだよそのコントローラー捌きは……」



 武士の口からはひとりでに言葉が漏れる。

 それは一瞬の攻撃。


 相手を巻き込み、懐に入り込んだ烈華が必殺技を叩き込む。


 所謂、発勁(はっけい)


 重心を落とした烈華が足元から回転の力を上体に伝え左の(てのひら)を相手の丹田に叩き込んだのだ。




龍咆上掌りゅうほうじょうしょう




 ゲーム画面の上部に技名が表示されると共に、リアルボイスが烈華の耳に届いた。

 完全フルボイス。どれだけ声優を使っているのか問いたいところだ。


 相手の体が浮かび上がる。


 ゲームでは虚空からの反撃が可能――烈華の目がキラリと光る。


 案の定、猫猫ナースが打撃を受けた状態で、技を繰り出す。

 虚空を蹴って反転した猫猫ナースは、再び烈華の前に躍り出ると上段から両拳を握って叩きつけた。


 余裕でそれを読んでいた烈華は、攻撃を半身になって躱すと同時に技を発動する。




『↓ ↘ → ↗ ↑ ↖ ←』


『下段右アッパー』


『下段左アッパー』




上手(うめ)ぇ……読んでたのか? あそこから避けられるか普通……」



 武士がまるで解説者のように自分の心情を吐露している。

 3つの十字キーをとっかえひっかえしながら巧みに操り、半身の状態から右アッパーを放ちつつ烈華の連撃が始まった。




百足連撃破(むかでれんげきは)




 下からの両手の連撃で来栖が再び宙を舞う。

 そこで小ジャンプした烈華が、追撃のキー入力。

 



『→溜め ↘ ← ↖ ↑』


『中段突き両掌底』




 烈華の攻撃は止まらない。止まるはずがない。

 狙うのはただ1つ『アンリミテッドコンボ』。




空撃烈波(くうげきれっぱ)




 落下する猫猫ナースに地面から吸い上げた力を回転のみの力によってノーモーションで伝えきる。

 空中でハメるなど基本中の基本だが、相手は上位ランカー。

 気を抜けばすぐにコンボから逃れられるだろう。




左鉤突(ひだりかぎづ)き』


『右上段蹴り上げ』


『振り下ろし鉄槌(てっつい)




「へぇ……鉤突きで飛ばされる前に、蹴り上げてんのか。浮いたところで叩き下ろすと……流れるようなモーションだな」



 このまま普通の連撃を繋げても技を出せるのだが、烈華が選んだのは連携技による『アンリミテッドコンボ』


 奥義ゲージがMAXの状態で、技を30回連発で入れるか、必殺技を10発叩き込めば発動し、相手は防御することすらできずに攻撃を受け続けることになる。

 攻撃の最中に反撃されれば連撃はキャンセルされ、コンボは成立しない。

 今、相手に仕掛けた攻撃が所謂、技と呼ばれるもの――そして今から打ち込むのが必殺技。




『↙ ↓ ↘』


『右突き掌底』




地踏挑勁(じとうちょうけい)




 大地を力強く踏みしめて地の力を取り込みそれを発する!

 下から発勁で相手をかち上げた烈華は、更に畳み掛ける。


 これで4発!

 次は角度と高さを変えた攻撃を仕掛ける。

 十字キーで即座に調整を入れて、後は上段、中段、下段、突き、蹴りボタンを押し続けるのだ。



「(よし。猫猫ナースさんは着いて来れてない……大丈夫、大丈夫……)」




『→ ↑ ← ↓』


『上段裏拳』


『左中段蹴り上げ』


『右上段後ろ回し蹴り』




 そして肘打ち、裏拳、蹴り――ボタンの同時押しによる多彩な攻撃。




真鬼滅戒(しんきめっかい)




 キャラクターボイスと共にド派手なエフェクトが発生して、猫猫ナースが大きく蹴り飛ばされる。

 弧を描いて落ちてくるところへ、烈華は急加速を利用して一気に間合いを縮めると、またもやコントローラーをガチャガチャと鳴らして技に繋げていく。




『下段タックル』


『背負い投げ』


『右下段蹴り上げ』


『↓溜め ↑』


『右強アッパー』




 上位ランカーであっても僅かでも隙を見せれば、ハメられる恐れがある。

 とは言え、脱出が不可能な訳ではない。

 相手の必殺技の発動にタイミングを合わせてカウンター技を使えば、抜けられる技術を持つのも上位ランカーだ。


 決して舐められない。

 烈華は何度も何度も自分に強く言い聞かせる。 




天空撃破(てんくうげきは)




 猫猫ナースが強烈なアッパーによって天へと舞い上げられる。

 烈華はチラッと視線を動かし、相手の体力ゲージを確認するが、まだまだ2ゲージ目まで減らせた程度だ。


 『アンリミテッドバトルガール』には体力ゲージと奥義ゲージ、士気ゲージなどが存在しており、ダメージや動作の速度に関係してくる。



「おーすげぇ……この連携……実戦に使えねぇかな。こうやって、こう……か?」



 先程から武士が圧倒的な武力を誇る烈華のプレイに無意識の内に感嘆の声を漏らすが、当然の如く彼女の耳には入っていない。

 とは言え、彼は彼でプレイに見入っているため、ついつい無言になってしまっているが。




『右中撃上段突き』




 猫猫ナースが落ちてきたところで――




『左中段前蹴り』




 ガードすらできずに下腹に決まったのを見て烈華が畳み掛ける。

 よし行ける!と自信が湧きあがってくるのが自分でも分かる。

 最初の不安は亡くなってきているので後は冷静に対応するのみ。

 まるで手がいくつもあるかのように、素早く正確なタイミングで十字キーを操作しボタンに細い指を叩きつける。




『→溜め ←』


『両手突き』




 ピアノを弾いているかのような流れるような指の動き。

 まるで滑らかな旋律を奏でるかのようにも見える。




天地撃滅打(てんちげきめつだ)




 臨場感たっぷりの抑揚の利いたフルボイスと、派手なエフェクトがテレビのスピーカーから流れ出し2人の耳をつく。


 浮いた状態で必殺技を喰らい停滞する猫猫ナース。

 至近距離から8撃目の必殺技を放つべく、烈華がコントローラーを操作しようとすると……。




手刀衝撃波(しゅとうしょうげきは)




 猫猫ナースが一瞬の隙を見逃さずに、浮いた状態から必殺技を放ってきた。

 モーションに入ろうとしていた烈華。


 これでコンボは途絶えるか?

 流石の上位ランカーと言ったところだが――。


 それでも烈華はいつも通りの無表情で瞬きもせず、動揺する気配すらない。

 十字キーと態勢変更の操作に切り替えると、半身になって仰け反るように『手刀衝撃波』を躱して見せた。



「マジか……」



 元々ボキャブラリーの少ない武士から出る言葉は、単純な驚きを表すものばかり。




『↓溜め → ↗ ↑ ↖ ←』


『左中段突き』




 烈華は態勢を崩した状態からコマンドを入力し、右突きで発動しようとしていた必殺技をとっさに左突きに変更した。

 踏み込んだ足に重心を乗せ思いきり左拳を中段に叩きつけるように打つ。




鬼哭崩心拳(きこくほうしんけん)




 烈華の左拳が炸裂した瞬間、見えない衝撃が猫猫ナースの中心を貫いた。

 その名の通り、猫猫ナースは崩れ落ちて膝をついた状態でピヨっている。

 この状態から復帰するまでの間に、後2発の必殺技を叩き込む程度は余裕でやってのける。

 烈華にはそれを可能とする自信があった。




龍咆上掌りゅうほうじょうしょう




天空撃破(てんくうげきは)




 余裕で必殺技を決めた烈華が、コントローラーのボタンを押して左鉤突きを繰り出す。


 そして彼女は握り締めていた十字キーから手を離した。



「勝ってしまった……敗北を知りたいわね」


「えッ……? まだ体力ゲージが残って――」



 疑問の言葉を投げ掛けようとした武士の口が開いたままで止まる。



 始まる――『アンリミテッドコンボ』




『左鉤突き』


『左肘打ち』


『右貫手』


『鉄槌』


『左膝蹴り』


『足甲』


『左側面上段蹴り』


『右鉤突き』





 止まらない。


 条件さえ満たせば、キャラクターが自動で攻撃を放ち続けて、相手は防御すらできない。


 発動すればK.Oまでまっしぐらの必勝の技――それこそが『アンリミテッドコンボ』


 烈華は無表情から一転して満足げなものに変わっていた。

 口元には笑みさえ浮かべている。



「初めて見たぜ……ランカー相手に楽勝じゃねぇか! 烈華!」


「ふふん♪ 私が本気を出せばこんなものよ」



 思わずドヤ顔になる烈華だが、美少女はどんな表情をしても映えるものである。

 滅多にお目に掛かれない表情に武士の目は釘づけだ。



「ほら、(じき)に終わるわ」



 猫猫ナースの体力ゲージはどんどんと減って行き赤色に変わっている。

 一撃でかなり体力が削られるほどの威力。



「そういや士気ゲージってなんだ?」


「ああ、それが高いと動きが良くなったり、攻撃の威力が高くなったり、入るダメージが減少したりするの」


「知らんかったわ……どうしたら減るんだ?」


「必殺技を当てれば大きく減るわね。通常攻撃じゃあまり変わらないけど」



 そして刻が終わりを告げた。



『K.O.! Winner! ネーム:烈華 1戦1勝』



 烈華の圧倒的なゲームの実力に武士は畏怖を覚えずにはいられない。

 これが喧嘩なら……ゲームの力が現実のものになれば。

 あの石動鉄山とか言う男にリベンジできるのに。

 そんな考えが武士の脳裏を過った。



「バーチャルがリアルになればな……」



 ついつい零れた武士の呟き。

 それを聞いた烈華は、切れ長の目で武士を流し見ると、右手でそのしなやかな髪を耳に掛けながら口を開く。


 誰もが見惚れてしまいそうなほどの笑みを湛えて。



「その時は私が、あなたを倒した相手を叩きのめしてあげるわ」



 そんな無茶な強い言葉を使ったのは初めての経験だ。

 それを聞いた武士は初めて覗かせた長馴染の顔に戸惑いを隠せない。

 だが――あの病弱な烈華が好戦的に喧嘩をするところも見てみたいものだ。



「……ははッ言うようになったじゃねぇか。っつ―ことは烈華があのおっさんに勝ったら俺と勝負だな」



 烈華自身が言っていた都市伝説『世界ランキング1位を1週間キープすると特殊コマンドが解放される』と言うネットでの噂。

 後、1勝すれば恐らく世界ランキング1位に上がる可能性が大きい。

 所詮は都市伝説だと思いながらも彼女は、楽しみにしていた。



「ふふっそうね……本当に何かあったら面白いわね。後1勝……後はキープ」



 烈華の心に仄かに灯った楽しみ。


 今までのことを考えると思わず瞑目してしまうが、浮かんでくるのは悲哀と寂寥感。

 幼少期から病弱で碌に友達とも遊べず、いつも病院か自宅で1人きり。

 波取流柔術を教えたがっていた父親の寂しそうな顔。

 両親こそ温かかったが、掛けるのは心配ばかり。

 孤独に泣いた夜もあった。



「喧嘩は好きじゃないけれど、戦えるほど体が丈夫になるのもいいかもね」



 荒唐無稽な話だと烈華は我ながら思う。



「まずは勝つわ……話はそれからよ!」



 大画面では戦闘画面が映し出され、烈華はコントローラーに両手を添えた。

 そしてスピーカーが死合開始の合図を告げる。



『第2回戦! 3、2、1……ファイッ!!』



 勝負が――始まる。

お読み頂きありがとうございました!

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