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アンリミテッドバトルガール~病弱なゲーマー少女、修羅の国で天下に武を布く~  作者: 波 七海
第二章 関東鳳凰会編

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ラウンド15 通すべき筋

ありがとうございます。

粛清が始まります。

 正門の方から聞こえる大音声の主が誰であるか理解した武士はただただ困惑していた。


 まさか『関東鳳凰会(かんとうほうおうかい)』の会長が正面切って高校に特攻して(ぶっこんで)くるとは予想だにしていなかった。2番隊隊長である菊一門司と戦った時は、何とも掴みどころのない(ヤロー)だと思ったものだが、昨日の今日でいきなり現れるとは誰が予想できると言うのか。



「武士……『関東鳳凰会』ってあの……?」


「ああ、ちょっと行ってくるから烈華はここで待ってろ。絶対に出てくんなよ? いいな!」



 武士は"あの日"に烈華が殲滅した男たちが『関東鳳凰会』のメンバーだと伝えていた。


 本来なら関わり合いになって欲しくはなかったのだが、知らないままで外出して再び遭遇してしまう可能性が十分あった。それに烈華が標的にされていることを考えると、事情を説明して大人しくしておいてもらった方が良いと思ったからだ。


 狂気に飲み込まれた記憶を思い出して欲しくないと言う気持ちもある。

 烈華に強く言い聞かせて彼女が頷くのを見ると、武士は全速力で走って正門へと向かう。



「チッ……甘かったか? 学校が割れるのは想定してたが、まさか来るとは……マジかよ。ここは乱高(ランコー)だぞ?」



 ありとあらゆる猛者が集う場所――乱武高校(らんぶこうこう)


 そんなところにカチコミを入れるとは狂気の沙汰としか思えない。

 正門にたどり着いた武士の視界に入ってきたのは、堂々と1人で中央に佇んでいるスカジャン姿の菅原道藍。


 そして乱高生(ランコーせい)――帰宅しようとしている者、無視して立ち去る者、何事かと様子を窺っている者。

 だが何処を見ても『関東鳳凰会』のメンバーの姿はない。



「おー! ブシじゃん! 何処に行ったら会える分かんねーから来ちゃった♪」


「来ちゃった♪じゃねぇよ! 何しに来たんだよ! それに俺はブシじゃねぇ!」



 思わずツッコミを入れてしまった武士であったが、言い切った瞬間に我に返って青くなる。昨夜と変わらず、能天気に笑っている目の前の男が、本当に『関東鳳凰会』の会長なのか分からなくなる。


 確かにメンバーたちからは会長と呼ばれていたが……。



「あれ? ブシクンじゃねーのかぁ。モンちゃんのバトル履歴見たら『炎下武士(ほのおした ぶし)』って書いてあったからさー。てっきりブシなのかと思っちゃったよ」


「モンちゃん……? あれか? あのほっそい2番隊長さんか?」


「そうだよー。門司クンね。それでさ。昨日はあの後大変だったんだよね。何でこんなに騒ぎになってんのか分かんないし、ブシクンがどうしてうちらを狩ってんのか疑問だったしさー」



 武士の体に緊張感が走り、硬直する。

 返答によっては喧嘩になる可能性は否定できない。

 高校の前で喧嘩などしたら、どんな処分を下されるか分からないし、そもそも目の前の男に勝てるとは思えなかった。



「あ、そんなに緊張しないでいいよ。これはうちの問題だって分かったからさ」



 道藍は武士の右肩に手をポンと乗せると、事もなげに言ってのけた。

 正直、そこにこの男の恐ろしさを感じる。

 武士は言葉を絞り出すので精一杯。



「……『関東鳳凰会』の?」


「うん。うちって人サマから見たらクズの集まりみてーじゃん? でもさ。一応、うちにもルールってモンがあんのよね。喧嘩上等、売られれば買うのは当然だけどさー。それにあるでしょうよ? 矜持とか意地……目的ってモンがさぁ」



 武士の口は沈黙したままで言葉が出てくる気配はない。

 肩に置かれた手が彼に圧倒的なまでのプレッシャーを与えていた。



「例えばー天下統一? みたいな?」



 「何言ってんだこいつ」と言う思いしか出て来なかった。

 人となりが全く理解できないし、掴みどころのない物言い、そして本気か嘘かすら判断不可能なレベル。


 答えはやはり沈黙。



「……笑えよ、ブシクン」



 言葉の声色が一気に低いものに変わる。

 一向に何も言わずに沈黙を貫く武士の右肩には力が込められた。

 同時に走る戦慄。


 気が付けば武士の背中には冷や汗が流れ、額からも緊張性の汗が滴っていた。

 何とか口を開こうとしかけた瞬間、道藍が機先を制して明るい口調で話し出す。



「なーんてね。ブシクン顔色悪いけど大丈夫? まぁ聞いてよ。話はもう終わるからさ。んでね。おかしいから全員呼んで詰めたワケよ。そしたらさーうちの1番隊隊長が中心になって『関東鳳凰会』の末端連中を集めて色々腐ったことやってたんだよ。ドラッグとか売りとか、女の子攫ったり……リンチ、レイプ、上納金集めとか? うちは禁止してんだけどさーこればっかりは――」


「オ、オラぁ!! た、武士から手ぇ離せや! コンチクショウ!!」



 突如耳をつんざく叫び声が道藍の言葉を遮った。


 せっかく緊張が解け始めて武士の脳が話の内容を理解しようとし始めた時だったのだが――

 視線を向けると、道藍に向かって竹刀(しない)を構えているのは、柊蓮。

 怖いのか、竹刀の先端がぷるぷると震えている。

 隣には冷静な顔付きをした雪柳の姿も見える。



「おい! 無理すんな! それ仕舞っとけ!」



 武士は慌てて彼らの方に体を向けると、その無謀な行為を止めさせようと吠えた。



「お仲間かな? 良い人たちだね。大事にしなよー? ま、そんな訳なんで、うちに……『関東鳳凰会』に恨みがあるんだよね? だから狩ってた……。この件はオレがきっちりケジメつけるからさ。それで収めてくんないかな?」


「けじめか……どうするつもりなんだ……?」


「粛清かな」



 あっさりと言ってのけた道藍の言葉に絶句する武士。

 彼の動揺を察してか、すぐに道藍は話を続ける。



「どうしてもキミが()りたいってんなら、場は用意するけど? 第1隊隊長だけじゃなくて他の隊長も絡んでんだよねー。末端には体に教え込むつもりなんだけどさ」



 武士の心は大きく揺れ動いていた。

 様々な感情が複雑に絡まり合って考えは巡っていく。


 果たして2番隊隊長程度に苦戦した自分が、1番隊隊長に勝てるのか。

 他にもいる隊長はどうなのか。

 そもそもこれは何かの罠なのではないのか。

 昨日知り合ったばかりの道藍を信じられるのか。

 何よりも大規模な闘争になった場合、1番大事な烈華を護り切れるのか。

 とてつもない長い時間を思考に費やしている気がする。



「お、俺は――」


「ちょっと待って! それ、私にやらせてもらえるかしら」



 武士がようやく口を開いた時、またもや割り込んできた者がいた――烈華だ。

 彼女はコツコツと小さなローファーの音を鳴らしながら、武士たちの方へ向かっていく。

 それにしても今まで聞いたこともないような大声だった。



「は……はぁ……!? 烈華が出てくる話じゃねぇよ! 危ないからすっこんでろ!」



 驚きから立ち直った武士が、どうにか言葉を絞り出すが、烈華は凛とした表情で武士と道藍の前まで来ると足を止めた。



「何言ってるのよ! あなた、『関東鳳凰会』を狩ってるんですってね?」


「聞いてたのかよ……」



 聞かれていたことに鼓動を跳ね上がる。

 武士は烈華から目を逸らしつつ、気まずげに言った。



「当たり前じゃない! 私が"あの日"に標的にされたから私の為にやってくれたんでしょ!? ちゃんと言ってよ!」


「言える訳ねぇだろうが」



 真剣な口調で詰め寄る烈華に対して、ぶっきら棒に言い放つ武士。

 彼女はため息を吐くと、今度は道藍の方へ向き直る。



「ちょっとそこのあなた。原因は私なの。最初に絡んできた『関東鳳凰会』のメンバーを倒したのが私。どうせそれに怒って武士が喧嘩を売ったんでしょう?」



 若干の間。

 流石の道藍も困惑した様子だ。



「えーっとキミが? うちのメンバーを倒したって? マジで言ってんのかな?」


「ええ、そうよ。私に絡んできた5人を同時に瞬殺してやったわ」



 烈華がそう断言したことで、道藍の雰囲気が一変した。

 彼の目がスッと細くなり声がトーンダウンする。



「……5人を同時に? それは本当なのか? もしそうなら話は変わってくるんだけど」


「どう言う意味かしら?」



 烈華に動じる気配はない。

 武士から見て少し強気なようには見えるが、重い雰囲気の中でもいつもの言動をしているように感じられる。そのせいもあってか武士は自身の不甲斐なさ、情けなさを痛感していた。



「キミのような少女に喧嘩を売って負けた。それは今以上にうちの看板に泥を塗ったってことさ。そんなことが許せるとでも? そんなクソッタレはオレの手で直接粛清してやる。もう1度聞くけど本当なのか?」


「ええ、事実よ。つまり私に喧嘩上等を吹っ掛けたって訳ね。ならその上の管理責任よ。私にはそいつらを倒す義務があるわ」



 道藍からすればやはり信じられないようで、訝しげに念を押してくるが、烈華は堂々と独自理論を展開する。


 最早、2人のやり取りと見守ることしかできない武士。



「冗談じゃないんだね? そうだとしたらキミには戦う理由がある。でもね? うちにもメンツってモンがあるのさ。うちの看板背負ってキミのような少女に負けたとなっちゃますますヤツらは許せないな。やっぱりケジメはオレが直接――」


「信じられないのも仕方ないかもね。でも実際に自分の目で確認してからでも遅くないんじゃないかしら? 私の力をね」



 断言した烈華に何か感じるところがあったのか、道藍は唖然とすると肩を震わせ始めた。



「……!! 言うね。ははッ……はははははッ……くくく……分かったよ。じゃあ確かめさせてもらおうか。キミの力を」


「お、おい! 烈華ッ!! 相手は俺より(つえ)ぇかも知れねぇんだぞ! 考え直せッ!」



 愉快そうに笑う道藍を傍目に見ながら、武士が烈華の肩を揺さぶって説得するが、当人は至って真面目な様子。

 肩に伸びた武士の手に、優しく手を添えた烈華。


 彼女は道藍の目を真正面から見つめると、晴れ晴れとした笑みを浮かべて言い放った。



「よーーーく、その目に焼き付けるといいわ。私の力を。何てったって私は『アンリミテッドバトルガール』なんだから!」

お読み頂きありがとうございました。

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