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初めての投稿です。
温かい目で見てください。
カッカッと地面を蹴る馬の蹄の音が聞こえる。いやはや、のんびりと馬車でこんな場所を移動する日が来ることになるとは。
魔除け石の効果は知ってるが、それでも落ち着かなくて正面に座る、自身とよく似た銀色の髪をもつ女性。その顔を覗き見れば、鏡合わせのような深い青の瞳に見つめ返されて微笑まれてしまう。
それもまた落ち着かずに目を逸らす。何度目になるかわからない不安を胸中にて漏らした。さて、困ったことになった。と。
エリュシオン王国が北端に領地を構える辺境伯、その末子として私──フィオナ・フォークナーは生を受けた。
エリュシオンの北端には『境界』と呼ばれる地域が広がっている。
この『境界』というのはエリュシオンの国境でもあるが、同時に、人間と魔物の国の境であるだなんて、子供の頃に何度も聞かされたお伽話がある。だが、現実はそれほどロマンチックなものではない。要は魔物の大規模な巣でもあるのだろう。
実際、『境界』には多くの魔物が生息しており、底なしの沼に毒の霧の発生など、環境も到底人間が生活をするのに適した環境とも言い難い。その為、魔物の国と人間の国との境である『境界』と呼ばれている。
そんな『境界』を挟んでしまうと例え隣国──当然、御伽話の魔物の国ではない──であろうとも交流というのは難しくなってしまう。一応迂回してたどり着くルートもあるにはあるのだが、この『境界』はかなり大きい。隣国にたどり着く前に、別の国をいくつか経由することになる。
つまり、物理的には隣国ではあるが、実質的には遠い遠い国。それが隣国── バステオン帝国だ。
しかし、今から約5年前。
遠いはずのバステオン帝国との距離が近くなる出来事が起こった。
それが、"魔除け石"と呼ばれる道具の開発である。
随分と古風かつ安直な名前である点と、人間が扱う魔法もある程度抑制されてしまうデメリットにさえ目をつぶれば、『境界』の毒の霧も無効化し、魔物も周囲に寄ってくることがなくなるというかなり優れた道具。
魔法に明るくない私には、詳しい仕組みはわからないが、魔石と呼ばれる石に特殊な技術を施すことで、多少のメンテナンスは必要とするものの、半永久的にその効果を持続させることができるのだとか。
実際に今こうして魔物が闊歩するはずの『境界』を、ただの馬車が通ることができてしまっている。
たしかに優れた技術ではある。しかし、ほぼ交流もなかった国が突然隣に現れれば両国共に混乱も必定。
風通しが良くなれば、良くないものも運ばれる。交流だけで終われば良いが、逆のことが起こらないとも限らない。
私程度でもそんな予想ができるのだ、当然両国の長達もそれはわかっていた。故に、とられたのがこの方針。
王族・皇族同士の婚姻。つまり、強い連携関係を求めたのだ。
そして、目の前に座るその方こそがセレフィナ・ヴィクトリア・エリュシオン殿下。エリュシオン王国が王の娘。この度の婚姻における花嫁である。
「フィオナ、見えてきたわよ」
セレフィナ様が窓の外へ視線を投げ、楽しげに声を弾ませる。
続くようにその視線を辿れば、いつの間にか馬車は『境界』を超え、バステオンの国境の街が見え始めていた。
街が見え始めてからしばらく。馬車が止まった。目的の場所に着いたのだろう。
護衛の事情や魔除け石の効果範囲のこともあり『境界』を超えるには然程大きくない馬車を侍女と二人で乗ってきたわけだが、流石に城までそんな状態で、というわけには行かない。
そこで、王女は国境のこの町で一泊して、帝国側の馬車へと乗り換えることになっていた。
「フィオナ?」
周囲の警戒をするために腰を上げかけた所で、正面に座るセレフィナ様に制される。
ああ、そういえばそうなのでした。
腰を下ろした私をみた後に、やはり少し楽しげな様子でセレフィナ様が立ち上がり、 馬車の戸を開く。
そうして先に降りたセレフィナ様が、恭しく手を差し出してきた。
「どうぞ足元にお気をつけてくださいまし。殿下?」
そう微笑みかけてくるセレフィナ様に、若干顔を引き攣らせながらも、なんとか──できるうる限り淑やかに、自らの手を重ねる。
侍女のお仕着せ姿のセレフィナ様は、本当に、本当楽しそうに笑っている。
──本来セレフィナ様が着るはずだったドレスを着る、私を見ながら。
こんな感じで続きていきます。
ラブコメ?なのかな?
なんて初めて書くので、感想ご指摘あったら嬉しいです




