6.それはそれは嫌な再会
(げっ!? どうして王子がこんなところにいるのよ!?)
運よく一発で素材を見つけたことにテンションが上がり、確認もせずに魔法を放ってしまった。
まさかターゲットのすぐ近くに、王子がいるとは。
巻き込まなくて良かった。うっかりしていた。深夜の森に人がいるだなんて。
私は自然と顔が引き攣ったことを感じた。
(まずいまずい、こんなところで王子に会いたくないわ)
万が一にも魔法使いとして王室にスカストされたら?
そんなの面倒くさすぎる。
けれど、正式に申し入れられたら、魔法使いとしてきちんと正式にお断りしないといけない。
片手を振るって氷漬けのブラッディ・ベアを持ち上げる。
もちろん、今度は王子に当たらないよう慎重に。
怪我をさせただなんて知れて、指名手配なんてされたら堪ったものじゃない。
急いで立ち去ろうとしたとき、王子が声を上げた。
「待ってくれ!」
その声があまりにも切実で、私は思わず動きを止めてしまった。
無視すれば良かったのに、つい。
少なくともレティとして一ヶ月は『夫』として扱ったからかな。うっかり止まっちゃった。
「レヴィリアだろう!? 魔法使いレヴィリア!」
静かな夜の森に王子の声が響き渡った。
あ、はいそうです。なんて言えるわけがない。
どうして名前を知っているのか分からないけど、本当に公式にスカストされたくないのよ。
「ずっと探していた! 君に伝えたいことがあるんだ! 頼む、行かないでくれ!」
王子の声は本当に切実だった。
だからこそ、私は引っ掛かりを覚えてしまう。
伝えたいこと? 何、もしかして惚れた?
いや、私って美人だからね、見た目もねセクシーだしね。うん、分かる分かる。
分かるけど。
(あなた、既婚者でしょうが!)
白すぎるほど白いとはいえ、結婚している身。
しかも王子。
そんな軽率に、他の女に現を抜かすだなんて。
(幻滅だわ)
浮気現場を目撃してしまったような。
むしろ、浮気させてしまっているような。
奇妙な罪悪感と焦燥感とちょっとしたムカつき。
しかし、何にしてもここで捕まるわけにはいかない。
さすがに魔法使いとして活動しながら、バレないようにレティを演じるなんてリスキーだ。
そして何より疲れすぎる。研究の時間も確保できなさそう。
私の平穏な引きこもり研究ライフが台無しになる。
魔法で声を低く変えた私は、一息を吸う。
そして、極力冷たくなるように言い放った。
「――人違いだ、私に構うな」
こういう感じで良いのかな。
自信はなかったけど、仕方ない。
私は戦利品と一緒に急いで離宮へと帰還した。




