笑うノート
五百文字制限企画向けに書きました。お題は「本が捲られるような音」です。
バサバサッ!
鳥が羽撃く様な――、乱暴に本が捲られる様な音で那美は目覚めた。
いつもの悪夢から解放され、喉が異常に渇いている。
時計の表示は午前7時前。
那美は寝室から台所へ向かった。
バサバサッ!
薄暗い台所のテーブルの上に、色褪せたノートが開いていた。
表紙と背表紙はテーブルから離れないが、他のページが勝手に激しく捲られ続けている。
「俺を覚えているか?」
ノートから声が聞こえた。
那美はまだ悪夢をみている。
確かにそのノートに見覚えがある。
しかし表紙は見えない。
ノートの内容も捲られる速度が速すぎて見えない。
「分からないわ」
那美は答えた。
「あの愛も忘れたか?」
ページが捲られる音は止まらない。
笑う様にバサバサと。
(あっ!?)
ようやく那美は気付く。
このノートは死んだ夫と高校生の頃にやっていた交換日記。
あえてメールもラインも使わない事を「愛」だと勘違いしていた。
(今は違う。真実の愛を私は知っている)
またノートがバサバサと笑った。
「喜べよ。真実の愛を選んだお姫様」
「何を?」
「お前の罪を見逃さない連中がもうすぐ来る。お前と一緒に亭主を埋めた男、お前に真実の愛とやらを教えたあの若い男の家にもな」
……ピンポーン。
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