98.勉強プログラム
宴会の夜更かしで起きたのは11時頃。
私達は簡単に食事を済ませると次プログラムの説明があるという大広間へ行く。
「みなさんこんにちは、デュナメイオンは終盤にさしかかりました。ここからはより実務面でデュナトスになるための教育を準備しております。」
「『攻城戦』が早期に終わることができましたので、座学カリキュラムを増やしました。
25日間の拡張プログラム『コンプライアンス』てす。」
周囲から失望、落胆の声が聞こえる。
この世界のみんなも勉強は嫌いなんだ。
「これから、週期の1,2はここ大広間で座学、3の日は休日とします。
毎週期テストを行い、そのテストの結果により勝者が決められます。休日で可能な限り復習をしていただくためにテストは1の日の午前とします。」
「本日は5獣の星2日、つまり2の日。次の1の日である獣の星4日の朝8:00より始まります。
なお、各色の棟で同じカリキュラムが行われていますので、どこで受けても構いません。
本プログラム期間、攻撃も禁止といたします。
それでは解散とします。」
ここにきて勉強漬け。私は嫌ではないが皆は恐らく…後で愚痴大会になることが容易に想像できる。
ルレウのチャーム反動は切れているはずで、黄昏に戻ることを提起した。
しかし私達との生活が居心地よいようで、その時期をうやむやにされる。
認定試験の筆記で成績優位であったウイ、リーネ、私は交代で料理当番とし、少しでもテストでメンバーが勉強時間を確保できるようにした。
「あー、勉強プログラムやだぁ。認定試験で人生最後と思ったのにー。」
共通部屋で机を囲むチターナがそう呟く。
さぁ愚痴大会が始まるか。
「俺ここでおしまいかな…競争プログラムで数々の死闘を乗り越えてきたのに。」
「ハハハ、ムイは殆ど戦闘やってないじゃないか。」
大袈裟すぎるムイにメイがそう言っていた。
チターナ、ムイ、メイは筆記スコア300台。
私、リーネ、ウイは400代後半で、地頭で挽回できる差じゃない。と思う。
「ルレウは筆記スコアいくつだったのですか。」
「399点だよー」
「あ、チターナと同じ。」
ルレウは料理当番を申し出ていた。
チターナくらいのスコアならば免除してよいバランスだ。
「料理当番はやめておきますか?デュナメイオンの成績が稼げるいいチャンスですし。」
「ううん、料理覚えたいし大丈夫。」
それはわかる気がする。リーネの炊事を身近に見るのはそれだけの価値がある。
休日もあっという間に終わり、勉強プログラムが始まる。
内容はプログラム名コンプライアンスの名の通り、企業イメージ上のポリコレリテラシーや、失言、問題行為、事故事例を詰め込むような教育だった。
認定企業達も営利企業であることは間違いない。
しかしそれが前世と異なり国家を上回る力をつけたという事実は、人々の支持と軍事力両面において企業側が完全に先をいっている証左であるといえる。
この過程で、デュナトスは社会奉仕の色合いを強く出し、社会の模範たるべくその振る舞いや社会弱者の配慮能力を培わせたのだろう。
それこそが『コンプライアンス』、法令遵守という名の思想統制だ。
そう、これは一つの思想統制なのだ。
但し思想統制には必ず穴がある。
自由な思想の最大の強みはメタの取り合いができること。
例えば老人を大事にする思想、これは高齢者が少ない時代のものだ。そして子供は疎かにされていた。
これらは少子化とともに違和感が起きる。既存の思想への反発、つまりメタ取りも相まって子供を大事にする思想がより強まって先鋭化してゆく。
このような環境の変化、メタの取り合いが10年、20年で起きて思想は大きく変容する。
統制を行わないことでこのバランス取りが働くが、統制によって環境に対してのねじれが起きる。
このねじれはいつか社会を蝕むだろう。行き過ぎたポリコレがまさにそれだ。
ポリコレを打ち砕くこと、やがて現実となる日に備えて、この思想統制は徹底的に理解しておこう。
私はこのように他の者にはない強力な動機を感じながら勉強に励むのであった。




