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97.小さな戦記

「チターナのお姉さんはチターナに負けず劣らず美人だったね。」

「うんうん、人気もありそうだったね。」

メイとルレウがそう話すと、チターナは嬉しそうだった。


私は話を続ける。



「…そうしてすぐ黒風に向かいます。黒風戦は青月と同盟ということもあり情報は筒抜け。奇襲は通用しません。

 私はこれまで全く戦闘に参加して来なかったミュミテを活用する戦いを考えます。

 ミュミテは分身で自己を数十人に水増しし、大軍に目線が行く敵にユスティアが速攻を仕掛けるという手です。

 戦法は途中まではうまくいきました。黒風棟に入るまでに敵勢の1/3を撃破したのです。

 しかし黒風棟には本プログラム最強格のデュナミス使いバズラスがいました。」


「バズラスは植物を成長させるデュナミスを使い、棟の壁全体を守りました。

 これにはユスティア、レーテ二人の全力でも破ることはできません。そんな中、天空から『最強の刀』がいかづちをおとします。

 そう、空から降下する勢いで屋根を割って『種族の根源』を破壊したのです。」

「相手からみたら本当やべえ奴らだな。これ全部初日なんだもんなぁ。」

ムイがまっとうな反応をする。


本当にめちゃくちゃやっている。

この初齢の所業はデュナメイオンに語り継がれるだろう。多分。


「4棟目、黄昏は同じく中齢の白刃と交戦していました。

 私達が黒風棟を出た時点で優勢だった黄昏は、到着する頃には壊滅状態。しかもそれを成した白刃はたった十数名だったようです。」

十数名ですら殆どは数合わせ。セシザとアーズの二人でも同じ結果だっただろう。


「佳境はここからです。

 この白刃、黄昏によってうまいこと二名にまで削られていました。

 しかも二名のうち一名は、黄昏の最後の一人と追いかけっこしています。

 チャンスだと思いました。残る白刃一名はデュナメイオン最強格の男アルドゥーク、本名セシザです。」


「セシザは空間のモノを自由に動かすデュナミスを用いて高所から攻撃を仕掛けてきました。

 私たちの通常行うあらゆる攻撃は完封され、何も出来ぬまま窮地に立たされます。

 色々試しましたが有効だった手を1つ。

 レーテが自己の肉片を飛ばし、気づかれぬようセシザに付着させ再生で肥大化を進めました。

 一定の筋肉量に達した肉片は、セシザの腕や脚をもぎ取りました。

 しかし、腕足がもがれようがセシザは動じずに対処してきました。恐るべきことにパワー十分です。」


「その後、アーズも戻ってきて次々とみんなが無力化されます。

 絶体絶命の中、レーテがついに王の種族の特性を発揮します。『最強の剣』の奥の手です。

 レーテは凄まじい戦闘力でアーズを圧倒してセシザも追い詰めましたが、セシザの方が一枚上手でした。

 彼も王の種族の力を発動させると、レーテは力負けし、勝機を失います。」


「この時、白刃の『種族の根源』は『最強の刀』によって破壊されました。

 セシザ達は意外にも、ルールには従順に退きました。最後には私が黄昏の『種族の根源』を破壊しましたとさ。」

「おおー。改めて聞いても頑張ったなあ。」

ムイがそう言って拍手した。


「激戦だったね。アテラは最後見せ場があってよかったね。」

リーネが笑顔で発言する。


私はそれに頷くとルレウの方を見る。ルレウは首をかしげる。

「最後に、おぶってくれたルレウの背中はとても優しくて居心地が良かったです。

 帰り道、ルレウの気持ちを受け止めず自分勝手に話してごめんなさい。」


「ん、なんかあった?」

「いつもの理詰めアテラが行き過ぎたみたいだね。」

急に謝りだす私にムイが反応して、メイがそう答える。


「…ううん、私の方こそごめんね。」

ルレウはちょっと驚くと、少し間を空けて、うるみながらそう言う。


そして抱擁してきた。


「これで仲直りだね。」

「うん、仲直り。」

ルレウは私の頭をなでる。


「やっぱり仲いいじゃん。」

チターナそう言った。その隣のリーネは少し不機嫌そうだ。


「あー本当リーネの料理美味しー、もっともっとたべるー。」

私はそう言うと、料理に貪りついた。



みんな疲れているはずなのに宴会は終わらない。

とにかく食って飲んで騒いだ。

ムイの一発芸やチターナの歌、リーネ、メイの地方の話など楽しい時間。あっという間に夜が過ぎていく。

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