90.対峙
黄昏棟に近くなると、たくさんの人が見えた。
うずくまったり、横たわったり、殆どの人が戦闘不能となっているようだ。
「間に合うといいのだけれど。」
「そうだね、アテラの作戦通りに行くといいね。とても危険だけど。」
最速で走ってくれているルレウがそう答える。
前にはまだ暴走しないでくれている二人。
そして後ろには殆ど引き離されずついてきた二人。
私は本日初めて、この『最強の剣』の一体感を感じた。
「全メンバー揃っていますから待つ必要はありません。
側面中央付近目掛けてあれお願いします。」
私がそう言って合図を出すと、ユスティアとレーテが突撃する。
「ミュミテ、十分戦闘ができる20人に分裂してください。」
「20人は化粧が落ちるから10人っていったじゃん。」
「ですから信じてください。私がそれを補います。」
ミュミテが増やし始めた分身デュナミスを、ミュミテが好きそうな姿に変身させる。
「お、やるじゃん。全部お願いね。」
こんなところでコストを使いたくなかったが、顔限定ならば節約できるからよしとする。
ドォオオオン!ドォオオオン!
いつも通りレーテが穴をあけていく。
ミュミテの人数が20人となった時、ちょうど二人は戻ってきた。
「奥は激戦も激戦。めちゃくちゃやってた。」
「あとここの教官は他よりちょっと強いね。」
レーテにユスティアが報告をくれる。
黄昏はまだ落ちていない。教官の実力に助けられたのかもしれない。
「すぐに中へ向かいましょう。」
私は自分にデュナミスをかけて小さく毛深くして、まるでルレウがファーを巻いているようにカムフラージュした。
「それわらえる」
「俺はとにかく味方の治療をすればいいんだな。」
「はい、お願いします。レーテ以外です。」
ヤンクの念押しに答える。今回傷つくのは恐らくこちらの方だ。
破壊された壁を何枚も抜けて中へ。
大広間に入るとたくさんの人がまたうずくまったり、倒れたりしていた。
その中で、中央部、教官二人と黄昏二人、そして白刃四人が入り乱れて戦闘している。
「ああ早いもう殆どやられちゃってるよ。」
そういうユスティアの言葉とともに、黄昏と教官が一人ずつ、順に地面にたたきつけられ震えて膝をついた。
白刃の一人が周囲の攻撃武器を回収、コントロールし、別の一人がそれを大量に相手に投げ飛ばす。
それに白刃の三人目が近接戦を仕掛けて、最後の一人が隙をついて触れて何らかのデュナミスをかけると、無力化するという流れだ。
生き残った教官は反撃を見事に決めて接近戦の白刃を壁にめり込ませた。
「ミュミテ、握りこぶし以内のサイズの、できる限りの数、がれきを破片を集めてもってきてください。」
白刃対黄昏の状況が終焉に近づいている。少しでも準備時間があるのは幸いだ。
「あー終わりだなあー。おしかったなあー」
そう言った白刃は教官に触れている。
教官はユスティアの言っていたちょっと強い教官と思われる。
かなりの速さだったが捉えられていた。
白刃に触れられた教官は、何も言わずその場にうずくまり、震えだした。
「戦いやめます!」
そしてなぜか触れた白刃の横にいた白刃の者が急にそう言って逃げていく。
それは大量の武器を相手に飛ばしていた者だった。
「あー、またやりやがったか。」
触れるタイプの白刃はそう言うと、黄昏最後の一人を追い回す。
「後二人…しかも一人は黄昏を追うのに夢中だよ…なんてツイてるんだ!」
そうレーテが言ったので、私もタイミングを合わせる。
「あの武器をコントロールする者からやりましょう。」
そう伝えると紫の目を輝かせるユスティアとレーテが突撃する。
二人は助走すると地面を蹴り上げ、天井にも届くかの勢いでジャンプした。
「あ、あれああ近づけない!?」
レーテはコントロールする者がいる5mほどの高度まで近づくことができず、何度も重いジャンプしている。
ユスティアは辛うじて近づくも、白刃のコントロールする武器の滅多打ちを受けて、身体をひねらせながらも多くのかすり傷を受けた。
「ユスティアがレーテを投げてください。上から貫くのを試しましょう。」
対空ならばまだ手はある。
二人がそのように連携している間にミュミテの脚にも増強デュナミスをかけていく。
「ほお、面白い奴らを集めたな。」
やっとしゃべったコントロールする白刃は均整の取れた顔をしていた。直観的にこいつがセシザだ。
しかし顔が良すぎる…負けてもいいと思ったら負け…。
あまり見ないようにしながら戦うしかない。
「ミュミテ、彼を倒せばあなたのものになります。永遠に!」
「えーアテラちゃん信じるよ。」
ミュミテが今までにないくらい笑顔になる。
これには流石に罪悪感を感じてしまう。
ミュミテの分身達のうち、16人は、ルレウの脚増強を受けてがれきの破片を運んでいる。
ほどよいサイズのがれきの破片は、腕増強を受けたミュミテの分身の残り4人で投擲に使われた。
もちろん増強があるとはいえミュミテ程度の力とコントロールでは、セシザにかすり傷すら追わせられない。
しかし、結果としてセシザの興味を引き、レーテが上を取るのに成功した。




