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89.偽装した者

「それでは、食料の保証はしていただけるという理解でよろしいでしょうか」


中齢黒風側の鳥族の女性が確認する。


「ええ。姉のセンシアからも、直接説明の通信が届くはずです。

 こちらの都合でご不便をおかけしてしまい、心苦しく思っています」


チターナは丁寧に答えた。


「俺が天井に防備を張っていればなあ……侵入を防げたのに」


バズラスは悔しそうに呟く。


天井にも、あの植物を張れるのか。


「天井まで覆い、周囲も同時に守るとなると、凄まじいデュナミス量になりますね」


「ははは。成長速度を加速させるデュナミスだが、植物は自然由来だ。

 倍々で増える。突破されるとしたら最初だけだ。

 俺のデュナミスは“最強の盾”なんだよ。

 ……今回は負ける気がしなかったんだがな」


成長を続ければ、このデュナメイオン全体を覆うことすら可能なのだろう。 反則級だ。

そんなもの、許されていいのか。


そのとき、不意に暗号が届いた。


「『最強の刀』からの報告だ。

 中齢黒風の『種族の根源』は破壊された。

 破壊者はシュゼ。

 つまり残る二棟を赤誠と白刃で分ければ、全員が勝利条件の一つを満たせる。

 次は黄昏だ。戦力情報を待て」


……今さらだが、『最強の脳』は情報共有しかしない“平凡な口”だ。 刀がいるし、この愚痴をハクレイに送ってもいいかもしれない。


「バズラスさん、今回はありがとうございました。  次のプログラムでも、仲良くやりましょう」


私は適当に挨拶し、ルレウの背に乗る。


「ルレウ、外へ」


「はーい」


去り際にチターナと目を合わせ、口真似で三度「あとでね」と送る。 チターナは頷き、ウインクで返してきた。 メイにも手を振っておく。


黒風棟の入口へ向かいながら考える。


バズラスの能力が本物なら、中齢黒風は戦略が甘すぎる。 初手で植物を大量展開し、防衛か、同盟の青月へ援軍に出せばよかったはずだ。

中齢こそ知略が巡ると思っていたが、そうでもないのか。


「また次?早すぎー」


入口外で座り込んでいたミュミテが立ち上がる。


「アテラ、もう中はいいのかい?」


同じく外で休んでいたレーテが尋ねる。


「はい。無事完了です。次は黄昏棟になります」


「よーし、今度こそ活躍するぞー」


「ぼくも、活躍するぞー」


「アテラは無理。状況をちゃんと伝えてくれればいいから」


……ちょっと可愛いと思って真似したのに、現実に戻された。


今回、レーテを無効化されたのは私の判断ミスだ。

ユスティアとレーテの戦闘力を活かすには、もっと緻密な戦術が必要だった。


次は黄昏。白刃にセシザがいるなら、ここが本命だ。 ここで汚名を返上したい。

黒風棟を出て少し進んだところで、皆を止める。


「……ぉーい」


どこからか声がした。


「アテラ、来たよ」


何も見えない場所からチターナの声。 足音も気配もない。透明化は本当に優秀だ。


「チターナ、『最強の脳』は“平凡な口”かって伝えてもらえますか」


「はは、辛辣だね……。伝えるのはニェラルだから、少しオブラートに包むと思うけどいい?」


「はい。それと次の黄昏棟ですが――」


言い終わる前に暗号が割り込む。


「やっほー。黄昏棟の情報よ」


『最強の目』、ラニュヤだ。


「黄昏棟は棟外と一部内部で混戦中。  相手は白刃。急がないと先に取られるわ」


動きが早い。背後を気にしなくていい白刃なら、確かに攻めやすい。


「棟外110名以上、棟内20名ほど。

 棟内は黄昏が優勢、棟外は白刃が押しているわ。

 白刃にはデュナミス値-233が1人。

 -219も1人いる。  正面から力押しは無理ね」


-233。 このデュナメイオンで最強級の値だろう。


情報が終わると同時に、私はチターナへ向き直る。


「チターナ、急ぎです。

 白刃の棟を、可能な限り速く、隠密で。

 『最強の脳』と連携して落としてください」


当然の判断だ。 最強クラスが二人も黄昏に出ているなら、本拠地は手薄。 ハクレイも同じ結論に至るはずだ。


次に、『最強の剣』へ声を張る。


「みなさん、敵は黄昏棟。  白刃との交戦中で、今回が最大の山場になります。  時間がありません。強行軍で行きましょう」


「やろう!」「うん!」「活躍するぞー」「がんばろうか」「めんど」


一名を除き、上々の返事。


次の瞬間、脚腰に増強が走り、風を切って前進が始まる。 セシザ相手に、どこまでやれるか。

私は頭をフル回転させ、戦術を組み立て始めた。


そして、遅れがちなミュミテへ叫ぶ。


「ミュミテ、この先に“恐ろしいほどの美男子”がいます!。

 惚れやすいミュミテは不要です。さようなら!」

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