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8.足元のお宝

ポリコレスコアの内訳を見て、私はこの世界の闇の深さを想像した。


身体機能やデュナミスはともかく、

種族や外観による差別までを数値化しているのは、あまりにもえぐい。


光が強すぎれば、それに応じた闇が生まれる。

この世界は、まさにそんな印象だった。


「おめめ、ほしーなあ。おめめ、ほしーなあ」


どれほどの価値があるのかは分からない。

だが、どうしても欲しかった。


「エンニちゃん、それはおもちゃじゃないよ。

あげるけど……エンニちゃんには、こっちのほうが似合うかしら」


そう言って、ノアテラは隣の部屋からおもちゃ風の眼鏡を持ってきた。


「はい、どうぞ」


「やったあー」


子供用サイズの眼鏡だった。

レンズ枠は目立たず、目元がきらきらする飾りがついている。


私には少し大きいが、使えれば問題ない。


眼鏡越しにノアテラを見ると、数字が浮かんだ。


『85』


内訳も、先ほどと同じように表示される。


子供用があるということは、

おそらくこの眼鏡は、誰もが持っているものなのだろう。


「わーい。おばあちゃん、ありがとう」


もらった分だけは、しっかり喜んでおく。

ノアテラは、満足そうに微笑んでいた。


私は、デュナトスになるための道筋――

開発企業について、自然に聞けそうな言葉を思いついた。


「でゅなとすさんは、せんせいいくの?」


「先生?……そうね。

一、二、三日のうち、一と二の“与える日”に仕事をしながら、先生に行くんだよ」


「そうかー」


私は学校や保育施設のつもりで聞いたのだが、

ノアテラはきちんと意味を汲み取ってくれたらしい。


「せんせいいったら、でゅなとすなれるの?」


「いっぱい頑張ったら、なれるよ」


「エンニは?」


「まだ、ちょっと早いかな」


「はやくない」


「デュナトスへの入社は、推薦があっても五歳からって決まっているの」


薄々予測はしていたが、五歳までまたないといけないのか。

いや、五歳ならましと受け取るべきなのかなぁ。


「やだやだー」


「エンニちゃん、本当にデュナトスが好きなのね」


「やだやだー」


道のりが急に遠くなった気がして、泣きそうになった。


だが、リスクはあるものの、

デュナミスが使えるなら、必ずしもデュナトスにこだわる必要はない。


まずは、デュナミスそのものを知ろう。


「おばあちゃん、でゅなとす、ならないの?」


「昔はデュナトスだったけど、もう十分頑張ったからねえ」


――え?


こんな身近に、元デュナトスがいたではないか。


デュナミス−20とは、どれほどの実力なのか。

ぜひ見てみたい。


「でゅなとす、やってー」


「いいけど……ママとパパには内緒だよ」


「わかったー」


私はノアテラの顔をまっすぐ見て答えた。

信じてほしい。


ノアテラは目を閉じ、静かに集中し始めた。


次の瞬間、周囲が白く霞み、

ノアテラ自身は隠れるようにして見えなくなる。


「すごーい」


用意していた言葉を口にした、そのとき。


白い霧が晴れ、現れたのは――

中年くらいの男性だった。


「うああああ!」


思わず叫ぶ。

近くで見ると、いかにもな風貌だったからだ。


だが、よく見ると、

以前この家の前で見かけた、猫族の中年男性によく似ている。


……あれは、ノアテラだったのか。


「驚かせちゃったね」


外見に反して良い声をしている。


――いや、これは……すごい。

これは、使いたい。

ぜひ、その使い方を知りたい。



ノアテラは再び薄く霞み、白い霧を経て元の姿に戻った。


「おばあちゃん、こわかったのー」


「よしよし」


そのまま、ぎゅっと抱きつく。

お詫びも兼ねて、この有用なデュナミスを聞き出したい。


私は腕にしがみつきながら、素直に言った。


「おばあちゃん、すごいねー」


「よしよし。泣かなくていい子ね」


「エンニも、やりたいなー」


脚にめいっぱいしがみつき、気持ちを伝える。

すると――


「……ちょっとだけ、やってみる?」


意外な言葉だった。


――できるのか。

一歳児でも。

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